2025.7.3
adolescent は1440年頃の初出とされており、当時は名詞で「二歳以下の子馬」の意味で用いられていた(『英語語源辞典』ではこの語義は廃義になったとされている)。第2義は「青年」で、1459年の初出とされている。形容詞「青年期の」としての使用は1785年からとされている。
中英語期の語形も現代と同じ adolescent で、綴字の変化が起こった訳ではないのだが、語の構成をこれまで詳しく調べたことはなかった。adolescent はラテン語の adolēscentum から(古)フランス語を経由して借用された。adolēscentum は「成長する」を意味する動詞 adolēscere の現在分詞で、接頭辞 ad- と同じく「成長する」を意味する -olēscere から成る。-olēscere は「増加する」を意味する -olēre、「育てる」を意味する -alēre、そして印欧祖語で「育つ」を意味する *al- に遡る。印欧祖語 *al- については「15. abolish」でも取り上げているが、同根語の1つとして adult があり、ラテン語の adolēscere の過去分詞 adultus またはフランス語の adulte から借用されたものである。
さて、ラテン語 adolēscentum における -ēscentum の部分は、不定詞が -ēscere で終わる動詞の現在分詞語尾であるが、英語における接尾辞 -escent として『英語語源辞典』や OED で見出しが立っている。-escent は「…し始めた、…になりかかりの、…期の」、「…性の」、「…の光を出す」の意味を表す形容詞を造る接尾辞で、OED には deliquescent「溶けた」、effervescent「沸騰性の」、obsolescent「次第にすたれていく、退行性の」、putrescent「腐敗しかけた」が例として挙げられている。
adolescent は細かく分ければ接頭辞 ad- と語根 alēre、接尾辞-escent から成る語ということになる。
参考文献
「Adolescent, N. & Adj.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Adult, Adj. & N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「-Escent, Suf.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“-Escent, Suf.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/escent_suffix?tab=etymology#5232586. Accessed 3 July 2025.