投稿日: 2016/10/27 8:40:55
築地市場の豊洲移転問題が謎を深めている。
小池都知事が移転を延期した時には、年が明ければ土壌調査の最終報告を受けてすぐにでも移転が決定されるものと思われていた。ところが、安全対策の決め手だった敷地全域の盛り土が建物地下にはなく空洞になっていることが判明して以来、様々な問題が次々と露わになってきた。
テレビではもっぱら専門家会議の提言に反して地下室を作らせたのは誰かという犯人探しに集中した。その結果として、都の幹部職員の無責任体質や、石原元都知事の無責任さや胡散臭さが明らかになったのはひとつの成果ではある。
だが謎解きをそこで終わらせてはならない。
そもそも生鮮食品を扱う築地市場の代替地に、どうして土壌汚染が自明であった東京ガスの跡地が選ばれたのか。すこぶるつきのいわくある土地を、東京都に強引に売り込んだ人間は誰なのか。なぜそんな土地が通常価格で取引されたのか。
土壌汚染の復元は本来売主の責任であるはずなのになぜ東京都の負担で行われたのか。その土壌整備費も当初の予算より大幅に上回っているが、その差額を東京都が負担するのはどういう根拠に基づくのか。建物地下の盛り土がなされていない分の費用は工事請負業者からちゃんと回収したのか。そうした問題の交渉には誰が責任を持って当たったのか、第三者の介入はなかったのか。
次いで主要建物3棟の建設費に関する疑惑がある。この疑惑は最初の入札が不調に終わったところから始まる。東京都の予定価格は当初、青果棟、水産仲卸売棟、水産卸売棟の3棟合計で627億円だったが、これには応札がなかった。そこで東京都が予定価格の再設定を行い、3棟合計で1034億円へと上積みしたが、その過程で都はゼネコン側と接触したらしい。最初の予定価格の設定でもそれなりの経験者が積算したはずなのに、それを嵩上げするにしろ一気に70%も増額するのは理解できない。そうした嵩上げを都に認めさせるには、ゼネコン側がかなり一体となって圧力をかけなければ無理であり、そこには業界として何らかの話し合いがあったと思われる。
そうした大幅アップされた予定価格の下での入札において、応札社が各棟とも一社しかなく、その応札率がいずれも99%以上だった。通常の競争入札では考えられないことであり、当然そこには都からの情報漏洩とゼネコン側の談合とが想像される。建物建設を受注したゼネコン3社は、鹿島、大成、清水という大手ゼネコンを筆頭とする共同企業体であり、 いずれも7社からなり、日本の大手・中堅のゼネコンのほとんどがそこに網羅されている。東京都が発注したおいしい仕事の分け前を業界全体で享受した、という図式である。そこに誰が介入したのか、談合はなかったのか、金は動かなかったのか、ここでも納得のできる解明がなされなければならないだろう。
それだけでも十分すぎるほどの疑惑であるが、さらに実際の工事費が入札額の990億円から2752億円と2.8倍に跳ね上がっている。いかなる契約にもとづいて増額が認められるのか。曖昧なままに増額を認めたのなら、それは明らかに背任であり、それを促すために誰かが口をきき、その見返りに金は動いたとすれば、それは贈収賄である。
これらはいずれも石原知事時代に端を発している。当初の4倍にもなったオリンピック関連予算の問題なども、そもそもは石原都知事のイニシアチブで始まった。どうやら伏魔殿の闇の奥に「東京都は伏魔殿だ」と曰わった本人や、彼に群れたゼネコンの存在が仄見えてくる。最後の謎が明らかになるまでミステリーは終わらないものなのだが、はたしてこのミステリーは?(運営委員 牧梶郎)