■AIに任せきりの仕事・・・人が支配されない領域
人間はAIによって考える能力を失ってしまうという研究結果があるようです。※1
ついに人間に残されていた知能(考える力)という唯一性が、AIに替わられることに懸念が生じています。
人に求められる能力として〇〇リテラシーと言われるものがありますが、AIについてはどうでしょう。
AIに対してもリテラシーが必須とする意見がありますが、AIはリテラシーを人間に提供する存在(拡張された自分)でもあり、この場合どのような能力が求められるリテラシーに相当するのか難しいものになっています。
産業革命以降、機械は人の力をまた、コンピュータは記憶や計算の力を代替、拡大してきました。
自動車の発明により歩いて出かける必要がなくなり、脚力が衰え健康を害するといったことも見受けられますが、人間の考える力については特別なものとして受け止められているようです。
人間の脳は限られた資源を効率よく活用する省エネという極めて優れた特性を有しており、AIがデータセンターのために発電所を必要とする力技とは異なるため、使わなくてよいものは休むのが自然な結果でしょう。
AIによる人間支配が来るのではないかといった懸念を耳にすることがありますが、人間の方から望んで思考の領域を明け渡すかもしれません。
論文の検証は、AIを用いて特定の作業を行った時に人間の脳が働いていないとしていますが、これは輸送機器で楽をすることを問題にするのと何が違うのでしょう。
今まで、自動車や飛行機の発明によって遠くへ短時間で到達できるようになり、その分のより多くのことが出来るようになりました。
体力維持のためにトレッドミルの上を走るように、脳の活性化が目的でトレーニングを行うことは必要かも知れませんが、何かを生み出すための考える目的とは異なるものです。
(個人の能力に応じて数学など基礎的なトレーニングを提供するサービスの需要が増すかもしれません)
幸いなことにパターンマッチングにより、広く深く調べ、回答してくれるAIは、対話も可能であり、出力結果を見ながら次々と質問をすることが可能です。
(AIによって特定のタスクを実施するのではなく、AIと対話しながら人が考える時の脳の状態について調査して欲しいと思います)
このとき人にはAIに相談する的確で効率的な指示の能力が求められます。
ここで必要なのが、言語化された人の意思<目的や目標、要件(必須の条件)>といった自分が何をしたいかの「未来設計図(ありたい姿)」です。
「課題達成型開発」はこの未来設計図をシンプルな手法で構築するために日本の自動車メーカーなどが長年用いて来た手法です。
例えば、新しい材料を開発するにあたって、材料メーカーが自動車メーカーに何を望んでいるかヒアリングしても通り一遍の答えばかりで要領を得ないと言う意見を聞くことがあります。
(自動車メーカーは、自分たちが何が欲しいか分かっていればとっくに頼んでいると内心では考えています。筆者にも経験があり、この橋渡しのお仕事をお受けしています)
本コラムでは、調査など対話(考え)中は、AIを用いますが文章を書くときは利用しないことにしました。
自分が読者に何をお伝えしたいか考えることをサボりがちになってしまうことを実感したためです。
AIにより考え方がパターン化された自分に質問や提案を思いつかなくなってしまう日がくるかもしれません。
AIが意思を持つ(支配される)のは、人の意思がパターンマッチングで読まれるようになった時でしょうか。
まだ人間には成長を続ける自分との闘いの時間が続きそうです。
貴社の取り組みに「課題達成型開発」でお役に立ちたいと考えています。
※1 生成AIに依存すると脳活動が低下したまま戻らない――脳波測定から導かれたショッキングな観察結果とそれを回避するための方法 | 研究員コラム | KDDI総合研究所
(2025.09.01)
■AIに押し流される自動車・・「物からサービス(MaaS)」で失われるもの
世界で5億人のユーザーを有し米国の就労者の28%が使っているOpenAIでChatGPT-5がリリースされました。
二週に1回の頻度でアップしている本コラムでも、AIの凄まじい進化の速度を感じます。
人間の適用力の高さは今の変化を受入れているようで、自動運転に関しても当然のことのように扱われ、自動車産業のパラダイムシフトは自動運転のコモディティ化を待つばかりという感じで多くの人々に違和感ないものになりつつあります。
新たな技術革新が生まれ、今までの社会システムが置き換えられることは多々ありますが、自動運転のタクシーなどを見れば運転席は不要になるだろうといった車の構造やドライバーの職業が失われてしまうのではといったことは容易に予測できます。
しかし現在の個人の所有を中心とした市場からより公共サービスに自動車がシフトしていく動きで身近な影響についてお気づきでしょうか。
重要な事実として、現在、自動車の実働率は5~10%程度であり、残りは駐車された状態です。
それでもマイカーが望まれたのは必要な時にすぐに使用できるという利便性を有し配車待ちの不便さに勝っていたからです。
自動運転車両を使ったライドシェア(Uber、Lyftのようなサービス)がより安価かつ即時性を有するようになれば、「必要なときに呼び出して使う」というスタイルが一般化し、車を「所有する」必要性が薄れます。
MaaS(Mobility as a Service)へのシフトは輸送サービスを含め、すそ野の広い自動車産業に携わる世の中の人々に大きなインパクトを与えることが考えられます。
自動車の共用には課題も考えられますが、自動で効率的な配車が無人で運用されるようになり待ち時間のタイムロスも解消され、自動車の稼働率が向上し、維持、管理、運用に関わる費用が激減することで所有のメリットが大幅に減少した場合はどのようなことが想定されるでしょう。
当然のことですが、自動車メーカーは既に動きつつあり、トヨタ自動車はe-Palette(自動運転MaaS専用車両)の開発を進めています。
また主要サプライヤー各社も積極的に取り組んでいます。
デンソー:「ソフトウェア&システム統合企業」へ転換
自動運転用のLiDAR、カメラ、ECU(制御ユニット)を“個別部品”ではなく「統合システムパッケージ(ADASプラットフォーム)」として提供し、将来は「デンソーが提供する運行AIが稼働するクルマ」からライセンスフィーを得るモデル
アイシン:「駆動系→モビリティサービス基盤」企業へ向け
MaaS向けに「車両ライフサイクルマネジメント(耐久性設計、遠隔保守)」ビジネスを構築中であり、車両の“使用時間”に応じた課金型BtoB契約の実証も始動しています
JTEKT(ジェイテクト):ステアリングシステムから自動運行制御へ
L4完全自動運転車両ではステアリングレスの設計も視野に入れた制御システム構築を目指し、自動運転MaaS事業者向けにフリート管理システム(メンテナンス診断連携)の提供を計画しています。
中国は国家資本主義モデルにより「価格破壊×爆速スケール」を武器に、EV・自動運転・MaaS市場で世界標準を狙っています。
さらにMaaSは個人での充電を不要とし、バッテリーの管理が容易になることでEVの使い勝手を格段に向上させ、日米欧でも一時の熱狂から覚めたEVが新たなトレンドを再構築するかもしれません。
中国は国家主導のモビリティ戦略を「国家産業政策ドリブン」として自動運転・EV・MaaSを「国家産業競争力の柱」と位置付けており、政府主導の補助金政策、インフラ整備(V2X、5Gスマートシティ)、データ規制(外国企業への制約)により、中国企業が圧倒的に有利になるように産業構造を作っています。
自動車市場は予想される大幅縮小した世界(―40%の予測)、実際にはそれ以上に効率化された世界になるかも知れません。
個人所有の減少は配車サービス企業との法人リース販売を拡大させ、街の自動車ディーラーは減少につながるかもしれませんし、ガソリンスタンドの数にも影響するでしょう。
携帯電話が普及する前の不便さを思い出せる人が少なくなったように今では当たり前と考えられる労力や物への再投資を誰もしようとはしません。
歴史的に見ても殆どのサービスや製品は、技術革新による普及さらに価格破壊を伴うコモディティ化の過程を辿ってきました。
工業製品は物を所有する価値ではなく、その本来の目的が達成された後、最も効率のよいサービスの形態として生き残ることが選択されてきました。
自動車は手に入れやすい商品になったとはいえ、まだ多くの人にとってコストの負担感は大きなものでありMaaSは魅力的でしょう。
電動化では今までの自動車部品産業への影響が懸念されましたが、それ以上のインパクトになるかもしれません。
危機は予測される所にありながら、多くの人の行動は遅れがちです。
「課題達成型開発」がMaaSへの的確な対応のお役に立てれば幸いです。
(2025.08.15)
■「ありたい姿(未来設計図)」を創り出す・・EVは何の騒ぎだったのか?
