研究・事例研究発表

9月日(日)12:30~15:15 

 会員による研究成果の発表や事例紹介を通じ、問題点や課題点を共有し、大学職員としての見識を高める場です。

 当日お聞きになりたい研究・事例研究発表を、定期総会・研究集会参加申込みと同時にWebにてお申込みいただきます。発表時間帯と発表内容について、下記の一覧および次頁以降の発表概要をご確認の上、お申し込みください。同一時間帯に行われる発表は、ひとつしか申し込みできませんのでご注意願います。

 なお、事前申込みは、あくまでも会場設営等の目処をたてるためですので、当日の変更は自由です。

 一部内容に変更が発生する場合がありますので予めご了承ください。

 また、方法は全てハイブリッドによる発表となりますので、対面、オンラインいずれかの方式でご参加ください。 

タイムテーブル

会場

●現地会場

●オンライン

発表要旨

発表概略

TimeⅠ 12:30~ 13:00

【Ⅰ-】三役タスクフォース、その狙いと取り組み


区分:事例研究発表共同発表】

氏名:岡田 雄介(龍谷大学)

   田島 睦浩(神奈川大学)

   奥村 克司(金沢星稜大学)

   寺尾 謙 (神奈川工科大学)

   橋本 昌紀(名城大学)

概略:

2022年9月、三役の特命課題を検討するため、新たに三役タスクフォースが編成されました。その背景には、学会結成以来、四半世紀の月日が経つ中で、外部環境や社会情勢が大きく変化し、会員個々で加入動機や学会に期待する役割もそれぞれ違いがあり、その多様なニーズや思いに応えきれていないかもしれない、そのような危機意識がありました。

また、学会の目的や事業、設立趣旨は普遍的なものですが、時代の変化に合わせて変えるべきものもあります。しかし、こうした課題は既存の委員会や地区別・テーマ別研究会で扱うには難しく、三役が取り組むには時間や負荷の面から限界があり、本組織が編成された次第です。活動は実質、1年しか経っていませんが、今期は3つのテーマに絞って課題の深掘りを行いました。その成果と課題、そして将来に向けた見通しについて、事例発表を行うとともに、JUAMの中長期的な未来の姿、あり方を俯瞰したいと考えています。

【Ⅰ-大学職員のキャリアデザイン支援活動としてのCCUS


区分:事例研究発表【共同発表】

氏名:塩川 雅美(大学未来創造研究所)

   吉田 一惠(人間環境大学)    

概略:

先の見えない時代になり、主体的なキャリア設計の重要性が叫ばれているが、大学職員が主体的・戦略的にキャリア設計を行うための支援は充分とは言えない。そのため、孤独と苦悩を深めている職員も多いのではないか。

このような仮説をもとに、2021年の秋に開始したCCUS(Career Compass for University Staff)という活動は、大学の中堅職員を対象とし、「各自が自らの『強み』」を発見し、自分の人生を『主人公として生きる』」ことを5回の連続セミナーを通じて支援するものである。具体的には、「キャリアのたな卸しと価値観・強みの自覚」、「新しい時代を生き抜くためのスキル強化」、「刺激し合えるネットワーク」を柱としている。

試験的に実施した初回参加者が、セミナー受講後に昇進や資格試験に挑むなど「主体的に」行動を積み重ねている事例を発表する。また、本年6月~8月に2回目を実施した結果も踏まえ、大学職員経験者による大学職員のための「キャリア設計支援活動」の意義と課題にも触れたい。

【Ⅰ-統合した大学法人の財務状況等の推移


区分:研究発表【個人発表】

氏名:岩崎 保道(高知大学)

概略:

本発表は「学校法人内の大学統合」「学校法人(大学法人)の合併」の効果を財務と入試の情報を用いて統合前年度~統合3年後の状況を明らかにするものである。


1. 財務分析(n=6)

○収益の適切性…補助金比率の増加と減少は各3法人と分かれた。

○効率性…人件費比の増加と減少は各3法人と分かれた。管理費比率は増加が1法人、減少が5法人と全体的に改善した。

○活動性…教育研究経費比率の増加と減少は各3法人と分かれた。

○健全性・安全性…自己資本関係比率及び負債比率ともに増加と減少は各3法人と分かれた。


2. 入試情報(n=7)

増加、減少ともに3学科であった。学校法人内の大学統合は増加が1学科、減少が3学科だった。学校法人(大学法人)の合併は、増加が2学科、減少はなかった。


本研究はJSPS科研費 21K02633の助成を受けたものです。

【Ⅰ-「大学事務職員の業務遂行方法」調査の分析結果報告


区分:研究発表【研究会発表】

名称「働き方」研究会 

概略:

 「働き方」研究会では、大学職員の「働き方」の実態を、「共通性」「多様性」の2つの観点から調査・分析することを活動目的のひとつとしている。その一環として、本研究会では2023年6-7月に「大学事務職員の業務遂行方法」調査を実施した。同調査は、大学職員の「改善業務(以前から存在している通常型・ルーティン型業務について、より効率的・効果的な業務が実施できるように、業務内容の見直しや変更を行う業務)」「新規業務(学内にこれまでに存在せず、実施のための手法が確立されていない業務)」に着目し、大学職員はそれらの業務をどのような経緯で担当し、どのような方法を用いて遂行しているのかを明らかにすることを目的としている。本報告では、同調査の分析結果の報告を行う。

