2025.7.5
adult は1531年に形容詞の「成人した」の意味で初出した。名詞の「大人」の意味は形容詞よりも遅く1658年に初出した。adult の語源は「59. adolescent は3つのパーツからできていた!」で触れたように、ラテン語の adolēscere の過去分詞 adultus またはフランス語の adulte から借用されたもので、印欧祖語 *al- 「成長する、育てる」に遡る。 *al- については上述の記事や「15. abolish」でも取り上げたが、『英語語源ハンドブック』ではこの他に elder「年長の」、altitude「高さ、高度、標高」、exalt「高める、ほめそやす」、alma mater「母校」の前半要素も同じ語根に基づくと説明されている(p. 6)。
adult の <u> は /ʌ/ と発音されるが、Upward and Davidson によるとラテン語やフランス語に由来する語における短母音字としての <u> はほぼ /ʌ/ を表し、特に2つ(以上)の子音字や <x> が続くことが多い。例として、drug、sum、ultimate、usher、abundance、discuss、button、public、muscle、luxury、product、adult、result、judge などが挙げられている(p. 161)。
また、adult には第2音節に強勢が置かれた /ədʌ́lt/ と第1音節に強勢が置かれた /ǽdʌlt/ の2通りの発音がある。『英語語源ハンドブック』によるとイギリス英語とアメリカ英語で強勢の位置が異なり、2000年代に行われた調査によると、アメリカでは被験者の88%が第2音節に強勢を置くと回答したのに対し、イギリスでは84%が第1音節に強勢を置くと回答したという(p. 6)。現代でも英語は変化し続けていることの表れの1つであり、2025年現在、そして今後どのように変化している/いくのか、見届けられる限り見届けていきたい。
参考文献
「Adult, Adj. & N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一『英語語源ハンドブック』研究社、2025年。
Upward, Christopher, and George Davidson. The History of English Spelling. Wiley-Blackwell, 2011.
キーワード:[Latin] [French] [ad-] [Indo-European] [British and American English differences]