投稿日: 2014/12/20 8:58:33
すわ!師走総選挙
12月2日に衆議院選挙が公示された。街には各党候補者のポスターが一斉に貼りだされ、文字通りセンセイ方が必死に走り回る師走の慌ただしい総選挙が始まった。
年内解散・総選挙の可能性に関しては、この夏の頃から噂としては漏れ聞こえていた。女性2閣僚の辞任前後にその可能性は多少強まったものの、私自身は信じなかった。それというのも、国家安全保障会議の設立、秘密保護法の強行採決、集団的自衛権の行使容認の閣議決定、など安倍政権の戦前回帰的な暴走を支えたのは国会における与党の圧倒的多数であったからだ。この路線をさらに進めるためには安全保障関連法案の改定など越えねばならぬハードルがまだいくつもある。一方で、原発再稼働の推進、労働者派遣法の改定、法人税減税など、財界の要求を満たすためにやり残していることも多い。なんでわざわざ議席を減らす可能性がある総選挙を行う必要があるのか。たとえ何と批判されようと、状況が有利なうちにやれることは何でもしてしまえ、というのがこれまでの安倍首相の政治スタイルではなかったのか。そう考えれば、解散・総選挙を安倍首相自らが決断するとは考えられなかったからである。
解散風が吹き出したのは、安倍政権最大の応援団である読売新聞が11月9日に解散についての記事を一面に載せたのがきっかけだった。その後、他のメディアも追従して解散風は吹き荒れて、安倍首相が外遊中であるにもかかわらず、また、消費税10パーセントへの引き上げの判断材料とするはずの7-9月期GDP発表を待たず、解散・総選挙は既定事実化した。帰国した安倍首相は記者会見で21日に衆院を解散することを表明し、12月2日公示、14日投票の選挙戦が事実上始まった。首相は、解散の決断をもっぱら消費税再増税の先送りと関連付けて説明し、「国民の皆さんの判断を仰ぐ」と言った。しかし、消費増税の時期はもともと景気動向次第で延期することが認められており、その是非が解散の大義名分にならないのは明らかである。選挙戦に入って「アベノミクスへの評価」に焦点をずらせたが、本来ならば、憲法への乱暴な挑戦だった集団的自衛権行使容認の閣議決定や、世論に反して強行しようとしている原発再稼働を、正面に掲げて国民の信を問うのが筋だろう。
それでは、安倍首相はいかなる思惑をもって今回の解散・総選挙を仕組んだのであろうか。巷でいわれているのは、アベノミクスの破綻が顕わになり、支持率が低下する前に解散し、民主党と維新の党ら野党勢力の選挙協力が固まるまえに選挙を行い、信任された安定政権で来年の安保法制国会を乗り越えたい、というシナリオである。安倍首相は、このままでは支持率はジリ貧で、遅くなればなるほど選挙でも不利になるから、たとえ少し議席を減らしてでも今のうちに解散・総選挙に打って出た方がいい、と追い詰められていた、ということになる。追い込んだ力は、国会内の野党の力というよりは、秘密保護法の強行採決、集団的自衛権行使容認の閣議決定、原発再稼働に反対して大きく声を上げた国民大衆の運動である。国会の勢力分布はともかく、安倍政権の暴走を阻止しようとする力は確実に前進していた。そこに確信を持って投票に臨もうではないか。
(運営委員 牧梶郎)