研究室の一年

 以下では参考として、学内の行事などを踏まえつつ卒論配属された4年生にとっての研究室の一年間と、教育方針について掲示します。必ずしもこの日程で進むわけではなく、個人差があり、教員の試行錯誤があります。一般的に研究室の活動に積極的に関与するほど、よく成長し、より良いキャリアパスを見つけることができます。

 The followings are an example of the typical schedule of our lab.  The actual schedule depends on every student and/or occasional events. In general, your contribution greatly improves not only your research but your skill and career.

前提

 当研究室では、本学工学部の電気電子工学科および電子情報工学科の卒業研究(学部4年生)、工学系研究科電気系工学専攻の修士および博士課程を指導しています。このほか、本学の制度による交換留学生や国際インターンシップ生を受け入れております。

 We receive bachelor, master and doctoral course students of EEIC/EEIC, the University of Tokyo. In addition, foreign students and international internship students under the official activity of our university are highly welcomed. 

進学・就職関係

 卒論配属された学生はほぼ全員が修士課程へ進学しますが、進学先が当研究室とは限りません。自身が志望する研究を行える研究室へ進学することが多く、当研究室でもそのことを推奨しています。大半の学生は修士課程修了後に就職しますが、博士課程へ進学する人もいます。また、修士課程、博士課程から入学する人もいます。企業などに在籍したまま博士課程へ進学する社会人博士は多くありません。これは、当専攻の方針として、講義への出席や学外での研究発表といった修了に必要な活動を優先していただく必要があるほか、当研究室の運営方針としても、研究室内のミーティングへの出席や他の学生との積極的なかかわりを期待しているためでもあります。

 Almost all bachelor students proceed to a master's program, but some of them go to the other laboratories. Students often proceed to a laboratory where they can conduct the research they wish to do, and we highly encourage to do so. Most students find employment after completing their master's program, but some proceed to a doctoral program. Some students also join us from master's or doctoral program. There are very few working doctoral students who proceed to a doctoral program while still enrolled in a company. This is because our department's policy requires that you prioritize activities necessary for graduation, such as attending lectures and presenting research outside of school, and our laboratory's operating policy also expects students to attend meetings within the lab and actively interact with other students.

 就職先は企業の研究職、開発職、技術職が多く、分野は電気電子情報工学の知識を活かせるものが多いです。公務員や独立行政法人へ就職する人もいます。夏秋も最初の就職先は独立行政法人の研究職でした。

 Many graduates find employment in corporate research, development, and technical positions, many of which utilize their knowledge of electrical, electronic, and information engineering. Some also find employment in the civil service or with public agencies.

The followings are a typical schedule for a graduate student.

4月~5月

 研究室配属直前の3月下旬から4月にかけて、新たに研究室に配属された学生は、教員と面談をします。その人の経歴や趣味、興味、将来の希望といったものを踏まえて研究テーマを相談したいからです。また、研究室のセミナーや歓迎会で自己紹介をしてもらいます。恥ずかしがらずにあなたのことを教えてください。

 その後、自分の興味や関心に合った研究テーマを設定できるよう何回か相談します。前年度までに卒/修了した人の研究テーマを引き継ぐ場合が多いですが、希望するテーマがあれば研究室でこれまでやってこなかった新しいものでもよいです。もちろん、教員も初めてという研究テーマは、教員と二人で勉強しながら進めていくことになりますから、多少大変かもしれません。それでも、全く知らない、興味もないテーマを押し付けられるよりもはるかにマシですし、何より自分で努力して学んだことは先輩や教員に手取り足取り上げ膳据え膳で教えてもらうよりもはるかに身につきます。全く初めてといっても、教員は日頃からよくわからない論文を読んでいますから、キャッチアップは得意なつもりです。

 最初は、仮に決めた研究テーマに関連する論文を一報読んでもらい、その内容をまとめて研究室のセミナーで発表してもらいます。時期はゴールデンウィークの後ごろです。ChatGPT のようなAI が発達しても人間が内容を咀嚼し理解するには時間がかかります。AI にまとめの文章を作ってもらうのは、人間が理解したという意味ではありません。論文の内容を質問された時に自分で考えて回答できるか、類似の問題が現れた時に応用できるか、といった場面で人間の理解が問われます。

6月~7

 論文を読んだり、先輩方が残したソースコードや実験装置があればそれらを動かしたりすることで、おおむね研究の方向性ややることがつかめると思います。7月末の研究室のセミナーで、自分の研究テーマや初期の成果を発表してもらいます。教員はこの時期に学会へ行ったりします。皆さんも研究成果を挙げると翌年の国際学会へ出席できるかもしれません。

 研究テーマは、基本的には続けて行けば博士号を取れるような発展性のある内容です。いきなり難しい問題を解くのは大変なので、最初は小手調べに文献調査や試作を通じて分野に慣れていきます。併せて、教員の側も皆さんの得意不得意を把握していきます。

並行して、大学院入試の願書を出すなど、来年度以降の進路を考えます。卒論で配属される研究室だけでなく、駒場の生産研、先端研や、相模原の研究室には修士からしか所属できない研究室もあります。いろいろな研究室の中から自分がやりたいことに一番近い研究室に入れるとよいと考えています。それが、私たちの研究室であればとても嬉しいです。

8月

夏休みですが、研究室はだいたい開いています。大学院入試の勉強会をするもよし、自分の研究をするもよし、夏休みを満喫するもよしです。

教員はこの時期、海外の学会へ出張することが多いです。

9月

9月上旬に大学院入試の結果が公開されます。皆さんが第一志望に合格すると良いですが、そうでなくても何かのご縁で配属された先に面白い研究テーマがあるかもしれません。私たちの研究室に配属が決まった人たちも、ぜひ一緒に楽しい研究ができるとよいと思います。

当面の課題として、大学院入試で中断していた研究を再開します。9月からの1カ月で中間審査なので、それまでにいろいろと手を動かしておくと、卒業論文の本審査へ向けたスタートダッシュとして機能するでしょう。

10月~12月

10月上旬に卒業論文の中間審査が行われます。そこでもらったコメントなども踏まえ、自分の研究を進めていきます。

基本的には、皆さんが主体的に動くことを期待しています。教員は「〇〇をやってみて」というような大雑把な指示は出しますが、期限を切るといったことはあまりやりたくありません。これは、指示待ち人間を育てたくないからです。とはいえ、あまり音沙汰がないと様子を見に行くかもしれません。

自分でやるだけでなく、難しければ先輩や教員に助言や助力を求める、何か結果が出れば見せに来る、といったことを自主的にできるようになることは、これからの人生で必ず役に立つ能力です。

1~3月

卒論を書いて卒業論文の本審査を受けます。先輩方も博士論文や修士論文などを書いていますし、1月初旬には夏の国際学会の原稿の締め切りがあります。今までが知識の習得や実験の段階だと思うと、この時期は出力の段階です。もちろん、先行研究や書籍を調べて知識を蓄える、仮説を立てたり実験をする、文書としてそれをまとめる、という一連の研究のサイクルは常にいくつかが並行して行われます。その練習だと思ってください。

なお、この時期は学部の入試なども関連するため、教員が数日音信不通になる場合もあります。

晴れて卒業したあと、私たちの研究室に進学する場合は研究テーマの相談(続けるか、別のテーマに挑戦するか)をしますし、新しい研究室、就職先へ行く人もいます。