なお、本調査・研究は、科学研究費補助金若手研究(課題番号:21K13598、研究代表者:木村弘志)の助成を受けたものである。

【Ⅰ-人的資源管理における人事制度の実証研究~全国大学事務職員調査二次分析~


区分:研究発表【個人発表】

氏名:宮澤 文玄(学校法人学習院)

概略:

 本研究発表の目的は、日本の大学職員の人事制度における評価や職員個々人のやりがいに対する規定要因を、個人・組織の属性や考え方から探索することである。

 分析にあたっては、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センターにて公開されている2010年「大学事務組織の現状と将来―全国大学事務職員調査」の個票データを用いた二次分析とする。

 分析対象とする本調査票の人事制度に対する回答を中心に、各設問で取り上げる変数を基に定量分析を行い、現行の日本の大学における人事制度の一端から、現状と課題を見出すことを目指す。そして、この現行システムが有効に機能しているかについて、人的資源管理の視座を取り入れ、今後の研究の発展に繋げることを学術的意義とする。

【Ⅰ-私立大学における決裁・承認権限改革の実践報告


区分:事例研究発表【共同発表】

氏名滝本 修士(北海道科学大学)

   永峰 由佳(北海道科学大学)

   三上 健太(北海道科学大学)

概略:

—あなたの職場では、一つの稟議書(決裁を要する文書)にいくつの押印が必要ですか。

—もし、多くの押印が必要だった場合、そのうち、決裁者(最終的な責任を取る者)は誰か、明確に答えることはできますか。

—そして、それらは学内規程等の根拠に基づいていますか。それとも、前例や慣習のみによるものですか。

 北海道科学大学では、決裁・承認権限を見直すことで、適切な権限移譲による主体的な業務遂行と業務効率化の推進を図る取組を数年前から進めてきました。今回の発表では、「押印廃止・見直し」や「DX」といった社会的な潮流の中で、大学運営が組織的かつ効果的に行われるために、私たち大学職員にできることは何か。本学のプロジェクトの事例発表を通じて、参加者の皆さまと考えたいと思います。

【Ⅰ-定員管理政策に対する学生数と財務に着目した私立大学の経営について


区分:研究発表【個人発表】

氏名:福山 敦(茨城キリスト教大学)

概略:

 本発表の目的は、2015年7月の文部科学省と日本私立学校振興・共済事業団からの通知文書「平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)」に基づき実施されている定員管理政策の下で、私立大学の学生数と財務内容の推移を分析し、私立大学の経営を考察することである。

 定員管理政策とは、三大都市圏に学生が集中し定員超過となっている状況を踏まえ、入学定員が一定程度超過した場合に私学助成を不交付にするという基準を三大都市圏および大・中規模大学については一層厳格化するものであり、適正な定員確保による教育条件の改善および地元大学への進学促進による地方創生を目指す取り組みである。

 本発表では、2016年度以降の立地や規模別での私立大学の学生数と財務内容の分析結果を報告し、定員管理政策下における私立大学の経営についての議論を行いたいと考える。

【Ⅰ-氷河期世代の女性非正規労働者の学びの実態とリカレント教育


区分:研究発表【個人発表】

氏名:小椋 幹子 (京都女子大学

概略:

 Society5.0 時代の人材供給に女性非正規労働者の職務能力開発が不可欠であるとの問題意識に立って、企業内の教育訓練(OJT、Off-JT)へのアクセスビリティと自主的な仕事に関する学び(自己啓発)の阻害要因に着目し、その実態について量的調査と質的調査を行った。量的調査(「氷河期世代の女性労働者の学びに関する調査」)として、インターネットリサーチ会社のパネルを使用したwebアンケートを実施した。(n=560、アンケート実施期間 2021年11月2日~4日)

 また、10名の氷河期世代の女性について、仕事に関する学習活動の状況と学習にあたっての課題(障壁など)についてインタビューを実施した。その結果、①先行研究とは異なり、子どもの有無、末子の年齢は学びの阻害要因ではないこと、②大学のリカレントを卒業後も学習活動の継続傾向があることがわかった。

 学びの実質化のためには、企業連携やリカレント卒業生のネットワーク化とアフターフォローが重要であり、大学職員にその役割が求められる。

【Ⅰ-大学職員の専門性獲得における人材育成プロセスの事例研究


区分:研究発表【個人発表】

氏名:影山 豊(追手門学院大学 大学院 経営・経済学研究科 博士前期課程

概略:

 本研究は、大学職員の能力開発における専門性の養成について議論するものである。職員の専門性について、文科省答申(2005)はインストラクショナル・デザイナーや研究コーディネーター、IRerといった、スペシャリストの養成が重要であると述べている。一方、篠田道夫(2016)は、ゼネラリストとスペシャリストの両面を持ったハイブリット型の大学職員が必要であると述べている。そこで、本研究では4大学の管理職レベルの職員にインタビューを実施し、大学職員の専門性とは何か、またその専門性を大学としてどのように養成しているかなどについて調査した。その結果、大学職員の専門性に対する見解は、すべての大学で共通しており、専門性の高い職員には篠田(2016)のハイブリット型の職員像が求められていることがわかった。また、専門性の養成については、SDを通して行われているが、必要な人材を外部からスカウトするような戦略も必要であると考える大学も見られた。

