微生物、数学、ダム…広い興味から最終的に木に登る研究者に!

取材先:環境学研究系 自然環境学専攻 生物圏機能学分野 鈴木牧研究室 博士課程1年(取材時) 藤岡薫子(ふじおかゆきね)さん(以下、「」)

インタビュアー: 小林 柚子さん(基盤科学研究系 物質系専攻、竹谷研) (以下、「」)

菌が目に見える大学生を主人公にした漫画をご存じでしょうか。登場する菌のかわいらしい見た目に魅了された子供たちも少なくないはず。今回は、漫画「もやしもん」から微生物に興味を持ち、いろんな興味の変遷を経て、気が付いたら木に登って研究をすることになっていた、そんな藤岡さんのお話です

【前編】もやしもん面白い!から木の研究者へ。アクティブな興味の変遷とフィールドワーク

柚: 研究内容を教えてください。

薫: カエデの木の研究です。木の高さ成長は,ある程度の高さになると緩やかになるのですが、それがなぜ起こるのかを研究しています。

柚: 木の研究ってどんな風にやるんですか?マウス実験とかは周りにやっている人も知っているけど木はどうやって調べるんだろう。

薫: フィールドワークが多いです。私の場合は北海道の苫小牧などの調査地の森で木に登って、枝の長さを測ったり、葉っぱを採取して重さや面積を測ったりします。例えばこんな感じです。

(フィールドワークの写真。木に登っている人物が藤岡さん。こんな高い木に登って調査するなんてすごい。)

柚: めっちゃ高い!すごい!怖くないですか?

薫: 安全のためのロープが付いていますし、慣れました。こんなクレーンに乗って上から測ることもよくあります。

(クレーンに乗る藤岡さんの写真。)

柚: す、すごい。研究というと実験室にこもって暗いイメージ (私の実験はそう)かもしれませんが、こんなにアクティブな研究もあるんですね。昔から樹木に興味があったんですか?

薫: そういうわけでもないです。思い返してみると、理系に興味をもったのは「もやしもん」がきっかけですね。小学生のときに読んで、あの世界に憧れて、東農大で微生物の研究するんだ!って思ったのが最初です。

柚: 私もあの漫画大好きです!かわいい~と思って読んでたけど、実はがっつり研究の話ですよね。

薫: そうなんですよね。それで研究面白そうってなったかも。もともと図鑑眺めるのも好きだったし、ブルーバックスとかいっぱい読んでいたのもあると思います。

柚: 学術的なことが好きな子どもだったんですね。でも微生物からなぜ樹木に?学部は信州大学の森林科学科ということは、高校のときくらいには興味があった?

 薫: いや、そういうわけでもなくて…高校のときは生物はむしろ暗記科目と思ってそんなに好きじゃなくて、物理や数学が好きでした。森林科学科以外にも工学部のバイオテクノロジーの学部とかも受けましたし、入学したときも、実は「ダムつくりたいな」と思ってて。

柚: ダム!森林科学ってそういうのもあるんですね。

薫: 治山とかにも興味がありました。で、そのあと学部時代は数学や物理に傾倒していて、図書館にこもって勉強したり。趣味は数学!ってときもありました。

柚: ダムから数学まで…すごく興味が広いですね。全然樹木にたどりつきそうにない。どうやってカエデの研究に行きつくんですか?

薫: 「葉っぱ実習」という授業があったんです。演習林の木に番号札が付けられていて、その木の葉っぱを持って帰ってみんなで何の木か同定(同定:形や特徴からそれが何かを特定すること)していくんです。百個くらい同定しました。

柚: た、たいへんそう。

薫: 大変でしたが、やってみると森林の理解が深まるんです。林の中を歩いていて、「あ、これはあの木だな」とか、「この木はこういう環境によく生えているな」とか。自分の見る目が変わると、こんなに面白いんだなって。

柚: なるほど~。物を知るって、たしかに解像度が上がるってことですよね。図鑑が好きだったって言ってましたが、まさに図鑑の世界が目の前に広がってたんですね。

薫: そうです。それで気づいたら、木に登って研究してました。