ここ数年、「次はEV(電気自動車)だ」というムードが世界を包んでいました。しかし2025年の現在、日米欧の主要市場では、かつての熱狂は徐々に陰りを見せています。
国際的な環境政策、テスラの台頭、大手自動車メーカーのEVシフト、そしてメディアが描いた“クリーンな未来”──。あの熱気はどこから生まれ、なぜ冷めていったのでしょうか。
一方で、中国のBYDはEVに加え、ハイブリッドでも着実に世界の自動車市場における覇権を狙っているように見えます。※1
この流れを追うことは、単なるEV技術論ではなく、「価値ある経営資源の投入とは?」という本質的な問いに向き合うことでもあります。
・テスラは「環境」で売れたのか?──社会的圧力とユーザー体験
EVブームの象徴として真っ先に挙げられるのがテスラです。
その成功は「環境意識の高まりと共鳴した」としばしば語られますが、実際にはイーロン・マスクのメッセージとはやや距離がありました。
テスラ車の人気の背景には、スマートフォンのようなユーザー体験、OTA(ソフトウェア更新)による機能進化、高性能な加速力と洗練されたデザイン性があります。
米国の消費者調査でも、「環境への配慮」は購入動機として一定の位置を占めるものの、実際には性能・ブランド・技術革新の方が購買理由として上回ることが以前から報告されています(Pew Research Center, 2021)。
つまり、テスラの成功は技術的革新とブランド戦略の賜物であり、「環境」が主因とは言い難いのです。
しかしX(旧Twitter)が買収される頃までは、EV普及を進めたい勢力とマスメディアによる一方的な情報が「正義」のように流布されていました。
・中国の国家主導がつくったEVブームの起点
世界的なEV潮流を語る上で、中国政府の主導的な役割は見逃せません。
世界最大の自動車市場である中国は、自国内で内燃機関(ICE)を軸とする他国メーカーが優位に立つ構造を覆すため、自国ファーストの戦略でEV産業を強力に育成しました。
2020年に発表された「新エネルギー車(NEV)産業発展計画(2021–2035年)」では、2035年までに新車販売の50%以上をNEVとするという野心的な目標が掲げられ、多額の補助金や規制優遇措置により市場が急成長しました(中国国務院、2020年)。
その結果、BYDやNIOといった中国メーカーが急速に台頭。すでに2023年にはBYDがEV販売台数で一時的にテスラを上回る場面もありました(Bloomberg, 2024年1月)。
EVによって確保した“時間的猶予”を自動車技術全般の底上げにも充て、ハイブリッド車やエンジン車の開発力を磨いています。
過去のテレビ・家電・スマホ産業でも見られた、「デフレ輸出型」のビジネスモデルを彷彿とさせる戦略です。
中国はEV市場の拡大を、国家資本主義(国が株主として利益を追求)のもと自国の「ありたい姿」と見事に一致させました。
・EUはなぜ中国の潮流に乗ったのか
EUにおいても、EVへの経営資源の投下には入念な戦略があったと考えられます。しかし結果的に、中国の国家戦略に引き込まれる形となりました。
その背景には複合的な要因があると考えられます。
(1) 環境政策:EUは「欧州グリーンディール」の一環として、2035年までにガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止する方針を採択(欧州委員会、2021年)。EVはその実現手段の柱とされました。
(2) 政治的シンボル性:EVは脱炭素社会の象徴として、政策的にも“わかりやすい”手段だった。
(3) 地政学的影響:欧州の自動車産業、とりわけドイツは中国市場に強く依存しており(VWグループの新車販売の40%以上が中国)、中国の政策は無視できません(Statista, 2023年)。
結果として、EUも中国が築いた部品供給網や資源調達の支配構造に組み込まれつつあるのが実情です(Financial Times, 2024年9月)。
つまりEUのEV推進は、メーカーの主体性ではなく、環境政策と産業政策の構造に流された形の「出来たなり」で進んでいた面が否めません。
・EVブームは自然発生ではなかった
こうした全体の構図を踏まえると、EVブームは自然発生的な市場現象とは言えません。
語り手:メディア、企業、政治家が「クリーンな未来」を語った
設計者:国家・規制当局が補助金や法制度で方向を設計した
受益者:テック企業、中国のサプライヤー、資源国、投資家など
善意の市場形成というよりも、構造的にデザインされた「政策設計のブーム」だったと捉える方が実態に即しています。
・ブームに乗る前に考えるべき視点
AI、メタバース、仮想通貨、再生可能エネルギー──あらゆる“次世代の主役”が日々登場しています。
重要なのは、それが本当に自分たちの「ありたい未来(姿)」のためなのか、それとも誰かの構造に取り込まれている「出来たなり」なのか、を見極めることです。
「それは本当に、自分たちの望む方向なのか?」と言う視点を持つことは、懐疑的になることではなく、主体的な未来の選択であり「課題達成型開発」が目指すものです。
・日本の自動車メーカーの対応──ブームに流されなかった理由
EV対応の遅れやICE(内燃機関)依存への批判にさらされながらも、多くの日本の自動車メーカーは、冷静に状況を見極めていました。
資本関係を見れば、EVシフトに積極的な企業とそうでない企業とに分かれていたことも読み取れますが、何が違ったのでしょうか。※2
トヨタはICEの価値をあえて強調し続けました。一方でホンダも、EVに舵を切ったものの、ハイブリッド車の開発を止めることはありませんでした。
両者ともに自らの「ありたい姿」に基づいた判断を守ったと言えます。
現在、中国はインドやタイなど他の新興国市場でも同様の戦略を展開中です。
もはやEVは単なる技術ではなく、覇権のためのツールとなっています。
手法の呼ばれ方は様々ですが、日本の自動車メーカーで長く用いられてきた 「ありたい姿(未来設計図)」を創り出す「課題達成型開発」は、これからも重要な技術でしょう。
※2 資本・業務提携 | JAMA - 一般社団法人日本自動車工業会
引用・参考文献(抜粋)
Pew Research Center (2021), "Electric Vehicles and the Environment: Public Opinion in the U.S."