【Ⅰ-10 教学マネジメントに携わる大学職員に求められる資質・能力


区分:事例研究発表【個人発表】

氏名井上 一成滋賀医科大学

概略:

 1990 年代以降、大学職員の資質向上・能力開発(高度専門職化を含む)については多くの政策文書等において言及されている。とりわけ、教務系分野の職員に関しても、「教学マネジメント指針」において教学マネジメントに携わる職員の能力開発に言及されるなど、例に漏れることなく、近年の文教政策の一環として従来の職務内容を高度化させる方向性が示唆されている。

これらの背景を受け、大学の現場では教学マネジメントに携わる職員にどのような働きが期待されているのだろうか。さらには、当該職員の専門職化にはどの程度期待が寄せられているのだろうか。

本研究報告では、国立総合大学・私立総合大学・国立単科大学・私立単科大学において教学マネジメントに携わる現職の大学職員(管理職)各1名を対象とした半構造化インタビュー調査の結果を共有し、大学職員に期待される役割と資質・能力について展望する。

TimeⅡ 13:15~13:45

-三役タスクフォース、JUAMにおける新しいSDプログラムの模索


区分:事例研究発表【共同発表】

氏名:寺尾 謙 (神奈川工業大学)

   岡田 雄介(龍谷大学)

   白藤 康成(京都産業大学)

   田島 睦浩(神奈川大学)

   松田 優一(関西大学)

   門馬 利光(東北福祉大学)

概略:

2022年9月、三役の特命課題を検討するため、三役タスクフォースが編成されました。その一つとして、早稲田大学アカデミックソリューション(以下、WAS)とJUAMの連携をベースとしたチーム「WASと連携したSDプログラムの開発やSDノウハウ集の作成」が編成されています。このタスクフォースチームによる検討を基礎に、これまで3回(2023年5月末日時点)にわたるWASとの協議により、「資格取得によるSDプログラムの開発」に向け、JUAM会員を講師として派遣するスキームを事業継続の観点から模索しております。

当日は、この進捗報告と今後の見通しに関する事例発表を行うとともに、参加者の意見を求める機会を設け、JUAM会員のニーズも加味したSDプログラムの開発を目指します。

最後に、本内容は、検討段階にあり、公式事業としての実施については、第14期あるいは第15期の三役&常務理事会の承認の上、行われるものであり、構想中(検討中)の事案にあることも申し添えます。

【Ⅱ-これからの大学を構想するための大学を越えた連携実践事例


区分:事例研究発表【共同発表】

氏名:塩川 雅美(大学未来創造研究所)

   近藤 智彦(愛知大学)

   福留 園子(高知工科大学)

   妹尾 瞳 (徳島工業短期大学) 

概略:

2021年春より、国立、公立、私立大学の有志が集まり、「大学のためのFuture Design研究会」を立ち上げた。この研究会は、「これからの大学」を構想するためのヒントとなる学びを得るためにオンラインで講演会やワークショップを企画し、研究会メンバー以外からも参加者を広く大学関係者から募って実施している。活動1年目は、コロナで混乱する社会情勢の中で、「未来の視点」から構想するためのヒントとなるようなテーマを中心にオンライン講演会などを企画、実施した。活動2年目は、「これからの大学」を担う担当者に求められるスキルや知識の提供を中心に企画、実施した。今回の発表では、活動2年目の内容を報告すると共に、これまでの活動を通じて、「大学を越えた連携」で研究会活動に参画したメンバーが得た学びや気づきを紹介する。

【Ⅱ-私学助成の構造変化と大学の補助金獲得行動に関する一考察


区分:研究発表【個人発表】

氏名:中村 智治(東洋大学)

概略:

本研究の目的は、私学助成が私立大学の経営にどのような影響を及ぼしているかを明らかにし、近年の各大学補助金獲得行動、捉え方の変化を通じて、大学経営についての示唆を得ることである。補助金収入は私立大学の収入構成比において学納金に次ぐ科目である。しかし政府財政支援方法は機関補助から個人補助に徐々にシフトしており、経常費補助金の補助割合は昭和55年の29.5%から低下の一途を辿り、現在はわずか10%となっている。補助金が減少している中でも将来像提示と政策誘導を行う政府に対し、各大学はどのように振舞っているか、補助金獲得行動に着目し研究する。

本研究発表では昨年度発表内容を発展させ、①1970~2010年代における私学助成・高等教育政策の構造変化の実態整理、②競争的補助金申請・採択状況と大学属性・経営状況の関連性、③大規模私立大学における私学助成の機能・役割の3つの分析課題の実証結果を報告する。

【Ⅱ-エイジフリーな組織と人事のあり方について~アンケートから見る新しい組織と人事~


区分:研究発表【グループ発表】

名称大学人事・事務組織研究グループ 

概略:

