(1)博士論文が、立体形状による表現を含む等の理由により、インターネットの利用により公表することができない内容を含む場合
(2)博士論文が、著作権保護、個人情報保護等の理由により、博士の学位を授与された日から1 年を超えてインターネットの利用により公表することができない内容を含む場合
博士課程で研究を進めていくと、その成果を学会や学術雑誌への投稿により発表することがあります。学術雑誌では、論文の著作権を著者から学会・出版社に譲渡する「著作権譲渡契約」が行われている場合が多く、著者がその論文を博士論文として提出、あるいは博士論文の一部としてそのまま利用し、また、インターネット公表するには、著者本人にその権利があるか確認する必要があります。
これらの確認をしたうえで、博士論文を公表することにより学会・出版社の著作権を侵害する恐れがある場合は、「著作権保護」を理由として「やむを得ない事由」に係る申請をしてください。
論文の著作権は、書きあげた時点では著者にあります。投稿された論文は、査読(ピア・レビュー)を経て、受理されるかリジェクトされるか決定します。ここで、受理された場合に、著者から学会・出版社へ著作権の譲渡が行われます。 著作権の譲渡は一般に、編集者が著者に「著作権譲渡契約書」(Copyright Transfer Agreement,CTA など)を送り、著者がサインして返送するという手続きが取られています。複数人による共著論文の場合は、責任著者(corresponding author)がサインすることが多くなります。
著作権の譲渡契約を交わすことにより、雑誌論文の内容を博士論文にて再び使用する場合にも、契約書の条項に従う必要があります。なお、多くの学会・出版社はウェブサイトで著者向けの手引き(Instructions for authorsなど)を公開し、著作権の譲渡契約の内容について示しています。
著作権譲渡契約書では、次の点を確認していきます。
・学会や出版社にどのような権利が譲渡されるか。
・権利を譲渡した論文を博士論文として提出、あるいは、博士論文の一部として利用してよいか。
・また、その博士論文をインターネット公表してよいか。
博士論文に利用することについて、多くの学会・出版社では認めているようです。 一方、インターネット公表することについては、査読を経た受理原稿の登録を認める場合、出版社が作成したPDF を認める場合、全く認めない場合などがあります。また、リポジトリ登録を認める多くの学会・出版社では、雑誌刊行後一定期間は公表してはいけない、出典やURL を示さなくてはならない、などの条件があります。著作権譲渡契約書をよく読み、著者に認められた権利の範囲内で使用してください。
なお、国内の学会誌では、投稿規程に「掲載された論文の著作権は本学会に属する」とだけ指定してある、もしくは全く規程がない場合があります。 著作権譲渡契約書を確認しても権利が明らかにならない場合は、学会・出版社に確認をとるようにします。問合せの際は、次の点について許諾を得てください。
・博士論文として提出すること、あるいは、博士論文の一部としてそのまま利用すること。
・また、文部科学省の学位規則の定めによって、博士論文をインターネット公表すること。
なお、著作権譲渡契約書により博士論文として使用することが制限されている場合でも、直接問い合わせて許諾を得られることがあります。
他の人の著作物を博士論文に含めるには、引用として要件を満たす必要があります。引用については、次のような事柄が引用の要件として示されています。
1. 引用する資料等は既に公表されているものであること
2. 「公正な慣行」に合致すること
3. 報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること
4. 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
5. カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
6. 引用を行う必然性があること
7. 出所の明示が必要なこと
引用の要件を満たさない転載は、著作権者の許諾を得る必要があります。その際には、著作権者に、博士論文にて使用すること、またその博士論文をインターネット公表することを伝えて、許諾を得てください。博士論文での使用について許諾が得られても、インターネット公表について許諾が得られない場合は、「やむを得ない事由」のうち「著作権保護」にあたるものとして、申請する必要があります。
上記の場合、予め、どの程度の内容を研究発表に用いるかを明らかにしたうえで、調査対象の方の同意を得て、同意の範囲内で博士論文に使用する必要があります。同意が得られない場合は「やむを得ない事由」のうち「個人情報保護」にあたるものとして、申請する必要があります。
既に別の出版物にて公表した内容を、学術雑誌等に投稿することを指します。博士論文として承認された後に、その内容の一部を雑誌論文にまとめ、投稿することがあります。しかしながら、インターネット公表をした論文は広く公表された論文とみなされ、学術雑誌の多重公表に対するポリシーに抵触する恐れがあります。
多重公表になる恐れがある場合は、次の点を投稿先に予め問合せておくとよいでしょう。
・博士論文の内容を投稿することが可能か。
・その博士論文がインターネット公表された場合に、投稿することが可能か。
なお、多くの学会・出版社が、ウェブサイト上で出版倫理に関する情報を提供しています。その中で、“Prior Submission”, “Multiple Publication”, “Duplicate Publication”など、多重公表についての規定を示しています。まずは、このような情報源を確認するようにしましょう。
多くは多重公表を禁止していますが、英語以外の言語での出版、主たる結果や結論が未発表だった場合などは、論文投稿を受け付けるというポリシーを持つ学会・出版社もあります。なお、博士論文の投稿のみ認められ、インターネット公表が認められなければ、「やむを得ない事由」として申請する必要があります。