2025.10.3
always は all「あらゆる」と way「道」が組み合わさってできている。-s の語尾がついた always は中英語期にあたる1200年以前に初出したとされているが、古英語期にも ealne weġ の語形で用いられていた。ealne weġ は eall weġ の対格形だが、対格には直接目的としての意味だけでなく、名詞句に副詞の役割を与える働きもあった(副詞的対格(adverbial accusative))。したがって「あらゆる道」を意味する eall weġ の対格形 ealne weġ は「あらゆる道で」の意味を表し、それが時間の領域に転用され、「常に」の意味になった(『英語語源ハンドブック 』p. 13)。古英語では当初 ealne weġ と2語で書き表されていたが、次第に1語と見なされるようになり(関連する話題として「127. alreadyとall right ―1語で書くか2語で書くか―」などを参照)、屈折語尾が消失した alway の語形は『英語語源辞典』によると14世紀半ばから見られるようになった。
always に見られる語尾の -s は古英語の属格語尾が中英語で副詞形成語尾に発展したものである。これは副詞的属格(adverbial genitive)と呼ばれ、古英語では対格と同じく属格にも副詞の役割を語句に与える働きがあった。副詞的属格の -s を含む語には towards「…の方に」、sometimes「時々」などがあり、once「一度」、twice「二度」、since「…以来」に見られる -ce の語尾も副詞的属格の -s に由来する(『英語語源ハンドブック 』p. 13)。古英語の副詞的対格に由来する alway と副詞的属格の -s のついた always は競合していたが、『英語語源辞典』によると15世紀以降に always が alway に代わって一般化した。しかし、alway が完全に廃れてしまった訳ではなく、『英語語源辞典』によると欽定訳聖書(The Authorized Version)(1611年)では always が62例に対して alway は23例見られるという(ただし、同時代のシェイクスピアの作品では alway は2例しか確認されず、欽定訳聖書が古い語形を保っている例とも考えられる)。また、現代においても alway は古語や方言として残っている(『英語語源ハンドブック 』p. 13)。
参考文献
「Alway, Adv.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Always, Adv.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一『英語語源ハンドブック』研究社、2025年。
キーワード:[adverbial genitive] [adverbial accusative] [word division] [metanalysis] [Germanic] [Authorized Version] [Shakespeare]