社会での人口減少、高齢化、社会保障等の問題に伴い、65歳以降の働き方、定年及び役職退任のあり方、法令対応、人材の活かし方…、多くの諸問題が組織内に山積してきており、もちろん大学組織においても同じ問題を抱えています。本研究グループでは、この問題にフォーカスを当てて、これまで専門家や現場で働く職員の方々からの講演をもとに、参加者と共に議論を続けてきました。

これまでは個々人の意見や事例について議論してきましたが、今後必要とされる組織や人事のあり方を考えていく上で、もっと多くの情報が必要となり、本学会員に対して「エイジフリーな組織と人事のあり方」をテーマとしてアンケート実施をさせていただきました。

今回は、本アンケートの結果について集計分析し、各大学の諸制度の現状把握を踏まえ、次の時代に必要とされる新しい組織と人事のあり方について示唆していき、この問題について各大学で考える一助になればと考えています。

【Ⅱ-発表なし

【Ⅱ-大学大淘汰時代における女子学生支援の意義


区分:研究発表【共同発表】

氏名松本 美奈 (帝京大学 東京財団政策研究所

   宇田川 拓雄(嘉悦大学)

概略:

大学の「大淘汰時代」が到来している。大学ファンドの設立や理系学部への転換支援などを通し、「選択と集中」で淘汰を図るのが国の目論見のようだ。当面のターゲットは「赤字」「定員割れ」「高中退率」、そして「SDGsに対応しない」大学。中でもSDGsの柱、ジェンダー平等に関心の低い大学は追い込まれるだろう。

 報告者は、2008年〜2019年に読売新聞に連載された「大学の実力」調査に一貫してかかわった経験から、女子高校生に「大学の選び方」として、女性の「教職員比率」「管理職比率」や「女性職員への制服着用義務」などに着眼するよう伝えてきた。大学が、女性がいきいきと能力を発揮できる場所ならば、学ぶ意欲が上がり、将来に希望を持ちやすいからだ。

 米国では、女子高校生向けの大学ガイドが多数出版されている。「サバイバルガイド」と呼ばれ、読者層も広い。女子学生支援は女性の経済的自立に役立つとともに国の生産性向上にも有効である。女子学生支援が、大学の生き残りと社会の持続を支える原動力育成というSDGs本来の目的にも寄与することを明らかにしたい。

【Ⅱ-中国大学東京校の進出背景―日本の脅威となりうるのか―


区分:事例研究発表【個人発表】

氏名澤谷 敏行関西学院大学

概略:

文部科学省の外国大学等の日本校の指定*を受けた中国大学東京校がここ数年増加している。その中には中国の211工程指定の国家重点大学も含まれている。現在文部科学省の指定を受けた東京校は北京語言大学、上海大学、曁南大学ほかである。中国側の日本進出の事情を探るとともに1990年代に日本に進出した米国大学日本校との比較を行い、18歳人口減少期において日本の脅威となりうるのかを検討する。

東京に進出した大学は中国の中央政府や地方政府が管轄する国公立大学であるが東京校の運営は民営方式であると考えられる。海外進出については、政府の関与が少ない米国では大学自らが自主的な施策をとるが、中国では政府が政策を打ち出し実行にも関与している。大学経営、大学戦略の視点から中国大学の日本進出の背景を分析する。

*https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shitu/08052204/1417852.htm

【Ⅱ-大学職員の地域貢献に対する意識について


区分:事例研究発表【個人発表】

氏名山内 暁(関西国際大学)

概略:

従来、大学の役割は「教育」と「研究」の2つであるとされてきたが、近年ではこれに加えて「社会貢献」が第3の役割として求められるようになり、各大学には国公立・私立、規模の大小を問わず、「地域連携センター」等の部署や、「社会連携課」などの事務部署も設定されるようになった。「社会貢献」の一つである「地域貢献」に対しは、大学教員は自身の研究分野との関連や授業などを通じて積極的に関わるケースが多いが、大学職員についてはまだ関わりが少ないのが実情である。本発表では、2023年2月に提出した関西学院大学大学院経営戦略研究科の研究課題の一環としておこなった大学職員に対するアンケートの結果を紹介、分析するとともに、今後の大学職員の地域貢献のあり方について検討をおこなう。

【Ⅱ-教職協働による教学改革(2)


区分:事例研究発表【個人発表】

氏名平山 崇西南学院大学

概略:

本報告では、2018年度以来、本学が推進してきた教職協働による教学改革の過程において発生した事例をもとに、組織の劣化、または戦略の不全に関する文献をレビューし、整理した結果を報告する。組織の盛衰に関しては、個体群、ライフサイクル及び業種特性に焦点を当てて分析を行う研究事例、並びに個別企業を対象に経営幹部自体及び経営幹部の意思決定に焦点を当てて分析を行う研究事例があることを紹介する。その上で、本学の事例をもとに、トップマネジメントとミドルマネジメントの相互反応、意思決定のあり方に焦点を当てて整理して報告する。

小城武彦(2015)『組織衰退プロセスからの脱却を阻害する組織内メカニズム-探索的事例研究₋』「日本経営学会誌 第36号 PP62‐73」.

