2025.5.29
「アクセサリー」を表すのは accessary と accessory のどちらでしょう?というクイズができそうなほど、表題の2語は語形がよく似ている。
「アクセサリー」の意味を持つのは<o>のスペルの accessory の方だが、「アクセサリー」の語義は『英語語源辞典』によると1896年が初出で、意外にも新しい。accessory の名詞としての第1義は法律用語の「従犯」で1414年に初出している。その後1429年から第2義の「付属物」として用いられ、そして第3義が「アクセサリー」となっている。形容詞としても用いられており、1607年から「従犯の」、1618年から「付属的な」の意味で使われている。
他方の<a>のスペルを持つ accessary は1470年初出で、名詞としては第1義が「従犯」、第2義が1534年初出の「付属物」、形容詞としては第1義が1552–55年初出の「付属的な」(1691年に廃義)、第2義が1592–93年初出の「従犯の」となっている。それぞれの意味・品詞が現れる時期に違いはあるが、「アクセサリー」の意味を除いて accessory と accessary が持つ語義はほぼ同じである。accessory と accessary の違いは一体何なのだろうか。
次に語源を比べてみよう。accessory の中英語期の語形は accessorie で、(古)フランス語の accessoire または中世ラテン語の accessōrius から借用された。accessary の中英語期の語形は accessarie で、中世ラテン語の accessārius から借用された。そして、ラテン語の accessōrius と accessārius はどちらも accessus ( access の語源でもある)から派生してできた語で、accessōrius は accessus から派生した形容詞、accessārius は accessus から派生した名詞である。『英語語源辞典』にも注記されているが、accessary と accessory は語源的には名詞と形容詞の違いがあったのだ。
OEDによると、accessory はかつては第1音節に強勢が置かれることが多く、発音に関して accessory と区別されていたという(OED の初版であるNew English Dictionary (1884年)には、accessory について第1音節に強勢が置かれる発音と第2音節に強勢が置かれる発音の両方が記載されていた)。また、特に法律用語として使用する際に、語源に基づいて accessary は名詞として、accessory は形容詞として区別して用いていたこともあったそうだ。しかし、現在は名詞・形容詞のどちらでも一般的に accessory が好まれるとのことで、語形も意味もよく似たこの2語については accessory に軍配が上がったようだ。
参考文献
「Accessary, N. & Adj.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Accessory, N. & Adj.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Accessary, N. & Adj.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/accessary_n?tab=etymology#40141640. Accessed 29 May 2025.
キーワード:[French] [Latin] [assimilation] [ad-] [doublet]