光電子ホログラフィーの原理
Principle of photoelectron holgraphy

光電子ホログラフィーについて

概要

光電子ホログラフィーとは、光電子を使って、原子配列を測定する方法です。この測定方法には、従来の原子配列にはない、さまざまな利点があります。

この特長により、ダイヤモンド中の不純物(ボロン、リンなど)のドープサイトの決定などに非常に威力を発揮します。光電子ホログラフィーの測定原理と実験方法は、それほど難しくありません。むしろ、原子配列を得るための解析方法の理論が難しいのですが、これも近いうちにプログラムにインプリメントされ、近い将来は、ホログラムを測定すれば結晶構造が、誰でも簡単に得られるようになると考えています。まずは、対象となるサンプルの条件や、測定方法について紹介しましょう。

内殻光電子分光(XPS)の応用測定法であるため、適用できるサンプルは、同様の制限があります。XPSと同等の条件として、

また、光電子ホログラフィーの条件としては、

これらの条件を満たせば、ホログラムから原子配列を得ることが可能となります。

利用できるのは、光電子、オージェ電子です。光電子の場合、励起光は、 500eV~2000eVぐらいが適当です。これを使って、原子の内殻電子を励起し、光電子を発生させます。

オージェ電子の場合は、励起源として、光、電子、イオン、などがあります。有用なのは、光と、電子です。特に電子の場合は、ビームを小さくすることが可能となり、マイクロ結晶からのホログラムが測定可能となります。

光電子、オージェ電子を測定するには電子エネルギー分析器を使います。電子エネルギー分析器にはさまざまなタイプがあり、市販されているものから、特殊なタイプのものまであります。市販されている物の中には、角度積分型というタイプがあります。これは、サンプルから出てきた、さまざまな方位に放出された光電子を集めて、エネルギー分析するものですが、このタイプは光電子ホログラフィーに利用することはできません。角度分解型と呼ばれるものが必要となります。

角度分解型電子エネルギー分析器は、試料から出てきた、特定の方位のみの電子を測定するものです。一度に1つの方位しか測定できない電子エネルギー分析器を使った場合は、サンプルの極角と方位角を走査し、光電子の、方位に対する強度のマップを作ります。近年はMCPとCCDを組み合わせて、一度に±10~30°×0.5°程度までの角度分解しつつ、一度に測定できるアナライザーも市販されています。これを利用すれば、サンプルの走査にかかる時間を大幅に短縮することができます。

特殊なアナライザーとしては、1次元投影型の電子エネルギー分析器と、2次元投影型の電子エネルギー分析器があります。1次元投影型は、一度に±90°×0.5°ぐらいの領域が測定可能であり、サンプルの方位角を回転させるだけで、電子ホログラムを測定することが可能です。さらに2次元投影型になれば、一度±60°×±60°が測定可能となり、サンプルをまったく動かすことなく、ホログラムが測定できます。