過去の気候と海洋環境を復元して、地球温暖化の将来予測に貢献したい!

取材先:理学系研究科、地球惑星科学専攻、地球生命圏科学講座 /大気海洋研究所 海洋化学部門 大気海洋分析化学研究室 / WINGS-PES 博士課程1年(取材時)三木 志緒乃さん(以下、「」)

インタビュアー: 石田 悠華(先端生命科学専攻 人類進化システム分野、博士課程1年(取材時))(以下、「」)

太古から未来まで、研究者は縦横無尽に移動します。今回は昔の気候や海の環境について研究する三木さんのお話です。どうやって現在と太古、現在と未来をつないでいくのか覗いてみましょう。

【前編】~フィールドワークと実験室での実験の二刀流~

石: 現在の研究内容について教えてください。

三:私の専門分野は古気候・古海洋学という分野で、昔の気候や海の環境について研究する分野です。昔の気候や海の環境を知ることは、将来、地球の環境がどう変化していくのか、将来を予測するための手がかりを得ることにつながります。私は、地球温暖化が進行していった場合に将来ありうる地球の姿として、過去、今と同じかそれ以上に暖かかった時代(温暖期といいます)の気候や海の環境がどんなふうだったかを明らかにしようとしています。古気候・古海洋学を専門とする研究者はたくさんいますが、サンプルに何を使うのか、ツールに何を使うのかは、人によってそれぞれ違います。サンプルは、たとえば南極のアイスコアや、海底堆積物、サンゴなどの生物などがあります。ツールとしては、同位体や微量元素などの化学系のものや、古地磁気などの物理系のもの、地質学や堆積学など地学系のもの、種群集解析やDNA解析など生物学的なものなどがあります。

石:三木さんは何を使って研究されているんですか?

三:貝です。

石:貝のサンプリングはご自分でされるんですか?

三:はい、博士課程からは。主に地質調査とダイビングで収集できます。ただ、研究用のダイビングに必要な資格はまだ取れていないですし、トレーニングと勉強の真っ最中です。あとは漁師さんや博物館の方に協力していただくこともあります。

石:研究用のダイビング資格があるんですね。どんな資格なんですか?

三:資格は、”潜水士”という資格が必要です。それとトレーニングも必要です。レジャーのダイビングだと、安全に泳いでいって景色や魚たちを楽しむだけですよね。でも、研究のダイビングだと、安定した姿勢でサンプルを採取するスキルや、サンプリングに夢中になって空気の入ったボンベが空にならないように、ボンベの残圧が残りどのくらいになるまでに何をしなきゃいけないのかという潜水計画を立てたりするスキルなどが必要になるんです。

石:そういう資格があるのは知りませんでした!一回のダイビングにかかる時間はどのくらいなんですか?

三:水深20mくらいまでしか潜ったことがないのですが、スタンダードな容量のボンベなら一回のダイビングで40分くらいです。ボンベの空気のうち半分は帰り道の分のためにとっておかないといけないので、行きに(作業時間に)使える時間は20分もないんです。トレーニング中で経験も浅いので、最初のころは潜るときに耳が痛くなったりして、それだけで10分くらい使ってしまったことがあります(笑)。

石:ええ!時間との勝負ですね。

三:そうなんですよ。

三:地質調査は、地層が出ている面(露頭)を目指して出かけていって、堆積物や化石をとってきます。サンプリングは、天気が良い日を選んで、朝から晩まで行います。夏は19時くらいまで明るいですけど、冬は暗くなるのも早いですし、安全に行って帰ってこられるように、そして無駄な心配をせず最大限サンプリングに時間を使うことができるように、下調べや計画は立てて、備えられるものはしっかり備えてから現地へ行きます。

石:限られた時間のなかでいかに効率良く作業できるか、ということが大切なんですね。

三:はい。あと、今はモデリングの研究をしている学生と共同研究をしようとしています。化石から復元された地球化学的な証拠と、シミュレーションで得られた結果とでどういった関係が見られるのか、あるいは見られないのか、とても楽しみです。

石:おお~学融合ですね。面白いですね。