第1回蘭医学サロン
日時:2024年10月19日(土)9:30-12:15
会場:大阪大学会館講堂
日時:2024年10月19日(土)9:30-12:15
会場:大阪大学会館講堂
ご挨拶
蘭医学者が活躍した時代、日本は鎖国体制下で、唯一長崎の出島でオランダとの交流があり、オランダを介してヨーロッパの科学や文化を吸収していました。同時に、複数の欧米諸国から強力な開国の圧力があり応対せざるを得ない状況でした。その頃のアジア諸国は、欧米諸国からの不平等な条約の締結や圧力を受けることもしばしばあり、日本も厳しい立場に置かれていました。
一方、この時代は天然痘やコレラなどの感染症の流行が社会の重大な脅威であり、国内においてもこれらの感染症のパンデミックには、なすすべもなく非常に多くの犠牲者を出していました。
この様な激動の時代に蘭医学者や蘭学者は、社会の中で自分たちが果たすべき役割を自覚し、感染症の流行と戦い人々の健康を守るため粉骨砕身する者や、欧米諸国との間で外交的に対等な日本の地位を確立するために奔走する者など、様々な分野で社会的責務を全うするために尽力し、幕末から明治維新における日本の近代化の原動力となりました。
現代社会では、医学の目まぐるしい進歩によって平均寿命も江戸時代に比べると倍以上に延びました。それでも新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中で多くの犠牲者を出し、医学の無力な一面を実感することになりました。今後も、どの様なタイプのウイルスがいつ出現し人類に対して再び猛威を振るうかを、予想することは困難です。
また、現在の国際情勢において、東欧や中東地域における戦争が、いつになったら終結するのか、それとも周囲に拡大するのかの予想は極めて困難です。これらの国際紛争は決して対岸の火事ではなく、国際社会の一員としての日本の役割も求められています。
先の見えない現代社会において、我々はどの様に生きて行けばよいのか、大変難しい時代になっています。この様な先の見えない現代社会だからこそ、幕末の蘭医学者の生き様から、我々が現代社会を生き抜いていくためのヒントを教えてもらえるような気がします。
『蘭医学サロン』を通して、蘭医学者がどの様な時代に、どの様なことを考えて、どの様な思いで、学問と向き合っていたかを、より身近に体感していただければと思います。
2024年10月
大阪大学適塾記念センター・センター長
島田昌一