シロアリは,体長数mm程度ですが,数mの巨大な塚を構築することが知られています.塚内部の温度,湿度は一定に保たれ,あたかも空調が効いているかのような(シロアリにとって)快適な空間となっています.シロアリは,個体としてホモサピエンスと同等の知能を有しているわけではありませんが,人類が構築する構造物における空調機能を創り出すことに成功しています.我々は,シロアリのこの振舞いを「外環境の改変」と捉え,ロボットシステムで本機能を模倣しました.
ロボットには,発泡ウレタンを射出する機能を搭載しています.ロボットは,自身の移動性能では走破することのできない環境を発見したとき,環境に対して適切に発泡ウレタンを射出することで「外環境を改変」し,移動可能性を補完することに成功しました.
ロボット工学の歴史は,ロボットシステムを外環境に適応させることを目標に研究されてきました.高い走破性能を有するレスキューロボットなどが好例かと思います.一方で,「外環境を改変する」機能をロボットシステムに搭載することができれば,高い走破性能がなくても,ロボットが移動できない場所があればロボットが自身が移動できるように環境を改変してしまえばよい,となります.