TimeⅢ 14:00~14:30

-学習システム・パラダイムの転換における推進アクターの役割


区分:事例研究発表【共同発表】

氏名山咲 博昭(広島市立大学)

   荒木 俊博(淑徳大学)

   岩野 摩耶(山口大学)

   白藤 康成(京都産業大学)

   堀 佑二 獨協大学

概略:

2020年1月公表の中央教育審議会大学分科会「教学マネジメント指針」等により、学長のリーダーシップに基づく教学マネジメントの必要性が増している。そのなかでは、従来の教員本位の教育(教授パラダイム)から、学位プログラム単位での学修者本位の教育(学習システム・パラダイム)に移行することが求められているが、その移行過程では様々な衝突やコンフリクトが発生し、その解決にあたっては役職者やそれを補佐する者による種々の調整が行われていることが予測される。しかしながら、その調整を行うアクターの知識や経験、行動等は明らかにされていない。そこで、内部質保証・教学マネジメントを推進するアクターの特徴を記述することを目指して国立・公立・私立大学20校に対して半構造化インタビューを行った。主たる分析結果とその考察について、抜粋して発表する。

【Ⅲ-高等教育機関消滅による地域の衰退を歯止めできるかを考える


区分:研究発表【個人発表】

氏名塩川 雅美(大学未来創造研究所)

概略:

発表者は、兵庫県在住であるが、公共の交通機関が充実していた京阪神地域から「最寄り駅のない地域」に転入し、同じ日本、同じ関西でも、移動方法が限られることによって様々な制約があることを実際に体験している。子供の数の減少により、最寄りの小学校は来春には閉校となる。

高等教育機関に関しても、私立大学がない県や、私立の高等教育機関が3校しかないうえに、3校の学生数を合わせても1,000人満たない県もある。結果として、このような地域からは、若年層が県外へと流出してしまう。若年層の県外流出を食い止めようと、公立の高等教育機関の数は増加傾向である。一方、「都市部」と呼ばれる地域では、「大学の生き残り」をかけ、あの手この手で受験生を確保しようとしている。この「高等教育機関が消滅する地域」と「生き残り策を求める高等教育機関」を結び付けることで、地域衰退への歯止めとする案を提示したい。

【Ⅲ-これならわかる大学の財務「学校法人の永続性と翌年度繰越収支差額」


区分:研究発表【グループ発表】

名称財務研究グループ

概略:

私立学校法による中期計画策定義務化を待つまでもなく、法人経営を永続的に行うために中長期的な経営計画の立案とその実践が従前よりも強く求められている。そして学校法人会計基準は経営状態を表す指標としてストックの貸方概念である翌年度繰越収支差額を用意している。

しかし、実際には経営状況を「基本金組入前当年度収支差額」で説明されることが多く、翌年度繰越収支差額が用いられることは少ない。本発表ではこういった短期的な収支を前提とした考え方(いわゆるPL脳)ではなく、翌年度繰越収支差額とそれに対応する資金量を重要な指標(BS脳)として再評価を試みる。

具体的には翌年度繰越収支差額の現状をデータで把握しつつ、理論的な検討を加えたうえで、課題感や実際の実務例を概観する。そして借方概念として将来的に必要となる資金量をどのように内部留保していくかについても、実務的な検討を加えながら論点を整理し、若干の提案を加える。

【Ⅲ-「オンラインによる研究・実践交流会」の記録 ―2020年研究集会中止の年―


区分:事例研究発表【個人発表】

氏名:杉原 明(学校法人工学院大学)

概略:

新型コロナウイルスで社会全体が大きな混乱に陥った2020年、JUAMの研究集会は中止となった。中止が決定された5月は、各大学がオンライン授業への切り替えに取り組み、学生の学びを止めないよう必死に取り組んでいる時期であった。このような状況の中で、研究・研修委員を中心とする会員有志が集まり、研究集会の代替となる「オンラインによる研究・実践交流会」を企画した。9月に開催された本イベントは、結果として273名が参加する大規模なものとなった。

 本年の研究集会は当然のようにオンラインを活用したハイフレックス型で開催されているが、これも2020年の本イベントから蓄積された経験が現在につながっている考えられる。本発表では、各大学の業務が多忙であるにもかかわらず自主的に集まっていただいた委員各位への感謝の意も込めて、当時の担当常務理事であったから立場から、その開催に至るまでの状況を中心に事例として発表したい。

【Ⅲ-大学職員の実態 ―他のホワイトカラー人材との比較研究―


区分研究発表【個人発表】

氏名村山 孝道(京都文教中学・高等学校)

概略:

 大学を取り巻く環境の変化は加速しており、それに伴って大学職員(以下、「職員」)に対する期待が高まっている。2017年の学校教育法と大学設置基準改正により、職員の職務内容が事務に「従事する」から「司る」に、そして役割が事務を「処理する」から「遂行する」に格上げされた。さらに、直近の大学設置基準改正では、教育研究実施組織を共に担う教職員は規定上一体と捉えられ、職員の業務は教育・研究を含めた領域へと拡張された。今、職員がそれぞれの現場においてより主体的で進取的な行動である「プロアクティブな行動」をとれるかどうかが、大学の存亡に影響を及ぼしはじめている。職員とその組織の現状を確かめるべく、職員のプロアクティブな行動(ジョブ・クラフティングとナレッジ・ブローカリング)と、それに影響を与える組織風土を、他のホワイトカラーと比較した。

