投稿日: 2015/10/16 6:50:13
緻密な世界認識に立った「積極的平和外交」を
安倍政権は安全保障関連法案を成立させ、戦後日本が堅持してきた憲法9条を基軸とした日本の安全保障政策を大きく転換した。
「安倍政権の安全保障関連法制強行採決について、「SEALDs」の若者をはじめ一般の市民が声を上げた。「おかしい」と思ったとき、普通の人が抗議に行く。脱原発デモによって国会前で抗議するスタイルができて、国会前が公共の場、政治の場になった。「おかしい」と思ったら粛々と声を上げていく。それこそが民主主義だ」(個人の声こそ民主主義 高橋源一郎 東京新聞 9/18)
新聞論調には、安倍政権の政治手法は立憲主義を破壊するといった批判と、新しく若者が登場したことの意義についての論稿が多かった。これに対し、法案の最大の争点である「日本の安全保障はどうあるべきか」といった議論の必要性を北海道大学教授の遠藤乾氏は指摘している。
つまり、「今日の世界の情勢をどう捉えるべきか、日本の安全保障、とりわけ、日本の外交はどうあるべきか」を問う議論が必要であるというのが、遠藤氏の主張だ。
安倍首相の言う日本の安全保障戦略のパートナーアメリカについて、エマニュエル・トッド氏は「アメリカは、ますます明瞭に秩序破壊の要因となりつつある。戦略的に取るに足りない敵を攻撃することによって、アメリカは己が相変わらず世界にとって欠かすことのできない強国だと主張している。しかし、世界はそのようなアメリカを必要としない」と。また、法政大学教授、下斗米伸夫氏も「アメリカの一極支配の頂点は1945年、日本が敗戦した年ではないか。アメリカだけが核を持ち、経済金融も世界の4~5割を独占していた。今のアメリカは、当時に比べ見る影もない。逆に、ロシア、中国、インドといった、いわゆるBRICs諸国が台頭、こうした国との関係をどうするかが、今、世界最大の問題ではないか」と語っている。
また、安倍首相は、仮想敵国として中国をあげているが、エマニュエル・トッド氏は、『文藝春秋』で「幻想の大国を怖れるな-中国は経済的にも軍事的にも大国ではない」<CODE NUM=00A2>中国は不安定化に向かって走っている。中国経済は、確かに急成長を遂げたが、それはアメリカやヨーロッパ、日本の資本家たちが中国に投資し、また中国からたくさん輸入したからだ」と主張している。中国敵視・中国との軍拡競争で行くのか、日本の対中国外交について、さらなる議論が必要である。
日本の安全保障を考えるにあたっては、今日の「沖縄問題」を避けて通るわけにいかない。『社会運動』7月号仲里効氏「変わらない日本と変わっていく沖縄」の論稿から「琉球共和社会憲法」を紹介したい。
九死に一生を得て廃墟に立ったとき、われわれは戦争が国内の民を殺りくするからくりであることを知らされた。だが、米軍はその廃墟にまたしても巨大な軍事基地をつくった。われわれは非武装の抵抗を続け、そして、ひとしく国民的反省に立って「戦争放棄」「非戦、非軍備」を冒頭に掲げた「日本国憲法」と、それを遵守する国民に連帯を求め、最後の期待をかけた。結果は無残な裏切りとなって返ってきた。日本国民の反省はあまりにも底浅く淡雪となって消えた。われわれはもうホトホトに愛想がつきた。好戦国日本よ、好戦的日本国民と権力者共よ、好むところの道を行くがよい。もはやわれわれは人類廃滅への無理心中の道行きをこれ以上共にはできない」
(運営委員 豊田正樹)