投稿日: 2015/06/16 10:02:18
政権わが物顔、国会の風景が危うい
この国はおかしくなっている。その典型とも言えるのが今の国会(政治)だ。安保法案をめぐる政府与党と野党の論戦の薄っぺらさは目に余る。自衛隊のリスクばかりが焦点になって、マスコミもそれを取り上げる。大事なことではあるが、これでは安倍晋三首相の術中にはまったようなものだ。安倍首相が怖れているのは、一連の法案が憲法に照らして認められるのかどうかという議論。内閣が提案した法案の中身を立法府である国会に十分説明し、憲法論議を戦わすのが筋。しかし、自己中心的な安倍首相は、立法府より行政府が上位と思っている。全て解釈改憲でやろうとしているのだ。昨年7月の集団的自衛権行使容認の解釈改憲の以来の戦法だ。
それだけに安倍首相にとってしめしめだろう。だから調子に乗って、例のヤジが飛び出す。そう、辻元清美・衆議院議員に「早く質問しろよ。演説じゃないんだから」とヤジを飛ばしたことだ。ところが、野党から懲罰動議も出ない。6月1日の特別委員会で「重ねてお詫びを申し上げます」と謝罪して終わりだ。以前、自民党の両議員総会の模様をテレビで見たことがある。笑ってヤジが飛び、笑って受け取る。まるで中学校のホームルーム。いやそれ以下。安倍首相や自民党は、国会を同様と思っているのではないか。私物化といったところであるが、野党に追及する気配はない。
「政治は業界のようなものだ」と言った人がいる。安倍首相は「自民党」という老舗の後継ぎ、代々政治家という議員も多い。時々政治家は「私たちは国民の生活・幸せを考えている」などと言い出すが、他の業界と同様に、自分の業界が盛り上がるのが一番。独立や合併もあったりするが、業界の繁栄が一番。自分の足下の強固な地盤を壊そうとしない。岩盤規制など全く考えていないことを見れば明らかだ、というわけだ。確かに、業界は人々の幸せを考えていないと思うが、これではあまりにも寂しいが…。
ところで、6月4日、あの「日本創成会議」が提言をした。「高齢者の地方移住を」と、東京圏の介護需要が増え、施設と人材不足が深刻になるとの推計からだ。すぐに新“姥捨て山”だという批判も出ているし、「地域包括ケアシステム」とも矛盾するとの声も噴出。すでに安倍首相にも報告をし、菅義偉官房長官は「人口増、地方再生つながる」と両手をあげて賛成。ほぼ同時期、俳優の北大路欣也が入居費用数千万円、月々数十万円の都内の老人ホームに入居するという報道があった。あぁ~。2025年には介護需要に13万床不足というのに。
そもそも国は高齢者には住み慣れた地域で充実した医療・介護を提供する「地域包括ケアシステム」を提唱し、国の責任でインフラを整備するとしてきた。方針変更するのか。ここで思い出したのは「少子化対策」。「子供を産む」という問題にまで政治が口を挟む対策。子供を産む、働く場所、住む場所という個人的な問題に政治が口を挟めば、政治は人々をインフラの1つとしか考えていないことになる。それよりも人々が住み慣れた所で生活できる基盤・インフラを整備することが政治の責任ではないか。安保法案といい、政権のわがもの顔がこの国を危うくしている。
(運営委員 寺嶋紘)