投稿日: 2017/01/24 9:57:41
2017年の新年=酉(とり)年が明けました。酉年は昨年の申(さる)年に続き政治も経済も動乱の年となるといわれていますが、昨年はイギリス国民投票でまさかのEUからの離脱、アメリカ大統領選挙でトランプ(共和党)が「予想」に反してまさかの次期大統領に当選という「地殻変動」をもたらすような事態が起こりました。今年は今月20日のトランプ大統領就任に始まり、欧州で3月のオランダ総選挙、4月・5月のフランス大統領選挙・9月のドイツ総選挙が予定されており、また「予想」外の変動が起こるかもしれません。私たちは情勢をウオッチし続けたいと思います。NPOを代表し今年も皆さまの一層のご支援とご協力をお願いいたします。
トランプ次期大統領の当選(1月20日就任演説)を予見しえたジャーナリストは(大統領選挙を長年取材してきた者でさえ)極めて少なかった。いったいなぜか?
11月8日の当選以降、様々なメディアは「世紀の番狂わせ」・アメリカ社会の「未知との遭遇」の分析、イギリスのEU離脱・国民投票結果やEU諸国のポピュリスト勢力との比較分析など、種々のキーワードで世界的な変動・転換の要因を描き出している。(比較で)注目されるのは「置き去りにされた人々」「忘れられた人々」であろう。
トランプは繰り返し“Make America Great Again”を叫んでワシントンのエスタブリシュメント(エリート、既成政治勢力)に不満をもつ人々(Rust Belt=錆びた旧工業地帯の貧しい白人層)を自分の支持者へと動員した。有権者を掘り起こしたのはこれだけではない。
トランプは選挙中に黒人・ヒスパニック・女性・イスラム教徒・障害者などへの蔑視・差別的発言を公然と投げつけ国民を分断し、多民族国家に必要なpolitical correctness(政治的に配慮すべき公正な発言)を本当は捨て去りたい・いわゆる「隠れトランプ」勢力(富裕層や中間層など)のホンネを代弁した。
これは世界的に共通するポピュリズムの手法である。ポピュリズムの定義は複数あるが、普通の人々の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動としておく(水島治郎『ポピュリズムとは何か』中公新書、2016.12)。そこには確かにデモクラシーとの共通点もある。
しかし相手を挑発する過激な物言い、巧みに敵をつくり攻撃する姿勢は危険な大衆扇動である。日本のポピュリスト=橋下徹は「民主政治の本質は大衆迎合です。重要なのは、社会の課題を解決する力。……今回の(大統領)選挙の敗北者は、メディアを含めた知識層ですよ。……僕はポピュリズムは課題解決のための手段だと思っています」と言う(〔編集長インタビュー・橋下徹〕The Asahi Shimbun GLOBE 2016.12.4「トランプがきた ポピュリズムと民主主義」)。「政界」を引退した橋下が復帰するとき、果たして彼は「日本のトランプ」となるだろうか。(理事長・運営委員 古川純)