【Ⅲ-米英の大学におけるプロフェッショナル・スタッフの業務と雇用


区分:研究発表【個人発表】

氏名大島 英穂立命館大学

概略:

 本会は、プロフェッショナルとしての大学行政管理職員の確立を目指しているが、米英の大学においては、プロフェッショナル・スタッフに移行し、拡大している。そこで、文献、大学のウェブサイト情報、インタビューを通して、プロフェッショナル・スタッフの業務と雇用の状況を探求する。雇用形態について、米英はジョブ型であるのに対し、日本はメンバーシップ型という違いがある。しかし、プロフェッショナル組織である大学において、プロフェッショナル(教員)に対して、サポート・スタッフという位置づけは同じである。米英における動向はどのような背景のもとで生じており、プロフェッショナル・スタッフが担っている業務と雇用、および教員との関係はどうなっているのか、そして、それは日本の大学職員の今後のあり方に対して、どのような示唆を得ることができるのかを考える。

【Ⅲ-大学事務職員の国際化 -国際部門以外の職員に関する観点整理-


区分:研究発表【個人発表】

氏名坂本 規孝愛媛大学

概略:

 大学の国際化が様々なレベルで進む中、国際部門以外の部局等においても国際業務を直接的又は間接的に担う現状にある。この状況が今後拡大すると考えると、国際部門以外の事務職員も国際化の対象となり、力量の向上が一層求められる。しかしこの分野に関する研究は、研修事例報告等は散見されるものの十分な蓄積があるとは言い難く、さらなる発展が期待される。

 本発表では、上記の状況と先行研究等を踏まえ、事務職員の国際化には基本的な観点が2つあることを示す。具体的には「担当業務における国際性」と「国際適応力」である。前者は所属部署や担当業務の観点であり、置かれた状況における国際化の方向(小山内2010)によって影響を受ける。もう一つは、語学力、国際経験、語学力を問わない能力(内田・小山2013、塩川2015)で構成される個々人の力量の観点である。以上のような観点の整理を通して、事務職員の国際化を改めて考察したい。

【Ⅲ-学生対象の大学ICT利用実態調査―大学グループ会社実施のインタビュー調査より―


区分:事例研究発表【個人発表】

氏名齋藤 高慶株式会社早稲田大学アカデミックソリューション

概略:

 「Society 5.0」実現のために、ICT利便性向上は大学でも必須である。『統合イノベーション戦略2022』においても、「Society 5.0の実現に向けた科学技術・イノベーション政策」の一つに、「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)と課題への挑戦を実現する教育・人材育成」が設定されており、その参考指標として、学校におけるICT環境整備の状況が挙げられている。

上記を踏まえ、当社では大学の情報化推進支援の一環として大学ICTの利用者実態を把握するため、2021,2022年度の2回、早稲田大学の学生をモニターとしたインタビュー調査を実施した(対象:計104名)。主な調査項目は、学内システム・インフラ利用状況、ヘルプデスクへのニーズなどで、学生が大学ICTに求める事項を中心にヒアリングを行った。

その結果、オンライン授業受講場所を選ぶ条件や、大学の情報発信に求めるポイントなどが明らかになった。本調査の結果を踏まえ、大学ICT利用環境における満足度向上への対応について考察する。

【Ⅲ-学生相談と障害学生支援の違いについて―CAS Standardsの記述より―


区分:研究発表【個人発表】

氏名垂門 伸幸京都産業大学

概略:

 2021年5月に障害者差別解消法が改正され、事業者による合理的配慮の提供は法的義務に引き上げられた。改正法は2024年4月から施行される。

これまで国立大学・公立大学では同法を踏まえた学生対応(以下、障害学生支援という)のため、規定や組織体制の整備がすでに行われてきているが、今後は事業者である私立大学も体制整備が迫られることとなる。

 さて、日本では多くの大学で学生相談の体制が整備されており、この資源の障害学資支援への転用・一部活用の整備計画は、大学によってはあり得るだろう。

 この点で、前提として両者の役割を理解しておくことは有用である。

米国で1979年に設立された「CAS」は、高等教育機関の様々な業務領域における基準を提示してきた。2023年現在、提示されている50領域の中に学生相談と障害学生支援に相当するものがある。今回、両者の記述を比較し、役割の違いについて得られた示唆を報告する。

TimeⅣ 14:45~15:15

-大学教職員の「学修者志向」に関する研究


区分:研究発表【共同発表】

氏名白藤 康成(京都産業大学)

   山咲 博昭(広島市立大学)     

概略:

 本研究の目的は、わが国の大学の教職員における学修者志向の現状を明らかにすることである。学修者に対する志向性は学修者本位の教育の実現に重要な概念であると考えるが、管見の限りその実証研究は存在しない。そこで、顧客志向や患者志向の先行研究に依拠し、これらの志向性が個人レベルと組織レベル別々の構成概念として検討されてきたことを踏まえ、個人レベルの学修者志向と組織レベルの学修者志向を別個に測定することを試みた。

