2025.9.22
almanac は「(天文学的資料の付いた)暦;年鑑」を意味し、1388年以前に初出したとされている。『英語語源辞典』によると中英語期の綴字は主に almenak, almanac が用いられ、語末の /k/ の音は <k> または <c> で表されていた。almanac は中世ラテン語の almanac(h) から英語に借用されたが、『英語語源辞典』によると中世ラテン語の almanac(h) はスペイン・アラビア語の al-manākh から借用され、さらに一説には後期ギリシャ語で「暦」を表す almenikhiaká 、そして古代エジプト語の最終段階であるコプト語に遡るとされている。ただし、OED によるとこのギリシャ語の ἀλμενιχιακά は σαλμεσχινιακά からの写字生のミスである可能性があり、σαλμεσχινιακά 自体の語源は不詳であるという。
語源を眺めると、語末の綴字はスペイン・アラビア語では <kh>、ラテン語では <c> または <ch> が用いられていることが分かる。また、『英語語源辞典』に掲載されている、中世ラテン語から借用・発達した他の言語を見ると、フランス語では almanach、イタリア語では almanacco、スペイン語では almanaque、ドイツ語では Almanach となっており、言語によって /k/ を表す綴字は様々である。OED によると中英語期から見られる <-k> や現代英語に通ずる <-c> の他にも英語史上複数の almanac の異綴りがあり、16世紀から19世紀には <-ck(e)>、また16・17世紀にはラテン語などに見られる <-ch(e)> の綴字が見られた。
/k/ を表す綴字の変異に関連して、「102. alchemy ―/k/を表す綴りの変化―」を挙げておく。
参考文献
「Almanac, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Almanac, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/almanac_n?tab=etymology#6497751. Accessed 22 September 2025.