中国国務院(2020)「新能源汽車產業發展規劃(2021–2035年)」
Bloomberg (2024), "BYD Tops Tesla in Global EV Sales in Q4 2023"
European Commission (2021), "Fit for 55: Proposal for CO₂ Emission Performance Standards for Cars and Vans"
Statista (2023), "Volkswagen Group Car Sales in China: Share of Global Deliveries"
Financial Times (2024), "Europe’s EV Ambitions Entangled in China’s Supply Chain"
(2025.08.01)
■安価になった知能・・AIにはできない「人の思考」の時代へ
産業革命(18世紀)から機械化、自動化により人間の作業が代替され効率化が推し進められてきました。
近年ではコンピューターやロボットに人間の動作をティーチングすることで作業を代替する時代が数十年続き、いわゆる人の技術や経験といったものをいかに再現できるかといったことが中心でした。
また工場においても人の方が安いという理由で設備導入の判断がなされることも普通でした。
いわゆる機械化できない領域というものが存在していたのです。
ヒューマノイドロボットの発展もセンサーとコンピューターの性能向上により1990年代にブームを迎えましたが、その後は工場にも一般家庭にも広がりは見られませんでした。
またネット検索エンジンは、知識の入手が便利になるに過ぎませんでした。
この間、失われることのない人間の雇用は、存在し続けるだろうという前提のもとに社会、経済は運営されてきました。
しかし、全ての人間が有しているがために安価に扱われてきた人間の基本的な知能が、さらに安価なAIの出現でコスト競争にさらされるようになりました。
(AIを支えるハードウェアロジックでも驚異的なコストダウンが進行中のようです※1)
特に扱う対象が工場で画一的に生産される製品とは異なり、千差万別な農業や天然資源、サービス産業など、人間の高度で繊細な知能の存在が欠かせなかった分野は急速な再構築が考えられます。
何十年も経験してきた資源リサイクル産業も人の知能による壁の大きな産業でしたが、自動車メーカーなどが新たな取り組みで本格参入を表明しているようです。※2
過去には自動車の組立ラインを逆の流れで分解しリサイクルしてみようという試みが行われ、特に中国では巨大投資が行われましたが失敗した例がいくつもありました。
しかし今回は知能化により実現のイメージが見えるように思われます。
安価になった知能の活用は今後、政府経済、産業構造改革レベルでの取り組みが注目されますが、個々の企業や人には何が求められるのでしょう。
まずは生成AIに尋ねてみるのがよいかもしれません。
「AIによって知能が安価になったら人はどう働けばよいのか」
希望的な回答を見つけることは出来たでしょうか。
多分、AIの答えは人とAIが被らない創造性や共感性を必要とする職種(現在の人気芸能人や芸術家など極めて限られた仕事)が勧められるでしょう。
人にしか出来ないと言われてきたホスピタリティも生成AIに相談した終わりに「ありがとう」とお礼をする人が多くいるほどに人の気持ちさえ扱うことが上手になっています。
このような状況ですが、AIには出来ない思考の技術「課題達成型開発」があります。
無から有を生み出す取り組みは、人にしかできない領域です。
(AIは多くの場面で、優れた回答を与えてくれますが、そもそもの意味を考える仕組みを有していません ※3)
具体的にはAIには矛盾する「不可能なことを実現してください」という要求です。
長年にわたってこの「課題達成型開発」 が用いられてきた場面で、状況や理論にもとづいて出来ないとされていた事柄が人の思考能力で解決に導かれることがありました。
「出来ないのは分かっているので出来るようにして欲しい。出来ることなら貴方に頼む必要性がない」といった無茶な要求が理解できるのは人間だけです。
この「課題達成型開発」を多くの皆様に活用いただくことで、AIと知能の低コスト競争に巻き込まれることなく高付加価値な思考の仕事に取り組んでいただく一助になれば幸いです。
※1 【技術革命】【メモリ使用量75万分の1へ】AMD GPUメモリ使用量を38GBから52KBへ削減する新たな手法を示す【ゲーム・VR・都市計画・教育・環境シミュレーション・映画・アニメーションなどに影響
※2 BlueRebirth協議会 設立趣意書 | BlueRebirth ブルーリバース
自動車産業における再生材利用の拡大を目指し、 BlueRebirth協議会を設立 | ニュースルーム | ニュース | DENSO - 株式会社デンソー / Crafting the Core /
※3 AIってなに? ②AIは「思考」しているの?【人工知能】ブラックボックスなニューラルネットワークを紐解く【解説】【ディープラーニング 深層学習】
分かり易くAIの限界を理解するのに役立つ動画です ①③もご視聴をお勧めします
(2025.07.15)
■プレゼンテーション資料 ・・作者の意図と思考の深化
「パワポ職人」という言葉をご存知でしょうか。※1
これは、本来は無意味と感じつつも、見栄えの良い資料作成に多大な労力を費やすことを強いられる人々を指します。
長らくビジネスの現場では、プレゼンテーション資料の見栄えや演出に多くの時間と労力が割かれてきました。
この状況に変化の兆しが見え始めたのは、生成AIの登場が大きく影響していると考えられます。
・生成AIがもたらす変化
生成AIの活用に習熟すれば、資料作成はこれまでよりも格段に容易になります。
これにより、作り直しや視覚的表現に関する労力、さらには内容の充実化にかかる苦労からも解放されるでしょう。
一方で、プレゼンテーションを受ける側もAIを活用するようになります。
動画を早送りで視聴するように、ビジネスにおいてはより迅速かつ簡潔な内容把握が求められます。
AIを用いてプレゼンテーション資料を確認することで、その内容の価値、課題、新規性などはほぼ瞬時に把握されます。
当然ながら、AIに任せきりで作成された資料であるかどうかも容易に見抜かれてしまうでしょう。※2
これは、実務に時間を投じ、試行錯誤から多くを学びたいと願う人々にとっては喜ばしいことですが、求められるものの厳しさや高度化は確実に増し、結果として個々の能力格差が明確になることも意味します。
・プレゼンテーション資料の新たな価値
今後のプレゼンテーション資料の価値はどこに見出されるのでしょうか。
資料作成の過程には、人の思考を助けるという側面があったことも事実です。
過去には、既存の資料の焼き直しを禁じられながらも、何十回もの資料作成を強いられる中で、プロジェクトの価値をより深く考え、ブレークスルーのためのインスピレーションにたどり着くことが少なくありませんでした。
本来、資料作成は思考実験の言語化であり、視覚化としての役割を担っていたのです。
資料作成の工数を削減し、実験や解析に時間を割けば必ず成果のある仕事ができるわけではありません。
目的そのものが価値を有し、妥当な目標が設定されていなければ、いかなる取り組みも無意味なものになってしまいます。
・「分からない」という評価の真意
これまで多くのプレゼンテーションの機会で見てきたのは、優れた評価者は「分からないのでやり直してください」と率直な意見を述べていたことです。
プレゼンテーションを受けて「分からない」と述べることは、評価者の能力、案件に関する知識、そして判断力をステークホルダーに示すことになります。
しかし、「分からないこと」をその場で理解しようとして問答を繰り返すことは、中途半端な取り組みが承認され、結果として失敗の先延ばしを招く場合が多いのです。
さらに重要なのは、既に多額の開発費用や時間を投じていたとしても、「中止」の指示を躊躇なく下せることです。
