投稿日: 2015/01/13 10:13:38
『FORUM OPINION』27号の特集テーマについて
-地方自治体から日本の政治を変える―
特集テーマ「地方自治体から日本の政治を変える」については、〔インタビュー〕「仲地博沖縄大学学長に聞く 『沖縄の尊厳、アイデンティティ』 翁長雄志新知事の誕生」と大間原発訴訟に関して中野宏典弁護士の「全国初の地方自治体による原発訴訟の概要と展望」の2本を収めることができた。
沖縄県知事選(11月16日)は、普天間基地の名護市辺野古移設に反対するワンイッシュウを基本とする「沖縄の尊厳」「誇りある豊かさ」「イデオロギーよりアイデンティティ」をシンボル・コンセプトとする「オール沖縄」の(保守の一部と革新の)共闘によって、約10万票の圧倒的な票差で現職知事を破り翁長新知事が当選した。
仲地氏インタビューでは、翁長新知事を誕生させた背景はじめ、新知事による基地移設政策の見通し、「オール沖縄」態勢は今後どうなるか、沖縄革新は今後どのような「自画像」を描くのか、日本の政治は変化するのか、などの論点について投票翌日に新鮮な臨場感をもとに語っていただいた。
中野弁護士論稿は、工藤壽樹函館市長が市議会の全会一致の決議を得て自治体としては全国で初めての自治体を原告とする原発訴訟を提起した(4月3日)経緯と訴訟の争点、函館市民の反応と今後の展望などについて論じていただいた。
函館市は大間原発(フルMOX燃料)建設中の下北半島・(活断層のある)大間崎とは津軽海峡をはさんで緊急時防護措置準備区域の範囲内(30km圏内)に所在するにもかかわらず、大間原発の設置などに関与する手続きは設けられていない。
工藤市長は福島原発事故後に福島県浪江町などを訪問調査した結果、函館市を原告とし国と電源開発(J-POWER)を被告とする大間原発建設差止めなどの訴訟を決意したのである。
訴訟では住民利益のみでない自治体の「存立維持権」や(ドイツ自治体の原発差止め判決を参考にした)自治体の原告適格などの重要な論点が主張されている。
こうした沖縄県の政治変革と函館の訴訟提起によって、日本の政治は変えられるであろうか。
本号の校正が終わった段階で、衆議院総選挙(12月14日)が行われ、結果が出た。
定数475に対して自民(291)・公明(35)の与党326、民主ほか野党・非与党149で、与党が議席の3分の2(317)を9議席も超える(公示前は318)「大勝」という見出しが各紙で躍った。
安倍首相は選挙期間中「この道しかない」といわゆるアベノミクスの一層の継続を争点であるかのように訴えてまわったが、集団的自衛権行使容認の閣議決定や特定秘密保護法(12月10日施行)、定数是正の公約、原発再稼動問題は巧みに隠されぼかされ続けたのではないか。
野党は「対抗土俵」を正面から設定できずに寄り切られてしまったか(ただし沖縄選挙区では4議席ともオール沖縄で非与党(共産・社民・生活・無所属)が闘い取った)。
戦後最低の投票率52.66%でこの結果は与党・安倍政権のロードマップへの信任や「白紙委任」を与えたものではない。
今後の国会政治は、集団的自衛権関連法提出や改憲問題に移っていくようだが、市民社会は暴走へのブレーキを常に言論と行動によってかけ続けなければならないと思う。
本号には、村上達也前東海村村長の特別インタビューや、鈴木佑司法政大学教授の「南シナ海を巡る領域紛争とその解決論稿、秩父困民党」歴史紀行に協力いただいた郷土史家・引間春一氏による落合寅市(乙副大隊長)の四国・高知への「亡命」経路と板垣退助らとの交流に関する興味深い論稿などがある。
一読をお薦めしたい。(本誌本号編集責任者・古川)