投稿日: 2014/10/10 10:00:26
『FORUM OPINION』26号の特集テーマについて
-日本の言論状況はどうなっているか―
本特集テーマの「日本の言論状況」について論じていただくご寄稿原稿の集まりつつあるなか、朝日新聞の誤報訂正・謝罪(社長会見・謝罪)の連続的な掲載が飛び出した。マスメディアのあり方や「体質」の問題をメディア内部に根本的に問う重要論点であるが、本特集ではこれへの対応は間に合わなかった。それは、①旧日本軍慰安婦問題報道について8月5日・6日朝刊で連日特集を組み「吉田清治著書」(韓国・済州島で慰安婦強制連行の証言)を「虚偽だと判断、記事を取消す」としたこと、②東電福島第一原発事故に関する「吉田調書」の公開前入手報道(5月20日朝刊)で第一原発所員の第2原発への退避を「吉田所長の命令に違反して撤退」と報道したことは政府による「吉田調書」全文の公開後に「所長発言の評価が間違っていた」として記事取消しと謝罪をしたこと(9月11日、9月12日朝刊掲載)、③「慰安婦報道検証 訂正、遅きに失したのでは」(「池上彰の新聞ななめ読み」、8月29日掲載予定原稿、“過ちがあったなら訂正するのが当然、過ちを訂正するなら謝罪もするべきではないか”など)をいったん掲載取りやめ後、おわびコメント付きで9月4日朝刊に掲載したこと、の3件である。③の一転掲載決定には朝日の公式認証・実名記者アカウントによる「掲載取りやめへの怒り」「紙面の信用を失うことを恥じる」などの内側からの言論の自由「復元力」が働いたようである。
本号編集途中で、「二極化する報道」の危機意識をもった新書『安倍官邸と新聞』(徳山喜雄・集英社新書、2014.8)が出版された。在京6紙の「二極化現象」の特徴は、第1に「安倍官邸のメディア戦略が巧妙で、きわめて有効に働いている」点、第2に「安全保障や原子力・エネルギー政策など国の重要課題をめぐる在京紙の論調」が「朝日、毎日、東京新聞」のグループと「読売、産経、日経新聞」のグループに真っ二つに割れる「二極化現象」を起している点であり、「深い論議や、第三の可能性を探るといった成熟した言論が成立しにくい状況になっている」ことである。「二極化」は「報道の自由」に関わる問題についても「二分化」した報道がなされる点で、「言論界の『55年体制』」の構図が形作られ、深刻な構造問題を引き起こしているのではないか、という。
本特集の「総論」に位置する山田健太氏の論稿は、まさに辺野古移転の政府方針への「異論」を認めない(取材妨害もやる)政府の沖縄メディアへの圧力の存在を指摘し、辺野古沖取材の妨害や「海上デモ」に対する海保の厳しい取締りに対しヤマト=在京6紙とテレビの報道がなされない状況で沖縄―ヤマトに二元化する報道ギャップ(沖縄メディアの孤立化)の問題を強く訴える。現場記者などによる匿名座談会(権力チェック機能は鈍っていないか!?)はいまのマスメディアがジャーナリズムとして機能しうるのかを生き生きと現場から問うものである。他方で、市民個人や運動の媒体として1988年から発行を続け、2003年5月3日から新聞紙上に意見広告を出す「市民意見広告運動」を派生させてきた「市民の意見30の会」(東京)編集委員の報告にご注目いただきたい。
本号には八重山・竹富町教育長と尖閣・遺族会会長の「特別インタビュー」を収録した。私は個性豊かな「八重山人」の筋を通す生き方に感銘を受けた次第です。(本誌本号編集責任者・古川 純)