プレゼンテーションで分かりにくい資料や説明は、矛盾や疑問を持つことさえ難しくさせます。
(資料の分かり易さが求められる理由です)
プレゼンテーションソフトの功罪は多々ありますが、安易な方向での用途に価値を見出していた時代は終焉を迎えたと言えるでしょう。
・思考の可視化としての資料作成
今後は、毎回新たな発想(作者の意図)が求められる資料作成がさらに重要になります。
その作成過程は単なる作業ではなく、思考過程そのものであり、価値ある実務に直結します。
「課題達成型開発」で厳しく制されるのは、インスピレーションを欠いた「できたなり」です。
「課題達成型開発」手法を用いた、意思の言語化が貴社のプロジェクトをより価値あるものとするお役にたてれば幸いです。
※1 技術系総合職が紙芝居ばっかり作ってたらそりゃ競争力も落ちるに関するコミを20件紹介します
※2 AI生成の履歴書が急増、企業も対抗するためAI選考・面接ツールを導入しAI対AIの構図に - GIGAZINE
本コラムでは文章の整理や推敲に加えオリジナリティをご提供できているかの確認にAIを活用しています
(2025.07.01)
■考える目的・・「学ぶこと」が目的ではない時代に
在籍していた企業から、特許報奨金の通知が届きました。
金額はささやかなものでしたが、アイデアが認められたことは、純粋に嬉しいものです。
今回の特許は、「テルミット反応」という古典的な技術を応用したものでした。
今でも、40年前に大学ノートに描いた、酸化鉄とアルミニウム粉末の混合物に、点火用のマグネシウムリボンを差し込んだ青インクのスケッチが、はっきりと思い出されます。
思い返せば、学生時代には他にも記憶に残る経験があります。
1981年当時、電気化学研究室で、黒鉛のような層状構造を持つ化合物に、金属イオンを挿入するという卒業研究に取り組んでいました。
しかし当時は、正直「地味なテーマだな」と感じていたものです。
ところが後年、この材料が極めて革新的な用途で研究されていたことを知り、驚かされました(※1)。
当時の情報収集は、大学の書庫で製本された専門誌を直接めくるか、国会図書館に赴いて論文をコピーするなど、膨大な労力と時間を要しました。
情報誌に掲載される最新情報にも限りがあり、体系的な知のアクセスは困難でした。
大学では「研究の目的は自らが見出すもの」という教育方針が語られていましたが、当時の自分にとって、その意味を理解するのは容易ではありませんでした。
世の中では一般に、「考えるために学ぶ」ことについてはよく語られますが、「何のために考えるのか」という「考える目的」について語られることは、意外と少ないのではないでしょうか。
多くの人は、何かに取り組むとき、その「目的」がすでに存在しているものと無意識に思い込んでいます。
しかし、目的の設定そのものが創造的行為であり、「考える」という行為は、インスピレーションを得るための営みでもあるのです。
「学ぶ」という行為は、あくまで考えるための資源を得る「手段」です。
しかし、試験制度と結びついた結果、学ぶこと自体が目的化されてしまう傾向が長らく続いてきました。
義務教育は、今後も社会運営における基盤として必要でしょう(※2)。
一方で、高等教育が持つ「学歴付与装置」としての役割は、AIの台頭により、その存在意義が再考されるべき段階に来ているのかもしれません。
私が在籍した企業で知ったのは、インスピレーションを得るための「考える技術」が存在するという事実です(ただし訓練が必要です)。
今、AIの力により、知識の獲得は低コストかつ迅速に行えるようになり、知識そのものがコモディティ化しつつあります。
しかし、どのような知識も、活用されて初めて価値を持ちます。
だからこそ、「課題達成型開発」という思考と実践のスタイルを、より多くの方に体験していただきたいと考えています。
それは、目的を自ら設定し、インスピレーションを起点に思考を深め、知識を手段として活用する──まさにこれからの時代に求められる思考技術のかたちだと思うのです。
※2 【教育のエグい真実①】我々は何のために勉強するのか、本当の理由を知っていますか?【岡田斗司夫切り抜き】東京学芸大学講演・義務教育・産業革命
(2025.06.15)
■ ホームページ・・企業の内側にもたらす効用について
企業のホームページに関して、お客様とお話しする機会があります。
ECサイトやアフィリエイトに特化せず、企業のPRを目的としたホームページでは、一昔前の固定電話なしでは気が引ける、と同様な位置づけのものが見かけられます。
多くはホームページ製作会社に発注企業の要望がヒアリングされ所謂ブランディングのツールやメソッドでいかに価値のあるものになるかといった営業トークとともに、費用が提示されます。
競争の激しい業界で製作会社は価格を抑えられ、コストを圧縮して利益を確保しなければなりません。
効用を期待しない顧客とコストを圧縮したい製作会社の利害は見事に一致します。
さらに生成AIが広まりホームページ制作会社は、パソコンの普及で姿を消した町の印刷工場と同様の状況が懸念されています。
では、この状況を言語化してみましょう。
課題達成型開発による結果は・・
前述の状況(ブランドの向上に関心の低い顧客、価格競争で疲弊する製作会社)でAIにより奪われる仕事は、委託者と受託者のどちらもがやりたくない仕事「負の需要への経営資源の投入」です。
この点に気づけば、ホームページを負の需要ではなく価値ある仕事のために活用できるかもしれません。
産業革命以降、力仕事は機械に、また計算や記憶はコンピューターにと人の能力は置き換えられ拡大されてきましたが、生成AIの誕生で残されたのは「人のインスピレーション」になりました。
(ChatGPTに「AIにはできないインスピレーションとは何か」を質問してみると、丁寧に解説してもらえます。)
ありたい姿を掘り下げ言語化されたメッセージは、外部への訴求のみならず内部に向け価値ある目的や目標を提供することにも役立ちます。
事業計画書としてのホームページを提案することで、制作会社にも新たなビジネスチャンスが広がるかもしれません。
ホームページの企画に「課題達成型開発」でお役に立てれば幸いです。
(2025.06.01)
■数式なしで数理モデル・・インスピレーションを広げるAI活用
今回は大きく仕事の質を上げるAI活用のご提案です。
身近になった生成AIにより日本語のプロンプト入力だけで数理モデルが扱えるようになってきました。(数理モデルの知識や経験を有する方は、既に高度な活用をされているでしょう)
生成AIの誕生以前をご紹介することで、実際の業務改善のヒントになれば幸いです。
もう20年も前のことですが、日本の自動車リサイクル法施行に伴い、自動車の使用年数のシミュレーションが必要になりました。
新車購入時に支払うリサイクル料金は平均15年間預託され、その後廃車処理に充てられます。
しかし、車両寿命は一律でなく、数十年にわたって分布するうえ、預託金に利息が発生し処理費も変動するため、適正な料金設定は容易ではありませんでした。
当時の国内自動車保有台数は約7,850万台(平成17年末時点)。次回車検のタイミングで1台あたり1〜2万円が預託され、その費用管理には大きな責任が伴いました。
さらに、廃車台数は自然災害や景気の影響を受けるため、数理モデルによる汎用的な廃車発生ロジックの構築が必要になりました。
そんな折、廃車発生に関する数理モデル※1との出会いが大きな助けとなりました。
開発した予測モデルはシンプルなものでしたが、畳み込みや正規化といった手法が用いられており、AIの処理と同様の計算ステップをExcelで行っていました。
(微分方程式では、解析技術のサイト※2が非常に役立ちました)
現在では、このようなシミュレーションも生成AIを用いれば自然言語のプロンプトだけで数理モデル探索が可能であり、その妥当性検証も容易に行えます。
膨大な情報から必要なデータを自動で抽出・整理し、新たな発想を生むツールとして便利に活用できるため、開発者の負担は大幅に軽減されるでしょう。
今後は現在の生成AIの発展として、AGI(人工汎用知能)やASI(人口超知能)への期待※3が高まっているようです。
