生命の根本である海を知りたい!から

プランクトン研究者の道へ(後編)

取材先:大気海洋研究所 海洋生態系科学部門 浮遊生物グループ 

              農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻 博士課程1年(取材時)玉蟲 奈佳子さん (以下、「」)

         ※修士課程での所属は、新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 先端海洋生命科学分野

インタビュアー: 石田 悠華 さん(先端生命科学専攻 人類進化システム分野) (以下、「」)

【後編】興味の対象は幼少期から生き物だった

石:どうしてまた、海に興味を持ったのかが気になります。

玉:小さい時から生物全般に興味がありました。大学の進路選択時に農学系か、水産系のどちらかで迷ったんですが、生命の起源が海であることを考えると、陸の動物ではなく、海の動物に興味が湧いて、海洋系に進むことを決めました。

石:すごい。生命の誕生のところまで遡って考えたんですね。

玉:はい。もともとの研究に取り組むモチベーションは「生物のことを知りたい」ということでした。

石:今の研究のモチベーションも変わらず、ですか?

玉:はい。「どこにどんな生物がどのくらいいて、どんな生物と関わって生きているんだろう?」というのをずっと考え続けています。

石:海にもいろいろ生物はいますが、動物プランクトンに注目した理由は何ですか?

玉:最初は、動物プランクトンが海洋の餌生物として食物網の根底を支える重要な役割を担っているので、詳しく知りたいな、という感じでした。でも、調べていくうちに、多様性が高かったり、分類群によっていろんな特徴を持っていたりするというところが面白いな、と思って興味の幅が狭まっていきました。

石:それはいつ頃ですか?

玉:学部の二年生の頃に講義があって、動物プランクトンそのものに興味を持つようになりましたね。

船上での活動の様子

石:なるほど。学部時代から対象は海だったんですか?

玉:私は学部時代は、岩手県の藻場や川がサンプリング場所で、魚類の餌生物の分類を形態観察をメインに行っていました。

石:じゃあ、もともとは、一匹一匹地道に観察する側の研究だったんですね。

玉:はい。学部の時の先生に動物プランクトンの研究を続けたいなら、と、今の研究所を教えていただいたんです。研究対象が岩手県の藻場から世界中の海になって、分類の方法も一匹、一匹の形態観察からまとめて遺伝子で解析できるようになって…

石:急に世界が広がっていてすごいですね。

玉:本当に世界が広がりました!メタバーコーディングは顕微鏡での形態分類ほど専門性が高くないぶん、多様な分類群の群集構造を一度に得ることができ、知らない世界を見ることができるのですごく楽しいです!

採取したサンプルを固定している様子

~Diversity and Inclusion を実現するために~

玉:真のdiversityは、女性だから、男性だから、というのではなく、その人が良いと認められることであって、雇用においても性別にとらわれない、というのが大事かなと思います。

石:たしかに、女性だからという理由だけで選ばれるよりも、きちんと認めてもらって選ばれた方が嬉しいですよね。

玉:はい。自分も将来研究者になりたいと考えているのですが、海外に目を向けると動物プランクトンの研究者の方は女性もすごく多いです。自分のやりたいことが最大限発揮できる場所を見つけていけたらいいかなと思っています。

石:知りたいことを知るために、すぐ動ける環境って大事ですよね。

玉:そうですね。今は、自分のやりたいことをやりたいようにできる環境にいるので、自分の中で選択肢を広く持つっていうことも一つの多様性かなと思います。私も研究者としての道を歩みたい気持ちはもちろんあるけれど、まだどんな仕事をしたいかまでは決められていないですし。

石:今いる環境の良さも、研究者として歩もうとする玉蟲さんを後押ししてくれているように感じます。

玉:周囲の環境が自分のモチベーションやその後の進路にも強く影響するな、というのはつくづく思いますね。