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動物の生態を明らかにする女性研究者を目指したい(後編)

取材先:新領域創成科学研究科 自然環境学専攻 生物圏機能学分野 久保研究室 博士課程1年(取材時)鬼崎 華さん(以下、「」)

インタビュアー: 石田 悠華(先端生命科学専攻 人類進化システム分野、博士課程1年(取材時)) (以下、「」)

【後編】~小さい頃からやりたかったテーマに取り組む

悠:この研究に取り組んだきっかけは何だったのですか?

華:私は、修士課程までは地理学の研究をやっていました。その研究室で植物珪酸体の分析について教わっていました。

悠:植物から動物に研究対象を変えたということですね。なぜですか?

華:当たり前ですが、植物珪酸体の研究では植物を観察しないといけません。でも、私は昔から動物が好きで、動物の研究をやりたいと思っていました。NHKの番組「ダーウィンが来た!」とかを観て、いろいろな動物がどんな場所でどういう生活を送っているのかを知るのが楽しいなと思っていました。

悠:幼い頃から動物の生態に興味があったのですね。

華:はい。そこで、当時の研究室の先生に「植物珪酸体の研究も面白いけど、何か動物に関わる研究ができないか?」と相談しました。すると、「植物珪酸体は動物の歯石の中にも残されているんじゃない?」と提案していただいて、卒論も修論もそれに関連した基礎的な研究をテーマにしていました。

悠:でも博士後期課程からは所属を変更された?

華:はい。私はもっと動物を主軸にした生態学の研究をやりたかったのと、植物珪酸体だけじゃなくて、いろんなアプローチを試したかったので、マイクロウェアの研究をしている今の研究室に変えました。

悠:今の研究は、ご自身の過去の研究も生かせるし、小さい頃からやりたいと思っていたことを実現できているのですね。すごいですね!

華:ただ、実験があまりうまくいかなかったりもします(笑)。仮説を立てて研究するけど、全くそういう結果にはならないことが多いです。思い描いていた結果が実現できるかどうかちょっとドキドキですけど、それでも昔から興味があったことに取り組めているので、すごく楽しいです。

植物珪酸体の写真。左はイネ科植物の葉の中に組織の状態で存在している様子。右は土壌堆積物サンプルから抽出したもので、複数の植物が混在している。植物によって珪酸体の形が異なることがわかる。

~Diversity and Inclusion を実現するために~

華:私は、学部、修士、博士とストレートに進学してきたのですが、社会人経験を積んでから修士や博士に戻ってくる人も多いですよね。そういう選択肢もあったのかと初めて知って、自分がストレートで進学したのは正解だったのかなと考えてしまうこともあります。

悠:いろんな道がありますよね。

華:女性としてのキャリアを考えると、一回社会に出てから戻ってくると大変なことも多いのかなと思います。この先の結婚、出産、育児などを考えると不安がないというとウソになりますね。

悠:制度的に改善されてきているとはいえ、自分がそういうイベントに直面した時にどんな大変なことが待ち受けているのか想像つかないところもありますよね。

華:そうなんですよ。でも、私の指導教員は女性の先生で、3人のお子さんの子育てをされながら研究もストイックにされています。そういった姿を間近で見ていると、自分の頑張り次第なのかなと思ったりもします。

悠:たしかにお子さんのいる研究者の方は、限られた時間を最大限に使ってストイックに研究されているイメージです。

華:将来的にそういうイベントに直面した時に相談できる相手がいるのは安心できます。

悠:女性研究者の見えない不安を解決してくれる人生の先輩がいるのは心強いですよね。