一方で、現在のAI技術の延長線上では実現が難しい※4という指摘もあり、特にAGIとASIの不連続な壁の克服には人のインスピレーションが必要なようです。
(生成AIとの対話では「インスピレーションAI<ChatGPTによる造語?>」が必要という興味深い結果になりましたが、これはまた別の機会にColumnで取り上げたいと思います)
AIが目指すのは、人間を超えることのようですが、現在は人間の直感や創造力を支援し、生産性向上につなげることが現実的な目標と言えるでしょう。
(課題達成型開発から見ても、ASIの開発目標の設定は「AIのありたい姿」として優れたものだと思われます)
生成AIによって数理モデルの活用が格段に容易になることで、多くの人に新たな発想をもたらす可能性が広がってきました。
AIによる数理モデル構築に「課題達成型開発」の「言語化技術」でお役に立ちたいと思います。
※1 販売年別廃車ハザードモデルに基づく乗用車の年次需要予測 統計数理(2005)第53巻第2号261–284 c2005統計数理研究所
※2 構造解析とExcelを用いた科学技術計算の(有)ゴッドフット企画
※3 AGI(汎用人工知能)とASI(人工超知能)とは? 従来のAIとの違いも解説|ビジネスブログ|ソフトバンク
※4 LLM、行き止まり: ChatGPT などが AGI に到達できない理由
(2025.05.15)
■マルチパスウェイ・・「何でもやる」ではありませんでした
昨年まで多くの自動車メーカーが、BEV(バッテリー式電気自動車)への全面移行を目指していたものの、その目標を見直す動きが見られます。
結果として、トヨタの「マルチパスウェイ(全方位戦略)」が評価されるようになりました。
前職の自動車メーカーでハイブリッド車の開発がスタートしチームに加わったのは、トヨタから初代プリウスが発表発売された年でした。
車体材料を担当していましたが、企画に向けハイブリッド車の特徴を把握しようとプリウスに関する情報収集、学習を広く行いました。
まず遊星歯車の複雑な使われ方に驚かされましたが、同時に「なぜハイブリッドだったのか」という疑問も抱きました。
BEV※1やハイブリッド車の歴史は古く、エンジンが未発達だった時代、低回転で最大トルクを発揮するモーターの特性が利用されていましたが、エンジンの発達とともにこれらの技術は一時的に忘れ去られていました。
遊星ギアを自動車に用いた歴史※2も1900年代初期からありましたが、これらを結びつけたアイデアに驚かされます。
さらに、EVや遊星歯車に全く新たな価値を見出し、難易度が極めて高いにもかかわらず、敢えてハイブリッド方式を選択した発想に驚かされました。
今や優れた取り組み手法として注目されるマルチパスウェイですが、トヨタ・ハイブリッド機構の解説動画※3でさまざまな走行モード(8:20~)を見ると、開始時点からマルチパスウェイであったことが理解できると思います。
「選択されたMulti(さまざまの)」は、「手当たり次第Any(なんでも)」ではありませんでした。
難しいやできないと言った理由から離れ「ありたい姿」から始めることの大切さを学ぶよい教材だと思います。
「課題達成型開発」は、「ありたい姿」を言語化し見つけ出すための手法です。
※1 電気自動車の歴史 [電気自動車・EV] All About
※3 なぜトヨタのハイブリッド車は燃費が良いのか?プリウスの心臓部 "遊星歯車機構"が支える低燃費技術を解説します!
(2025.05.01)
■生成AI・・人との協業が必須な領域とは
AIに関する懸念として「多くの人の仕事が失われる」※1というものがあります。
高度なヒューマノイドではなくても多軸ロボットにAIによる制御が組み込まれることで、今ある製造から接客まで多くの仕事が置き換えられたり、「士業」と呼ばれる業態を必要としない業務の置き換えは容易に想像できます。
(多軸ロボットの低コスト化※2には驚くものがあります)
漠然と人がいらなくなるのでは、とも言われていますが、現在の生成AIにはインスピレーションを生み出すことが出来ません。
(ChatGPTに「AIにはできないインスピレーションとは何か」を質問してみると、丁寧に解説してもらえます。)
そもそもAIは「りんごは赤い」と「私は幸せです」をどちらもデジタルデータのパターンとして認識することは出来ますが、「意味を持った言葉」として違いが理解できているわけではありません。
生成AIの割り切りというコンセプトも、人のインスピレーションによるものでしょう。
(生成AIとはモデルもその複雑さも異なりますが、手書き数字を読み取る仕組み※3を知ればAIに出来る範囲がイメージできるかもしれません)
企業でDXと名の付くプロジェクトの立ち上げも見られますが、うまく機能していないものが多いのも事実でしょう。
原因として、道具の範疇にあるAIの限界が理解されないまま取り組みが行われているものが多いためかもしれません。
生成AIの回答や提案は、卒なくもっともなものですが、驚くようなブレークスルーを与えてくれた経験はあるでしょうか。
正解のある数学の難問に答えたり、囲碁や将棋で知られていなかった棋譜を力尽くで見つけ出したりすることは得意ですが、今までの概念を覆す提案には至りません。
数学の未解決問題をAIに解けるかと質問をしてみると、その膨大な計算力や探索力またパターン認識で助けにはなりますが、やはり人間の直感や意味の理解が必要という答えが返ってきます。
ニューラリンクのように脳とコンピューターシステムを連結※4 することで、人間の脳をデバイスとして活用し、いわゆる「アハ体験」とか「ひらめき」をコンピューターシステムは得ることが出来るようになるのでしょうか。
一方で人間の脳細胞を使った「世界初の商用バイオコンピューター」※5が販売されるなど開発速度は増すばかりです。
アインシュタインが人生最高のアイデアと呼んだとされる等価性原理※6のようなひらめきには、デバイスとしての脳の優秀さが求められるかもしれませんが夢のある取り組みでしょう。
AIに期待される「人のアイデアを引き出す」にも価値あるプロンプトが必要であり、プロンプトを思いつくのも「人のひらめき」です。
「課題達成型開発」がお役に立てるのではと思います。
※1 【8億人の解雇!】アメリカで進むAI解雇と新しく雇用の増える職種
※2 島津製作所が14万円の中国製の激安ロボット導入、生産現場改善 | 日経Robotics(日経ロボティクス)
※3 高校数学からはじめる深層学習入門(畳み込みニューラルネットワークの理解)
LLMまでの体系的な知識を得たい方にはこちらが参考になるかもしれません
ニューラルネットワークの仕組み | Chapter 1, 深層学習(ディープラーニング)
※4 UCSF開発のBCI技術:四肢麻痺患者が思考だけでロボットアームを自在に操作 - イノベトピア
※5 人間の脳細胞を使った「世界初の商用バイオコンピューター」が登場 - GIGAZINE
※6 【相対性理論】等価原理-アインシュタイン生涯最高のアイデア - YouTube
(2025.04.15)
■自動車メーカーへの制裁金・・EVだけではない環境への取り組み
自動車に関する興味深いニュース※1がありましたので、ご紹介します。
EV(電気自動車)に関する規制は、これまで主に走行時の環境負荷に着目して進められてきました。
しかし、近年では「走るとき」だけでなく、利便性や経済性などを含めた総合的な視点から見直しが進んでいます。
自動車による環境への影響は、走行や製造だけでなく、廃車時にも少なくありません。
かつて日本では、極端な円高の影響を受けて鉄スクラップ価格が大幅に下落し、それまで有価物として売却できていた廃車に処理費がかかるようになった時期がありました(廃車に含まれる鉄スクラップを売ることで利益が出ていました)。
この結果、放置車両の増加や、廃車処理に伴う廃棄物の不法投棄といった深刻な社会問題が発生しました。
これを受け、日本では2005年に「自動車リサイクル法」が施行され、開発・生産から廃棄・最終処理に至るまでの高度な処理・管理システムが構築されました。