 インターネット調査によって得られた大学教員および大学職員の回答を分析サンプルとし、種々の統計解析を経て個人レベルの学修者志向と組織レベルの学修者志向の尺度開発を行うとともに、教職員間の志向性の差異や個人-組織レベル間の志向性の適合度について検討した。本発表では、主たる分析結果とその考察について、抜粋して述べるものとする。

【Ⅳ-大学職員のワークライフバランス施策と私立大学の成果の関係の指標策定に関する研究


区分:研究発表【個人発表】

氏名鎌田 雅子(日本経済大学)    

概略:

 本研究は、人的資源管理(HRM)の観点から、大学職員を対象としたワークライフバランス(以下WLB)施策が実施されている私立大学は成果をあげている、という仮説を明らかにすべく、その指標を策定することを目的としている。企業を対象とした研究では、WLB施策を実施している企業は成果をあげている、という結果がでている。よって、最初に企業における先行研究を参考に、WLB施策実施の指標となる制度や成果指標、他の要因となりうる変数を抽出した。そして、大学における成果に関する先行研究をレビューすることにより、企業と比較可能な指標になるよう変更を加えた。また、これらの指標に関する現場における認識を私立大学の人事関連専任職員にインタビューをし、明らかにすることによりその内容を限りなく現場の認識に近いものに高めた。 本研究は私立大学の安定的経営に寄与する研究の一端を担うことを目指す。

【Ⅳ-これならわかる大学の財務「活動区分資金収支計算書は本当に必要か?」


区分:研究発表【グループ発表】

名称財務研究グループ    

概略:

 活動区分資金収支計算書は、平成25年の学校法人会計基準改正時に新たに作成することが義務付けられた。そして、平成27年度から令和4年度までに施行後8回の決算を迎えた。活動区分資金収支計算書の活用例としては、日本私立学校振興・共済事業団において、経営判断指標の中で使用しているが、学校法人会計基準改正時に期待されていた学校法人独自のキャッシュフロー計算書の役割を活動区分資金収支計算書が果たしているのか、そして、この新しい計算書が私立大学の財務分析に活用されているのかを考察する。

 本発表では、活動区分資金収支計算書に着目した財務分析を行っている先行研究をレビューする。また、学校法人の財務担当者に、個別インタビューを行い、決算や経営資料として、活動区分資金収支計算書を利用している実態の事例も報告する。

【Ⅳ-私立大学の新任理事・評議員入門用ハンドブックの紹介と各大学での活用に向けて


区分:事例研究発表【研究会発表】

名称大学経営見える化研究会    

概略:

 本研究会は、2002年設立時から現在に至るまで、大学経営に関する様々な課題の可視化を目指し、第6期(2013年~)以降、大学ガバナンスや中期経営計画などをテーマに、全国の大学法人を対象としたガバナンス調査の実施や、大学経営に関するトピックについて研究を進めてきた。

2025年4月より改正私学法が施行され、理事・評議員の役割も大幅に強化されることから、当研究会では、外部人材、とりわけ新任の理事や評議員が、学校法人・大学のガバナンスに貢献するためには、学校法人・大学特有の知識・情報を就任時に提供することが重要と考えた。そこで、これまでの研究成果を取りまとめ、昨年度のJUAM研究集会における事例研究発表も踏まえ、『私立大学の新任理事・評議員が知っておくべきこと(仮称)』を執筆し、今年度内の刊行準備を目指している。当日は、目次を中心とした概要紹介・今後の活用展開に関する報告を行う。

【Ⅳ-大学職員の実態 ―健康・採用・労働市場・モチベーション等の視点から―


区分:研究発表【個人発表】

氏名:村山 孝道(京都文教中学高等学校)   

概略:

 人口減少が進む現代の日本において、大学経営に直結する大きな課題である大学職員の実態について分析した。日本は私立大学が大学数・学生数ともに8割を占めており、諸外国と比較して私立大学への依存度が高い。また、国立は半数以上が中規模、2割強が大規模大学であるが、私立大学の8割強は小規模・中小規模である。すなわち、日本の大学の特徴は、「私立への依存度の高さ」と「規模の小ささ(すなわち経営基盤の脆弱さ)」である。このような環境下において、少子化の進展が大学職員に与える影響を明らかにするために、いくつかのデータの分析や先行研究を基に、現状の把握と論点の整理を行った。分析のために考慮した概念は、「職員の健康・仕事の要求度と危機意識」、「採用市場・志望動機」、「外部労働市場」、「組織風土と将来展望・モチベーション」、「自己研鑽と上司による部下の育成・能力開発」、「職場外学習・越境学習」である。

【Ⅳ-留学生等との日本語の対話技術を学ぶ教職員対象講座が大学理系研究機関にもたらす価値


区分:事例研究発表【共同発表】

氏名松岡 里奈(大阪大学日本語日本文化教育センター)

   植原 邦佳(大阪大学接合科学研究所)   

概略:

