複数のロボットを自律分散的に協調して活動させることが可能になれば,多くの人が従事する土木工事や危険な作業を代替することが可能になります.しかし,残念ながら群ロボットの制御方法は未だに確立していません.一方で,真社会性昆虫の中でもアリやシロアリは化学物質(フェロモン)を用いて相互にコミュニケーションし,高度な社会構造を創発することが知られています.本研究では,アリやシロアリの情報伝達媒体である「フェロモン」に着目し,フェロモンを用いることでロボットシステムにどのような機能を付加させることができるのかを研究しています.
2009年に電気通信大学で行った実験動画です.10台のロボットが餌を模した青色LEDの物体を運搬しようと試みています.餌(青色LEDの物体)は,理想状態で3台で運搬可能な重量に設定されています.ロボットにとっての巣(物体運搬の目的地)は赤いライトの下になっています.1)ロボットは,実験開始時にはLévy walkをしています.2)餌を発見すると,巣・餌・ロボットの位置関係になるように回り込み,餌を押すことを試みます.3)ロボットが餌を押しても餌が動かなければ,巣に帰りながらエタノールを散布します.4)他ロボットがエタノールを検出すると,エタノールの道を辿って餌に辿り着きます.5)餌に辿り着いたロボットは餌を押します.
ロボットには,上述の1-5)しかプログラムされていませんが,協調して物体を運搬することができます.
左の実験の熱カメラで撮影した動画です.実験ではフェロモンの代用にエタノールを使っています.エタノールは常温で気化し,気化熱によって熱を奪うので,エタノールが散布された場所は温度が低くなります.そのため熱カメラで撮影すると餌と巣の間のフェロモン・トレイルが可視化されます.
餌を発見したロボットが他ロボットを餌に向かって誘引している様子が分かるかと思います.