側根形成

側根形成異常を示すrfc3変異株

側根形成の過程は、植物が持つ分化の柔軟性(分化多能性を持つ幹細胞が再生される)を簡単に観察できる、とても面白い研究対象です。側根は内鞘と呼ばれる組織から形成されます。ただし、原生木部道管に接する内鞘細胞のみが細胞分裂を行い側根を形成します。この過程で、幹細胞が形成され根端分裂組織が出来上がっていきます。rfc3は側根原基を形成できるものの、幹細胞を欠く異常な側根しかできません。

図は様々な生物のオルガネラに含まれるリボソームタンパク質S6とその仲間の分子系統樹です。RFC3は原核型のRPS6 (bRPS6)に弱い相同性を持っており、プラスチドに局在しています。プラスチドは藍藻を起源とし、独自のリボソームを持ち、その中には藍藻由来のRPS6 (PRPS6)が含まれます。そのため、RFC3のタンパク質としての機能は未だ不明です。

とは言っても、RFC3の機能を考えるヒントはあります。図はrfc3の根からRNAを抽出して、プラスチドのrRNAが出来上がっていく様子を見たものです。黒いバンドはrRNAとその前駆体を表しています。バンドが濃ゆいほどその量が多いということになります。Lerとあるのは野生型で、rfc3と比べてください。rfc3ではバンドが薄い、つまりrRNA(とその前駆体)が少ないということがわかります。

一方、rfc3 sprt2ではrRNA量が回復していることがわかります。このsprt2rfc3の異常な根の形態を回復させる変異として単離したものです。意外なことに、SPRT2はすでに解析例があるプラスチドで働くスプライシング因子CFM3bと同一であることがわかりました。現在のところ、 RFC3が機能を失うと、SPRT2が本来相手にしないはずのrRNAの生合成に何らかの悪影響を及ぼすのではないかと考えています。