 大阪大学日本語日本文化教育センターと同大学接合科学研究所(以下、研究所)は、2021年度より連携事業として、研究所の日本人教員・事務系職員・技術系職員の希望者を対象にした「日本語学習支援者養成プログラム」を開講している。本プログラムは、研究活動を英語で行う留学生並びに外国人教員との「やさしい日本語」を介したコミュニケーションを可能にし、より良い異文化間コミュニケーションの技術と姿勢、さらに、対話を通して日本語能力向上の支援が行える知識と技能の供与をするものである。現在までの修了者は基礎編30名、実践編21名にのぼる。

修了アンケート(回答率80.95%)の回答を質的に分析した結果、本プログラムの受講は、研究所国際化のための基盤強化や研究所内共通設備の管理運営等に有効だとして価値づけられていることが明らかになった。これらの結果から、国際化を目指す大学組織のあり方について考察していく。

【Ⅳ-大学の事務業務における生成AI導入のための思考的枠組みに関する考察


区分:研究発表【個人発表】

氏名森木 銀河(九州大学)   

概略:

 ChatGPT等の生成AIサービスの普及により社会は第四次AIブーム(NHK,2023)の様相を呈し、一部の大学はガイドライン等を表明するに至る。しかし大学の事務業務とAIの関係性について、両者の特性が直接的に論じられたことは無い。

 そこで本研究では文献調査を通して大学の事務業務とAIの特性を整理し、大学の事務業務における生成AI導入を促進する「思考的枠組み」について考察する。この枠組みは生成AIの特性と大学の事務業務の要求を組み合わせて理解し、最適な導入戦略を形成するためのメタ情報を意味する。

 かつてAIは大学の事務業務における技術的・社会的背景かつ諸条件として言及された一方、大学の事務業務を支援するサービスや統計的手法の一つとして採用されてきた。そうした知見を踏まえ、生成AIの先行研究・事例より諸特性を整理の上、大学の一部の事務業務における生成AI導入のための思考的枠組みを考察し、暫定的に構築した。

【Ⅳ-大学事務局におけるテレワークの積極的活用に向けた課題~大学間比較と実践報告~


区分:事例研究発表【個人発表】

氏名藤井 哲彦(國學院大學)   

概略:

 新型コロナウイルスの世界的な流行開始から3年が経過し、全国の大学でコロナ禍前の教育・研究活動の姿が復活しつつある。その一方で、国内外のさまざまな業種・職種において、事務職が自宅を含む職場外で執務するテレワークが、新しい働き方として一定範囲で定着しつつある。そのため、大学において職員のテレワークをどう位置づけるかは、人材確保の観点からも中長期的な運営に影響を及ぼす可能性がある。そこで、大学事務局においてテレワークを積極的に活用するうえで直面しがちな問題意識について、大学間調査の結果と、発表者自身が試みたさまざまな態様でのテレワークの実践体験を踏まえながら本発表によって共有し、多くの大学職員の関心を惹起したい。

 なお、本発表では、2023年8月刊行予定の『大学行政管理学会誌第27号』に掲載される事例報告「大学事務局におけるテレワーク運用の推移と実践」と題した拙稿での調査結果を活用する。

【Ⅳ-コロナ禍が入試広報に与えた影響~国立A大学の入学者アンケート分析が示唆するもの~


区分:事例研究発表【個人発表】

氏名森田 桂花電気通信大学)   

概略:

 国立の理系単科大学であるA大学では例年入学者調査を質問票方式で実施している。本発表ではその結果を過去5年分振り返った分析結果を紹介する。具体的には2019年から2023年の入学者アンケートの結果を経年比較するが、特筆すべきはこの間に日本がコロナ禍に見舞われたことである。

A大学においてもオープンキャンパスや大学訪問を全面的にオンラインにする、出張講義も基本オンラインにするなどの対応を取り、対面での志願者対応が制限される年度があった。

この期間を経て入学した学生とその前後の年度の学生の回答結果の比較分析を行うことで、コロナ禍が高大接続にもたらした影響、特に多様な学生獲得に与えた影響を可視化するため入試区分別(一般、総合型、学校推薦型)の比較考察を行った。一大学の事例ではあるもののコロナ禍が入試広報に与えた影響を可視化し、その知見を広く大学業界で共有したい。

-10】ジョブディスクリプションと目標管理制度~日本の大学職員の人事評価について考える~


区分:研究発表【共同発表】

氏名:久志 敦男(学校法人龍谷大学 龍谷大付属平安高中)

   宮澤 文玄(学校法人学習院)

概略:

発表者両名は、諸外国大学職員のキャリア開発とジョブローテーション、ジョブディスクリプション(職務記述書、以下JD)やリクラシフィケーション(職務等級の見直し、以下RC)の実態把握に努め、今後の日本の大学職員の人事制度の在り方について考察を重ねてきた結果、人的資源管理(Human Resources Management)の観点から、JDやRCを現行の日本の大学職員の人事制度に導入してもそれが即有効に機能しないという結論を導いた。しかしながら、世界各国ではJD、RCの活用が標準装備化しており、かつ、日本の民間企業においてもJDやジョブ型雇用の導入が拡大傾向にあることから、引き続き注視していく必要がある。

今回の発表では、欧米を中心に一般化しているJDと日本の現行制度の主流である目標管理制度との制度比較等を通じ、今後の日本の大学職員の人事評価について深堀していきたいと考えている。