Cryopreservation Conference 2022 でご講演いただく皆様を紹介いたします。
近年、再生医療の進展とともに、幹細胞や再生組織の凍結保存の重要性が増しつつある。
長年使用されてきているジメチルスルホキシド(DMSO)などの凍結保護剤(CPA)には毒性があり、また細胞の分化に対する影響も懸念されることから、新たなCPAの開発が望まれている。我々は、これまで細胞内に浸透しないタイプの高分子系CPAを開発してきた。
今回の発表では、近年世界中で研究が広がりつつある高分子系のCPAについて概説し、我々の開発したカルボキシル化ポリリジンによる細胞の凍結保存について、機序から応用まで解説したい。
生殖細胞系列は次世代の個体をつくり、種の永続性を保証する唯一の細胞系列である。ゲノムはこの細胞系列の中で減数分裂により多様性を付加されながらも半減し、エピゲノムリプログラミング、性分化など様々な特殊な過程を経て再び個体発生に十分な状態となる。多能性幹細胞を起点としてその過程を再現できれば、生殖細胞系列の発生・分化メカニズムの解明のみならず、得られる配偶子を用いた個体の作製も可能になる。我々はこれまでにマウスのES/iPS細胞を用いた配偶子誘導法を開発している。本シンポジウムではこれら一連の研究の紹介と特に細胞保存に関する今後の課題について議論したい。
生殖細胞は、動物の遺伝資源を保管して個体を復元する技術のターゲットとして、大きな可能性を持っている。特に、受精卵を長期保管できない場合には、配偶子(精子と卵)、あるいは配偶子を作る生殖系列の細胞を保存し、受精を経て個体を復元する戦略への期待は大きい。我々は、マウスを用いて、精子形成の源となる精子幹細胞の性質を研究してきた。本カンファレンスでは、マウスを中心としたほ乳類の精子幹細胞を用いた、生殖工学技術の歴史と現状を紹介する。さらに、精子幹細胞の性質についての知見を応用することで、移植による精子産生の効率を顕著に向上させることに成功した我々の研究について議論したい。