この仕組みは、「すべての素材をリサイクルする」ことを目指すのではなく、環境への負荷を総合的に見極め、最終的にはエネルギーとして回収することで実質的な環境負荷の低減を図るものです。
一方、欧州では1990年代からEU指令に基づく自動車リサイクルの取り組みが進められてきました。
こちらは、製造時に使用する素材の段階から「再利用しやすいもの」に限定し、廃車時にも素材を再使用する「マテリアルリサイクル」を重視しています。
どちらの制度にも一長一短があり、優劣を単純に比較することはできません。
日本は欧州の先進的な取り組みを参考にしながら、自国に適した制度を構築してきました。
今回の欧州委員会による制裁金※2が、欧州で販売される自動車のリサイクルだけでなく、日本における廃車処理やリサイクル制度にどのような影響を与えるか──今後の動向を注視していく必要がありそうです。
「課題達成型開発」は総合的な視点から取り組みを考える手法です。
リサイクルにご興味をお持ちの方にもお役にたてれば幸いです。
※1EU、日本勢含む自動車15社に740億円の制裁金 カルテルを指摘、欧州自工会主導 - 産経ニュース
【EU】欧州委、自動車15社に制裁金 廃車巡り談合、英当局も10社に(NNA) - Yahoo!ニュース
(2025.04.12)
■コンサルティング・・価値あるご利用のために
コンサル業について興味深い記事を拝見しました。
「倒産ざまあ」と罵倒されるコンサル業| ダイヤモンド・オンライン
自動車メーカー在職時のクライアント視点ではなく、現在のコンサルタントの立場から考察してみたいと思います。
・それでも委託される理由
コンサルティングの世界に足を踏み入れたきっかけは、自動車メーカーでの経験にあります。
かつて在籍していた企業でもシンクタンクなどに調査の委託をしていましたが、一部に「高額で形ばかりなのでは」という不満があったことも事実です。
また、業務においてシンクタンクの提案が採用される例も多くはありませんでした。
これは、精度の高い発注には的確な要求仕様書が不可欠である一方、その作成には多大な労力が伴うため、委託による「時間を金で買う」意味が薄れてしまうことに起因します。
内容が不明瞭な案件は、受託するコンサルとしてもリスクが大きく、慎重な対応をせざるを得ないでしょう。
それでもコンサルに委託される理由は、調査が行われたという事実に価値があったからです。
有名コンサルやシンクタンクのブランドネームは大きな価値をもっています。
組織が大きくなるほどにプロジェクト管理が複雑化することで形式的な対応が増加し、予算の消化率でさえ業務遂行の評価基準になることも少なくありませんでした。
多忙な担当者には魅力だったのです。
要求仕様書の問題を解消することで、お役にたてるのではと思ったのが自身もコンサルを始めるきっかけになりました。
・成果を意識した取り組み
一方、自動車メーカーは日常的にサプライヤーに委託開発をお願いしています。
もちろん、この場合にも難しさはあるものの取り組み内容は「共同」で構築され、メーカーとサプライヤー合意の下、双方に満足がもたらされます。
これは、単なる「委託」と「共同」の大きな違いを示しています。
実際にシンクタンクとの共同作業により仕様書の策定から運営の柔軟性に至るまで配慮した場合、サプライヤーとの開発に匹敵する成果を挙げた事例もあります。
・金銭だけで解決できないこと
自身がコンサルティング業に従事する中で痛感したのは、「コンサルによる斟酌の期待」です。
クライアントに「そもそも何を実現したいのか」要求内容の確認を行うと、嫌がられてしまうことがあります。
プロジェクト運営において最も労力を要し、金銭で解決したいという要望が強くなる部分ですが、価値ある買い物には、自らの要望を的確に言語化する作業は避けられません。
「課題達成型開発」は、単なる手段としての「考える技術」に留まらず、個人や組織がその技術を使いこなす力を養うプロセスも含んでいます。
新たなプロジェクトの企画や大手コンサルへの委託に先立ち、「課題達成型開発」によるお手伝いができれば幸いです。
【ご参考】 お客様、コンサル業ともに参考になる動画がありましたのでご紹介します
経営コンサルタントの倒産が過去最多…経営のプロであるはずがなぜ倒産してしまうのか?
(2025.04.01)
■失敗を振り返る・・後知恵の繰り返される理由
自動車メーカーで携わったCFRP(炭素繊維強化樹脂)研究開発とその失敗の原因について振り返ってみたいと思います。
時間を経て今も新たに気づくことの多い事案であり、皆様のご参考になれば幸いです。
CFRPは、航空機など特に軽量化が求められる工業製品に用いられ、先端材料としての可能性を期待されてきました。
自動車でも、フォルクスワーゲン社のXL-1開発※1また市販されたBMW社i3※2などで実績はあるものの、世の中で採用されるケースは依然として限定的です。
コストによる障壁もありますが、実は何十年も変わらない「そもそもの課題」があります。
・強くて軽い理由
繊維強化材料は複合材料と呼ばれる特性の異なる材料の良いとこ取りを狙ったものです。
(鉄筋コンクリートも複合材であり、引っ張りに強い棒状の鉄鋼をマトリクス(母材)と呼ばれる圧縮に強いコンクリートで固定したものです。熱膨張率が等しいという奇跡的な組み合わせです)
引き伸ばされ極めて大きな表面積を与えられた丈夫な炭素繊維は、2冊の本をページごと交互に合わせると引き離すことが困難なようにマトリクスと強く一体化しています。
しかし、繊維が本来の強度を発揮できるのは、あくまでも繊維方向に張力がかかった場合のみです。
わずかにでも他方向の力が加わると、その性能は急激に低下します。
これは、前述の例えで、本のページが紙面に直交する方向には、強度が発揮されないのと同じ理由です。
もちろん、繊維を立体的またはランダムに配置してあらゆる方向に強化を試みる方法もありますが、結果として強度は分散され、総合的な性能は低下してしまいます。
したがって、繊維は直線に配列され、マトリクスで確実に固定され、さらに繊維方向にのみ力がかかる条件下でこそ、本来の性能が発揮されるという厳しい制約があるのです。
(繊維の連続性を犠牲にして全方向に配置する製法は、一方向に比べると性能は劣るものの、用途に応じた実用性を確保する手法として採用されています。さらに、引き揃えたCFRP層を異なる積層角度で重ねることにより高度な機能を製品に与えることも可能です)
CFRPの評価は「高強度・軽量な材料」として広く認識されていますが、繊維強化複合材の基本的な特性から、やはり板状や円筒状などの単純形状に適しており、複数の部品で構成され、繊維の連続性が途切れてしまうと本来の強度や軽さは得られません。
実際、航空機※3やFCV(燃料電池自動車)の高圧水素タンク※4など、形状が単純で繊維の連続性が保たれる部品にCFRPが採用されるのは、この理由によるものです。
また、コストの制約が少ない軍事用途の航空機※5で、整然と配列された炭素繊維が使用される映像は、さらにイメージの理解に役立つでしょう。
・研究テーマの選択
1980年代、鉄やアルミニウムをより軽量な素材に置き換えられないかという視点で、自動車部品に対する研究を行いました。
しかし、「自動車の軽量化とは何か」という根本的な視点が欠けていたことに、その後の新型車開発に携わる中で気付かされることになります。
現在主流のモノコック構造※6は、ドアやボンネットなど各部品が組み合わされるため、連続した繊維を用いた一体化構造を実現するのは困難であり、形状も複雑です。
既存の生産ラインで製造されるモノコック形状を前提とする「できたなり」の開発方針が、この問題を悪化させていたのですが、部品単位で降りてくる開発指示に疑問を持つことなく研究を行っていました。
(大規模プロジェクトにおいて多くのテーマが同時並行して進められる中、基本構造の選択を見直しては?という提案は容易なものでなかったこともあったと思います)
さらに、軽量素材の評価には「同じ体積あたりの強度・剛性」と「同じ重量あたりの強度・剛性」という二つの視点があり、その違いを設計関係者に理解してもらうことも大きな課題でした。
