2025.10.19
amount は1275年頃に英語に借用され、初出時の意味は「†登る」であった(1631年に廃義)。現在用いられている「総計…になる」の語義は1300年以前から見られる。「†登る」の語義が示すように、amount はラテン語の前置詞 ad と「山」を表す mont-, mōns を組み合わせた ad montem「丘に、上の方へ」を語源に持つ。ラテン語からのなぞりで古フランス語では a mont となり、副詞で「上の方へ」を意味する amont から動詞で「総計…になる」を意味する amonter が生まれ、中英語に借用された。
上記の語源が示すようにラテン語や古フランス語では <o> の綴字が用いられているが、現代英語では <ou> の綴字になっている。OED によるとアングロ・ノルマン語では amonter に加えて amunter, amounter の語形もあり、借用された中英語でも amonte, amounte, amownte, amunte などの綴字が見られた。ラテン語では <o> であったが、フランス語において <o>, <u>, <ou>, <ow> の綴字の変異が生まれ、それらが中英語に借入して近代英語にかけて <ou> の綴字に定まっていったと考えられる。また、amount の <ou> の発音は /aʊ/ であるが、Upward and Davidson によるとフランス語に由来する <ou> の綴字は /uː/ の発音に対応しており、大母音推移を経て /uː/ から /aʊ/ に変化した(p. 146)。
<ou> の綴字とその発音については、「16. abound」、「17. about」も参照されたい。
参考文献
「Amount, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Amount, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/amount_v?tab=etymology. Accessed 19 October 2025.
Upward, Christopher, and George Davidson. The History of English Spelling. Wiley-Blackwell, 2011.
キーワード:[<ou>] [Great Vowel Shift] [French] [Latin]