投稿日: 2017/10/24 11:20:51
「安倍打倒への関ヶ原かと思ったら、応仁の乱が出口だった」との細川護熙元総理の発言が言いえて妙である。安倍一強を倒し政権交代選挙を実現するための民進党・希望への合流という奇策で始まった騒動は立憲民主党の結成で一時的な集約点を迎えた。三極による総選挙を通じて、野党内部の再編成に終わるのか、自民党を巻き込む騒動に発展するのか、いずれにせよ総選挙結果によって、応仁の乱の第二幕に入ることとなった。
小池政治は「穏健な保守新党」を掲げ、しがらみのない政治とか原発ゼロとか9条3項の改憲はいかがなものかなどと語りながら、他方で新党結成に際しての選別排除など強引な政治手法が特徴である。都民ファーストの会を離脱した都議の発言によれば、都民ファーストの組織内では都議会議員同士の対話を禁ずるなどの一枚岩の政党運営が行われている。古い言葉で恐縮だが、スターリン主義顔負けの「不信の体系」としての集権的組織運営である。メディア向けの顔と政党運営の顔との極端な落差が特徴であるとすれば、小池政治は独裁型ポピュリズムである。少なくとも都知事選・都議選の時点までは都庁権力・自民党都連を標的にして安倍批判の受け皿となったが、国政では安倍首相を標的にしていても、自民党批判を慎重に回避している点が特徴になっている。小池独裁型ポピュリズムは野党の衰弱・政党(議員)への広範な不信を背景に、政党危機の深刻化と同時的に生み出された出来事である。
安倍暴走政治は弱体化した野党にかこつけて議会の軽視・議会無力化を促進し、官邸権力=行政権力(中央省庁機構)の肥大化を生み出している。議会政治・政党政治の負の連鎖が始まっている。この権力構造の変化にもっと注意を払うべきだ。
国家主導政治の復元は憲法9条と戦争の分野にある。この10年台頭する中国と後退する米国のヘゲモニーが交差し東アジアの岩盤のような冷戦体制がようやく瓦解し、今、日本を含む東アジアが激変の渦中に入った。日本国家はすでに防衛白書で中国を潜在敵国とし(ロシアを外した)、対中包囲網を外交上の基本に置く安全保障政策を再構築している。沖縄の辺野古基地問題の日本政府の強硬性はここに起因している。この防衛戦略が想定していない北朝鮮の核武装国家への移行が生まれ新たな危機状況を加重した。
日本の多くの人々が米朝開戦への不安と疑念を抱いている。が、このテーマは総選挙のテーマになっていない。保守と区別された右翼勢力はここに付け込んでいる。メディアで報道され始めた小池と石破の連携は非核三原則・「持ち込まない」を破棄し、米国の核武装に依存する防衛政策の強調で、動揺する安倍政権を右から突破する勢力の台頭かも知れない。
安倍官邸独裁との対抗は小池的独裁型ポピュリズムでは決してない。リベラル型ポピュリズム(人民主義)の高揚である。制裁一本やりの安倍政権を厳しく批判し、北朝鮮の核武装反対・米朝開戦阻止に向けて対話の外交をしっかりと掲げる勢力の登場が必要である。起こっている事態は政界の再編成という形をとっているが、その背後で日本社会の構造的な変化を含む「この国のかたち」をめぐる大きな変動期に入っているという文明史的視点が重要だと思う。(運営委員 山田勝)