(世の中で誤解の多いこと:同じ重量あたりの性能が優れていても、部品に必要な強度を得るためには、部品のサイズが大きくなり期待する軽量化が得られないことが多いのです。)
また大きな加速度がかかる部品(例:ピストンなど)では、僅かな軽量化でも性能や燃費に大きな影響を及ぼします。
一方、車体の軽量化はレースカーなど特殊なカテゴリーで、運動性能に効果がありますが、一般車両に求められる領域ではありません。
ハイブリッド車のように重量増加しても燃費改善や加速性能で上回る場合があります。
このように高校物理で学ぶ基本的な知識が、企業の研究開発の現場でも見落とされることがあるのです。
(当時コンピューターシミュレーションは発展初期であり、限られた開発環境でしたが有限要素法※7を用いた解析など高度な研究が進められていた中です )
研究開発においても「できたなり」(なんとなく何かが見つかるかもしれない状態)ではなく、本来の「ありたい姿」が重要であるという至極当然のことを、後に「課題達成型開発」を通じて学ぶことになりました。
昨今の全てをEV化するとしていた自動車メーカーの方針見直しにも、今回ご紹介した失敗例との重なりを感じます。
皆様が取り組まれるプロジェクトの企画にも「課題達成型開発」の「考える技術」がお役に立てれば幸いです。
※1 【インプレッション】フォルクスワーゲン「XL1」 / - Car Watch
※3 「胴体、金属じゃありません!」ボーイングの旅客機、どう作る? “レアかもしれないシーン”公開…作り方が意外! - (2) | 乗りものニュース
※4 FCEVの普及を支える技術。高圧水素タンクで脱炭素に挑む。 | 豊田合成株式会社
低圧(約2~9気圧)で液体となるLPG(液化石油ガス)とは対照的に、FCV(燃料電池自動車)の高圧水素タンク(700気圧)やCNG車(圧縮天然ガス自動車)のタンク(350気圧)は、極めて高い圧力下で気体をコンパクトに保持し車載する必要があります。
高い充填圧力は、堅牢なCFRPタンクであってもタンクが膨張するため、固定は伸縮性のあるバンドを必要とします。
※5 Automated Fiber Placement introduction Lockheed Martin
※6 モノコック構造の各部の名称と役割について簡単解説! - メカニズモ
(2025.03.15)
■パリ協定脱退・・気候変動ファーストではない世界
トランプ大統領がパリ協定からの脱退を宣言し、アルゼンチンも同様の意思表明を行いました。さらに、USAIDの見直しなど社会構造の抜本的な変革にも驚かされます。
こうした動きは、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から「環境(特に気候変動)への取り組みに積極的でない企業への投資は控えるべき」というビジネスモデルを展開してきた金融業界にも、顕著な動きの現れる可能性があります。
環境や人権など人類の幸福を目指すSDGsは、誰もが反対し得ない目標として掲げられ、ESG投資の根拠ともなっていました。
当然、多くの企業は利益機会を追求するため、こうした方向性に合わせたビジネスを展開してきました。
しかし、金融経済に基づいて単純化された施策は、社会格差の拡大や地域経済の崩壊、さらには環境改善の実績が伴わないまま多額の投資が先行するという負の側面を露呈し、その正当性に疑問が呈されるようになっています。
気候変動抑制のための脱炭素施策の難しさは、複数の要因に基づくことにあります。
エネルギー消費の抑制は、温暖化防止だけでなく、限りある資源の保全や価格高騰の抑制、安全保障の観点からも極めて重要な取り組みです。
(シェール革命※1は現在の世界を変えた最大の要因と考えられますが、省エネによる相対的なエネルギー需給の改善も見逃せません)
さらに、温暖化が「作り出された危機」という意見も広がる中で、単に脱炭素であれば正しいという安易な議論は通用せず、いわゆる環境バブルの終焉が近づいているとも言えます。※2
しかし、気候変動が最優先でなくとも、引き続き取り組む価値のある事柄は多く存在しています。
また、政策が変更されたとしても、現時点で温暖化問題が否定されるものではなく、その原因が人為的な二酸化炭素濃度の上昇にあるという見解も排除されてはいません。
いつの時代も一部のステークホルダーの思惑やそこから生じる圧力により、多くの取り組みが望ましくない方向へ進むこともありますが、いかなる避けがたい外部要因も、人類の「ありたい姿」には課題の一側面に過ぎません。
急速に進むアメリカの国家体制の変革は、世界中に即座に影響を及ぼし、企業が推進するプロジェクトもその根本的な目的を再検討する必要に迫られるでしょう。
「課題達成型開発」は、企業のプロジェクトにおいて、その妥当性を厳格に再評価し、新たな潮流に対する最適解を見出すために有効な手法と考えます。
※2 COP29の振り返りと トランプ時代の気候変動対策 - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産
(2025.03.01)
■短期開発・・チキンレース「負けるが勝ち」もあります
近年よく耳にする「短期開発」ですが、その意義は十分に理解されているでしょうか。
製品やサービスを次々に投入することで目新しさを保ち、ユーザーに飽きられないようにするB to Cのニーズや、それを支えるB to Bの対応といった外部要因は、多くの人が容易に想像するところです。
今回は視点を変え、内部から見た「短期開発」の側面について考えてみます。
・開発における「日程」の重要性
プロジェクトが立ち上がると、最初に決められるのは多くの場合「日程」です。
経営資源の投入には回収と収益確保という経営上の制約が伴うため、日程の管理は極めて重要です。
この点を理解しないまま進められるプロジェクトが失敗するケースは少なくありません。
限られた時間と予算をどう活用するかが、事業の成否を左右します。
特に「企画」と「開発」の2つのステージで構成されるプロジェクトでは、「開発」にかかる時間やコストが大きな比重を占めます。
たとえば、工業製品では図面作成、金型製造、資材調達、生産設備の準備、販売体制の整備など、多くの工程が時間を要します。
このため、企画の期限はプロジェクト完了日から逆算され、各ステークホルダーが横並びで進行する中、日程の遵守は重大な責務となります。
・「日程絶対視」がもたらす弊害
日程を優先しすぎるあまり、企画の精度が犠牲になる場合もありますが、結果として経営資源を無駄に消耗し、企業の競争力を低下させる可能性が生じます。
企画段階で確信が持てるまで期限が延ばされると、その分開発期間が短縮されますが、同時に開発コストは指数関数的に増加します。
このような状況は、いわば「時間を金で買う」チキンレースのような様相を呈し、企業にとって大きなリスクとなります。
・リスク管理と「負けるが勝ち」の判断
このようなリスクにどう対処すべきでしょうか。答えは明快で、開発投資が予測される利益に見合わなければ、開発を中止する決断を下すのです。
損切りは重要な経営判断であり、投入された資金や労力を惜しむあまり判断が遅れることは避けなければなりません。
この手法が導入された当初は、損切りによる時間や費用のロス、関係者の労力の浪費などが注目され、驚きをもって見られました。
しかし、現在ではその必要性が認識されつつあります。なお、関係者への精神的な配慮も重要であり、適切なケアが欠かせません。
・新たな取り組みと短期開発の進化
一方で、短期開発に伴うコスト増加を抑えるための「開発の効率化」や、AIを活用した「企画手法の開発」が進められています。
これらの取り組みによって、「企画」と「開発」は相互に推進力を高め合い、短期開発の可能性をさらに広げています。
短期開発は、「課題達成型開発」が真価を発揮する場であり、この手法が根付いている自動車メーカーなどでは、競争力を支える重要な要素となっているのです。
短期開発の利点とリスクを俯瞰し、いかにバランスを取るかが、事業運営の鍵になります。
(2025.02.15)
■「気づき」の正体・・神はサイコロを振っている?
