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【NPO現代の理論・社会フォーラム 理事会声明】
最高裁決定を受けて
2024年9月11日
1、最高裁で上告棄却決定が出された。
最高裁は「商標権と現代の理論の名称」について、私たちの上告は最高裁裁判の枠には入らないとして棄却した。不当な判決である。この結果(第二次)知財高裁の判決が確定した。
私たちは、悔しいことではあるが、判決に従って、自主的に、粛々と、必要な作業を行い、不当な流れに屈することなく、私たちの道筋を歩み続けたい
① 私たちは「現代の理論」の名称変更をめぐる「争い」を収束させる。
・「現代の理論」と題した雑誌の発行をやめる。
② 新たな名称の雑誌『言論空間』を発行し、雑誌・現代の理論の精神を活かし、持続させる。
・改題創刊号(特別号)は2024年秋号(10月1日)から発行する。
・2024年秋号の編集内容は、編集委員会と原稿依頼中の筆者の了解を経て、基本的に継続 する。
③ 認定NPO現代の理論・社会フォーラムと(株)同時代社は、雑誌・現代の理論の定価販売を 中止し、裁判所が指定した範囲(2016年夏号~2024年冬号)の廃棄を行う。
・商標権者大野隆の要求と知財高裁判決の内容は、明らかに異様であり、到底容認することはできない。「現代の理論」の名称問題は商標権者・大野隆が起こした第二次東京地裁判決以降は、もはや過去の経緯とは関係なく、商標権を持っているものは、同名の書籍へのロイヤリティー(使用料)を請求できるという悪しき前例を作ることになる。しかも雑誌の発行差し止めというばかりでなく、過去にさかのぼって既刊雑誌の廃棄処分を要求し、それを認めるという事態は戦後憲法下の基本的人権と出版の自由、民主主義への脅迫である。「現代の理論」は小さな出版物とはいえ、判決の論理と思想は到底容認できない。この悪例を世に知らしめるために何をするか検討する。
2、紙媒体とSNSを両軸に
この6年間で「現代の理論」の発行を柱に、発信拠点を作ってきた。私たちNPOはすでに総会決議でも明らかにしてきたが、この成果をベースに、紙媒体の特性を生かしつつ、SNSを含むIT社会へのあらたな参加を強めようとしてきた。この紙媒体とSNSを両軸とした「言論空間」の中で、時代の流れと切り結ぶ活動を発展させたい。この事業の中で市民社会の発信力を強め、「公共空間」の一角を占めたいと思う。世代交代の流れを加速し、新たな地平へ踏み出したい。
認定NPO現代の理論・社会フォーラムは雑誌「現代の理論」の発行に協力していただいた方々に、感謝申し上げるとともに、改題をして雑誌発行を継続することが何よりも肝要なことと考え、改題雑誌を従来の精神で継続し続けたいと決意している。「現代の理論」という名称の雑誌にかかわる歴史を知らない人々が編集委員会に参加し、執筆陣でも拡大している。この判決を奇貨として、新たな人々の力を加算し、時代と切り結ぶ「公共空間」の一角を占めたいと思う。編集陣の世代交代やNPO活動の拡大も含めて、活動充実を図りたい。これまで以上に、御支援・御協力をお願いし、共に歩み続けるようお願いする。
なお裁判の経過、判決内容分析は編集委員会の声明にありますので併せて参照してください。
商標をめぐり訴えられた裁判は、私たちの態度はこれまで報告したきました。今年3月、最高裁判所に上告をし、私たちの立場を明らかにして来ましたが、最高裁は7月11日に上告棄却をしました。私たちは、『現代の理論』を改題し『言論空間』として発行を継続することを決めました。ここに『現代の理論』編集委員会としての声明を明らかにします。
1、 はじめに
最高裁判決を受けて
争いごとの発端は2018年10月、デジタル版現代の理論編集委員会と大野隆両者(原告)がNPO現代の理論・社会フォーラムと同時代社(被告)を相手に、『現代の理論』という名称の雑誌発行の差し止め(発行禁止)と既出版物の廃棄、ロイヤリティーを求めて東京地裁に提訴したことに始まる。裁判は東京地裁、東京高裁知財部、東京地裁(第二次)、東京高裁知財部(第二次)という経過をたどって、2024年7月の最高裁の「上告棄却」決定で出版・販売の禁止、既出版物の廃棄、損害賠償の支払い命令が確定し、終結した。
初めて争われた第一次東京地裁の判決は①原告編集委員会が当事者能力が認められる権利能力なき社団に該当するということはできず、本件訴えは不適法なものとして却下するほかない②原告と被告の間で雑誌を発行しないという合意が成立していた証拠はない。したがって、債務不履行にもとづく請求はその余の点について理由がない③商標権について、「現代の理論」は昭和34年から長年にわたって断続的に使用され、原告大野一人が表示の周知性等の獲得に貢献しているともいえない。原告大野による商標権の行使は客観的に公正な競業秩序に背反するものであり、権利の濫用として許されない-と明示、被告側勝訴の決定をおこなった。
