2025.7.30
age は1225年頃にフランス語から借用された語で、名詞では使用が確認されている順に「(一生の)一時期」(1225年頃?初出)、「年齢」(1275年頃初出)、「…時代」(1300年頃初出)、「老齢;成年」(1325年以前?初出)、「寿命、一生」(1380年頃初出)、「一代、世代」(1535年初出)、「(口語で)長い年月」(1595–96年初出)、名詞から派生した動詞では「老いる」(1440年初出)の意味を持つ。
借用元の古フランス語は aäge, eäge と3音節だったが、中英語では『英語語源辞典』によると a(a)ge などの語形が用いられ、初期の段階から2音節の単語だった。ただし、OED にはイングランド英語だけでも次のような異綴りが記録されている。
Middle English: ayge, eage, hagge
Middle English–1500s: aege
Middle English–1600s: aage
Middle English–: age
1500s: aidge, aige, hage
1600s: adge
OED では、これらの中英語・初期近代英語期の語形は、同時代のフランス語における語頭の連続した2つの母音を表す綴字に影響されたものだと説明されている。また、語頭に <h> のついた変種はフランス語やこれから述べるラテン語の語源には存在しないため、「16. abound」で取り上げたように語源では語頭に <h> が付いていたと勘違いして挿入されたものであると考えられる。
古フランス語の aäge, eäge は俗ラテン語の *aetāticu(m) から発達したもので、ラテン語の aevitātem が短縮された aetātem に遡る。aevitātem は「人生、永遠」を意味する aevum から派生したもので、印欧祖語で「命、生命力、長寿、永遠」を意味する *aiw- に遡る。*aiw- を語根に持つ語には以前取り上げた aeon の他、『英語語源ハンドブック』には本来語として ever「いつか、これまでに」、never「いまだかつて…ない」、every「あらゆる」、ラテン語語源の primeval「原始時代の」、medieval「中世の」、フランス語借用語の eternal「永遠の」、eternity「永遠」(下線部分が*aiw- を語根に持つ部分)が挙げられている(p. 8)。
最後に、『英語語源ハンドブック』には aging /ageing, agism /ageism, agist /ageist の綴字の英米差について触れられている。アメリカ英語では age の語末の <e> を取って -ing, -ism, -ist を付けた aging, agism, agist が用いられる一方で、イギリス英語では <e> を残した ageing, ageism, ageist が用いられている(p. 8)。 age が2音節、3文字の短い語であることと関係がありそうだが、他に同じような例があるのか、なぜこの英米差が生じたのか引き続き調べていきたい。
参考文献
「Age, N. & V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Age, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/age_n?tab=forms#8658290. Accessed 30 July 2025.
唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一『英語語源ハンドブック』研究社、2025年。
キーワード:[French] [Latin] [Indo-European] [folk etymology] [initial <h>] [British and American English differences]