2025.7.24
afford は後期古英語から用いられており、第1義は「†なし遂げる」(1200年以前に廃義になったとされている)、第2義は「…できる、…する余裕がある」(1378年頃初出)、第3義は「与える」(1581年初出)である。
afford の古英語での語形は ġeforþian で、古英語で過去分詞や集合分詞などを表す接頭辞 ġe- と forth の古英語形である forþ から派生した、‘to further’ を意味する forþian から成る。ġeforþian から中英語期に ġe- が弱化し、aforthe(n)、iforthe(n) に発達した。
ここまでの古英語・中英語の語形で明らかなように、<f> は語源的には1つしかなかった。しかし、『英語語源辞典』によると16世紀にラテン語接頭辞 af- の影響を受け、<f> が2つ重ねられた綴字が用いられるようになった。前回、前々回の記事で取り上げた affair や affirm はラテン語接頭辞 af- を語源に持つために <f> が追加された例であるが、afford は(実際の語源とは関係ないものの)af- を語源に持つと類推された結果生じた語源連想綴字(似非語源的綴字)ということになるだろう。
また、中英語の aforthe(n)、iforthe(n) から現代英語の afford までに <th> が <d> になっているが、『英語語源辞典』の afford の項にはこの変化は16世紀以降に起こり、 burthen ― burden、murther ― murder を参照するようにと記されている。burden の項では <th> と <d> の交替について次のように解説されている:
OE の þ に対して d を用いることはすでに12C末に始まるが、一方 th の形も ModE 初期までは一般的で、19C以降も擬古的効果を狙った文や詩語としては珍しくない。ちなみに、Shak. [=Shakespeare] (Riverside版) では d が10例ほどに対して th はその6倍余も用いられているが、AV [=The Authorized Version] ではすべて d である。この th と d の交替はとくに r の近くに多く起こり(cf. murder < OE morþor )、また15C以降には逆の現象も見られる(cf. father, mother (1))。
OED の語形欄によれば、 <d> を持つ語形は16世紀から見られる一方、<th> を持つ語形は17世紀まで用いられていたようである。<th> と <d> の交替については <th> から <d> への変化を遂げた語と、<d> から <th> への変化を遂げた語があり、今後更に検討する必要があるだろう。
参考文献
「Afford, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Burden (1), N. & V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Afford, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/afford_v?tab=forms#9195703. Accessed 24 July 2025.
キーワード:[etymological spelling] [analogy] [folk etymology] [ad-] [th vs d]