しかしその後の裁判では原告大野隆が『現代の理論』商標権を有することを唯一の理由に、私たちの主張を認めず、最高裁決定に至った。1959年5月創刊の『現代の理論』は多くの人びとに読まれ、リベラルな誌面として社会に定着してきた歴史を持つ。商標登録はわずか数年前の2017年に過ぎず、それを根拠に固有性と歴史性を持つ書物の存在を否定することは到底、承服できないものがある。しかし司法の場で確定された以上、従わざるを得ず、NPO現代の理論・社会フォーラムは「現代の理論」の題字変更を速やかに行い、発行妨害に屈することなく、雑誌発行を継続することを表明する。
2、何が争われたのか
雑誌『現代の理論』は1959年5月の創刊以来、休刊、復刊を繰り返してきたが、現在の姿で復刊したのは2016年6月。それ以降、2024年夏号まで通巻36号を数える。前回の休刊(2012年)以降、『現代の理論』を冠した書物はNPO現代の理論・社会フォーラムが発行元となる現行雑誌が唯一で、それ以外には存在しない。従って、最高裁決定によって発行禁止となると、リベラル・革新系の論壇誌という長い歴史を持つ雑誌が日本社会から消えて亡くなり、この間、発行してきた『現代の理論』が廃棄処分となる。一度、世に出た著作物が遡って廃棄処分になるとはどういうことか。中国古代の「焚書坑儒」でもあるまいし、こんな理不尽な措置が現代社会で許されるのだろうか。
発行禁止の理由として知財高裁は「大野隆が商標権を取得している」ことを挙げ、既出版物の廃棄も容認した。大野隆が「現代の理論」題字を商標登録したのは2016年4月。NPO現代の理論・社会フォーラムが現代の理論誌の復刊のため、デモ版を発行したのはそれに2ヶ月先立つ2016年2月。特許庁の登録は2017年9月8日、第9類(電子印刷物)と第16類(印刷物)の二つで認定。大野隆自身、出願の動機を「NPO側の雑誌発行を停止させるため」と裁判過程で証言している。自ら商標使用の意志もなく、出版妨害のための登録申請であり、商標法違反ではないのか。
事実、特許庁での商標登録に際し、最初は商標登録した大野隆に対する被告の異議申し立てが認められ、大野隆の商標登録は拒絶された。ここでは特許庁の審判は実態判断に踏み込み、大野隆の申請は「抜け駆け登録」であり、認められないとした。しかし、それに対する大野隆の異議申し立て(裁判で言えば第二審)では判断が逆転し、大野隆の商標が登録査定された。特許庁は当事者間の事実関係への判断をやめ、商標登録は商標法に従って先願主義によって処理すべきであるとしたからだ。
知財高裁は知的財産をめぐる争いを専門に取り扱うため、2005年4月に設立された東京高裁の特別支部。経済社会がグローバリズムの展開の中で知的財産をめぐる紛争多発に対応、新自由主義システムの一つとして商標などの「商品」(市場価値)の有用性を認めるという発想が強く、商標を厳格に守ることや商標の優先性を職権で強調し、商標権の重要性を日本社会に定着させるとの意欲が強い。『現代の理論』訴訟において、紛争当事者の実態に踏みこむことなく商標登録を根拠に商標権優位判決を下したのはこうした背景があるように思う。商業的権利を理由に歴史性や固有性を有する文化的創造物の存在を抹消する風潮を野放しにしてはならない。
雑誌『現代の理論』は数度の休刊を挟みながら、55年の長きにわたった読み継がれてきた固有の歴史があり、その歴史を今日継承するという重要な社会的役割がある。いまネットで『現代の理論』を検索すると「国立国会図書館デジタルコレクション- 現代の理論」の書籍情報が紹介され、「タイトル: 現代の理論; 著者: 現代の理論社 ; 出版者: 現代の理論社; 出版年月日: 1968-01」と表示される。『現代の理論』題字問題を考える際に、安東仁兵衛、現代の理論社を中心とした第一次、第二次『現代の理論』時代を抜きに語ることは許されない。それだけの歴史の重みがある。
3、広く、社会に発信し続ける道へ
原告のデジタル版現代の理論編集委員会と大野隆両者はWEB上で、デジタル版・現代の理論を無料配信しているグループである。彼らは商標権侵害を理由に発行禁止を求めて提訴を繰り返してきたが、一連の裁判の過程で彼らが登録商標を利用して雑誌(印刷物)を発行する計画も、具体的意思もないことが明らかにされ、2021年3月に印刷物に関わる商標登録は不使用を理由に取り消す決定が特許庁から出されている。
本来、自由に行えるはずの出版活動を妨害するための「悪意の出願」が許されるとすると、財力の乏しい小さなメディアなどが出版物を出す「自由」は、商標権の範囲内ということに事実上帰結し、その社会的影響は非常に大きなものがある。商標権者大野隆は無論の事、その主張に同調してきたWEB版編集委員会は自由な出版の権利を制限する判決に加担するのであるから、その責任は重い。
私たちは訴えられた被告として、降りかかる火の粉は取り除かなければならないので、裁判でも応戦してきたが、そもそも商標権などいう商業的権利を振り回さずとも、雑誌とメルマガとの競争的共存を基本とすれば十分であり、それぞれの道をそれぞれのやり方で進めば良いと考えている。
最高裁で棄却決定が出された以上、題字『現代の理論』の使用継続はできないが、私たちはその精神を受け継ぎ、改題・現代の理論として雑誌発行を継続する決意である。
季刊『現代の理論』
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