生成AIはDeepSeekの話題でもちきりです。
また、昨年末には自分の目的のために嘘をつくという、まるでAIが意識をもったかのように見える研究結果に驚かされました。※1
今回は、すこし専門的になりますが「意識の扱い方」の技術である「課題達成型開発」の取り組みについてお話したいと思います。
「考える」や「気づき」そのものの仕組みを理解することが目的ではなく、人の意識をどのように活用するかのイメージを握むための一助になれば幸いです。
AIの発展とともに、人間の意識はどこから来るのだろうという久しく問われてきた問題が、改めて注目を集めるようになっています。
また遺伝子工学の進展を見ると、人のみが有する遺伝子を令長類コモンマーモセットに発現させる実験で、脳の拡大が観察されるなど、多方面から人間の根幹にアプローチが行われています。※2
道具を使う動物やAIを搭載したヒューマノイドには、まだヒトとの距離を感じますが、実は近いところに意識の発現点は存在するのかもしれません。
「課題達成型開発」では、取り組むテーマの価値を創出するための「言語化作業」が行われます。
これは生成AIに入力するプロンプト(質問や指示)の良し悪しが、得られる結果を左右するのと同様な理由です。
作業では文言の細部に至るまでの精査、方向性の見直しや廃棄など、徹底的に意識の発掘を繰り返しますが、時としてパソコンの予測変換からヒントが得られることがあります。
この「言語の気付き」(意識下にあるものが探り出される過程)と「深層学習」※3の共通点が、確率の観点から解明されることで、機械は考え意識を有する段階に至れるかもしれません。※4
どのような時代になっても機械を使うのは人間です。
技術はスマートフォンを使うように誰もが利用できて初めて価値を有します。
「課題達成型開発」は、誰もが自らの内に有している価値を見出し活用する技術です。
※1 Scheming reasoning evaluations — Apollo Research
OpenAIとApollo Research、「o1」は自分の目的のために嘘をつくと報告 - ITmedia NEWS
※2 ヒト特異的な遺伝子を霊長類コモンマーモセットに発現させると、脳が拡大して脳のシワが作られた―ヒト大脳新皮質の進化過程を解き明かす― | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
ヒト特異的な遺伝子を霊長類コモンマーモセットに発現させると、脳が拡大して脳のシワが作られた | 理化学研究所
※3 高校数学からはじめる深層学習入門(畳み込みニューラルネットワークの理解)
※4 深層学習の物理学:統計神経力学とAIのクロスオーバー – 理論から実践への応用まで詳細解説 - AI・データサイエンス情報館
(2025.02.01)
■とんでも話・・あり得ないことに翻弄される世界
エネルギー価格の高騰が世界に変革をもたらそうとしています。
元来、エネルギー消費を抑え温暖化防止を目的としたBEV(内燃機関のない電気自動車)政策は、電力料金の高騰などにより方針変更が見られ、その大義さえ揺らいでいます。
一方で実力をつけたBYDなどのメーカーによる低価格なハイブリッド車が世界を席巻する懸念が高まっていると思われます。※1
さらに、自動運転の社会実装テストが進めやすい国のEV(ハイブリッド車を含む)は大きな脅威でしょう。
いつの時代もエネルギー政策は、国家や企業のプロジェクトが企画される段階で、その時代に大きな力や利権を持つ人たちの影響を受けてきました。
歴史を振り返ると、日本が第二次世界大戦でアメリカに宣戦布告した背景の一つに、石油供給の遮断が挙げられます。
しかし、その裏では驚くべきプロジェクトが行われていたことはあまり知られていません。
日本は南方の植民地拡大により石油を確保しようとしていましたが、その一方で人造石油プロジェクトにも着手していました。
旧日本軍部は国家予算の26%を費やす詐欺に嵌っていたのです。※2
(ドイツでは異なる手法で人造石油を実用化していました ※3)
もし日本がこの膨大な予算を適切に活用していれば、無謀とされたアメリカとの開戦は避けられたかもしれません。※4
トランプ氏の大統領就任により、エネルギー市場にどのような変化がもたらされるのか注視したいところです。
プロジェクトの成否は、走り出す前にほぼ決まっています。
※1 満タンで2200kmも走るPHEVが214万円??? BYDが[プラグインハイブリッド]を意匠登録したことが発覚!!!!! - 自動車情報誌「ベストカー」
BYDがひそかに蓄えるエンジン技術、“4%”から見つけた「希薄燃焼」 | 日経クロステック(xTECH)
※2 『水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬』稀代の詐欺師、暗躍の戦争裏史 - HONZ
※3 国家予算の26%をつぎ込んだ「人造石油」計画 山本五十六を苦しめた「エネルギー問題」とは | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン
※4 石油から見た第二次世界大戦 – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute
(2025.01.15)
あけましておめでとうございます!
2025年が皆様にとって飛躍の年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
■価値ある目標・・「ありたい姿」を見出す
新年を迎え、今年は何をしようかと考えている方も多いことでしょう。
今回は、「課題達成型開発」が重視する目標設定についてご紹介します。
・感覚の変化と価値の捉え方
御社の売り上げ目標は、設定理由を明確に説明できていますか?
今回はそんな目標設定のお話です。
あまり耳にすることはないかもしれませんが、「精神物理学」という分野があります。※1
この分野で興味深いのは、人間の感じ方が絶対量よりも「変化」に強く影響される点です。
たとえば、ハンバーガーショップでの100円の値上げは大きなショックを与える一方で、高級レストランでの100円はほとんど気になりません。
また、10グラムの荷物に1グラムを加えると変化を感じるのに、1キログラムの荷物に1グラムを加えても重さを感じない現象があります。
これらは対数(log)の概念で説明され、高校数学の知識が少しだけ必要になります。
グラフ※2を見ればわかるように、感覚(x)がほとんどない状態から少し増えると大きな刺激(y)を感じますが、すでに強く感じている(x)が大きな状態では増加しても刺激の変化(Δy)は小さくなります。
・時間短縮の価値を考える
人に価値を感じてもらうことは、事業企画において重要な評価基準です。
たとえば、東京―大阪間の移動では、新幹線は特急の6時間半を2時間半に短縮し、移動時間は60%削減されています。
一方、リニア新幹線は新幹線の2時間半をさらに67分に短縮し、55%の削減を計画しています。
世の中の理解を得るには、同等の刺激が必要なのかもしれません。
しかし、実効性のある取り組みを実現するには、単なる削減ではなく、新しい価値の創出が必要です。
従来の新幹線が往復8時間の時間短縮によって日帰りを可能にしたのに対し、リニア新幹線の3時間短縮はどのような価値を提供できるのでしょうか。
現在ではリモート会議の普及も進み、価値が相対的に薄れている可能性があります。
求められているのは、時間短縮だけでなく、都内や府内の移動と同等の利便性を実現する「移動速度」といえるのではないでしょうか。
リニア新幹線の建設が難航する理由の一端には、こうした価値の変化が影響しているのかもしれません。
・価値ある目標設定とは
企画時点を基準に目標を設定するケースは多いですが、急速な社会変化を前にその価値が色あせることもあります。
取組みが「どのように考えてもできない」とする主張は、一見合理的に見えますが、実際には「できる方法」を探す努力を放棄する理由として使われがちです。
その結果、「出来ることだけ」(出来たなり)が目標とされ、最終的には価値を失うプロジェクトが生まれることも少なくありません。
個人の業務改善から国家レベルの事業に至るまで、価値のない投資がなされることは珍しくありません。
「出来ないこと」を「出来るようにする」目標の設定が必要なのです。
・イーロン・マスクの挑戦
今年も注目を集めるイーロン・マスク氏の高速移動プロジェクトを見てみましょう。
2017年時点では夢物語に思えたスペースXですが、世界中を日帰り可能にするという目標は、今なお価値を失うことのないものです。※3
「できたなり」の目標ではなく、長期的に価値を持つ取り組みを目指す――これは「課題達成型開発」が提案するアプローチです。
プロジェクトの成否は、走り出す前にほぼ決まっています。
※1 心理学用語「ウェーバーフェヒナーの法則」とは?重さの具体例まで解説 – スッキリ
※3 スペースX、ロケットで旅客輸送 主要都市間30分で - 日本経済新聞
(2025.01.01)