小容積衝撃波管による噴流誘起衝撃波と噴流の衝突過程の観測実験:5M加藤
衝撃波は背後の領域の圧力・温度・密度を不連続に上昇させる圧力波で、物体や噴流との衝突時に一定の条件を満たすと反射することができます。その衝撃波の性質を利用し、応用例として衝撃波閉じ込め現象を提唱します。衝撃波閉じ込め現象を簡潔に説明します。まず、衝撃波と噴流が壁面に向かって進みます。衝撃波が壁面と衝突して反射し、噴流に向かって進みます。そして、衝撃波は噴流と衝突して再び反射します。このような現象が繰り返されている間に噴流が衝撃波の移動領域を狭め、噴流と壁面の間で局所的な高エネルギー場が発生します。問題点として、衝撃波が噴流で反射するための実験条件がまだわかっていません。本研究では実験条件を変更しながら実験を行い、衝撃波が噴流で反射するための条件を解明することを目的としています。
衝撃波とは,超音速現象中において発生する圧力波となっています.衝撃波の特性として通過後に圧力,温度,密度を上昇させるため非常に高エネルギーな現象となっています.そのため衝撃波は様々な応用がなされ,さらなる技術の進歩が期待されています.
本研究では衝撃波の応用先として衝撃波閉じ込め現象というものを提案します.衝撃波閉じ込め現象とは衝撃波管より衝撃波および噴流を発生させ,対向する壁面と後方からの噴流の間で衝撃波を複数回反射させる現象になります.そして衝撃波の閉じ込めにより居所的に高エネルギーの領域を生成させることができます.さらに衝撃波管では噴流によって高エネルギーの領域を圧縮しながら閉じ込めを行うことができる.
本研究の問題点として,衝撃波閉じ込め現象の物理的な発生条件が不明である点です.その中でも特に噴流先頭での衝撃波の反射条件が解明されていません.
そこで本研究では二次元の数値解析を用いて衝撃波および噴流,さらに壁面までの距離をパラメータとして衝撃波および噴流の挙動について確認していきます.
まず,研究背景として,流れの可視化について説明します.流れの可視化とは,目には見えない気体や液体の流れを直接目視できるようにする技術のことをいいます.流れの可視化により,流れ場の速度や圧力,温度,密度などを直感的に理解することができます.1つの可視化方法で得られる情報は限られているため,様々な方法が提案されています.
本研究では,Background Oriented Schlieren(BOS)法という可視化手法を用いています.BOS法では,流れ場の後ろに周期性を持つ背景画像を配置し,流れ場による密度勾配で生じる光の屈折を利用します.この屈折した光をハイスピードカメラで捉えることで歪みの発生した計測画像が得られます.衝撃波を起こす前の密度変化のない参照画像と光の屈折により密度変化がある計測画像を比較することでこのような密度変化の可視化画像を出力できます.BOS法により撮影した画像の行う画像処理の方法として連続ウェーブレット変換を用いた画像処理があります.この方法をWavelet-based BOS (W-BOS)法と言います.撮影画像の右に示す画像が,W-BOS法に出力した超音速流れの密度勾配の可視化画像です.可視化画像の先頭にある円弧状の密度勾配が衝撃波,その後追ってきている密度勾配が噴流です.BOS法の特徴として,参照画像と比較するため,密度勾配の定量的な評価ができるということと背景画像,光源,カメラという単純な撮影系で行えることがあげられます.このような特徴からBOS法は注目されている可視化手法です.
W-BOS法における問題点として,ハイスピードカメラで高速撮影を行うと,撮影画像の空間解像度が低下してしまうということがあります.
本研究の目的は,問題の改善のために,W-BOS法による衝撃波の可視化画像の空間解像度を向上させることです.そこで,解像度の低い粗い画像の解像度を上げることで滑らかな画像を生成する技術である超解像技術に注目しました.本研究では,W-BOS法に超解像技術を用いることで空間解像度を向上できるかを調べます.
左に示すのが低解像度画像の輝度分布です.超解像によりPixel数が増加し,プロット数が増えていることがわかります.超解像を行った輝度分布から密度勾配の可視化画像を出力し,元の画像との違いについて調べます.
ナノ粒子生成法のひとつに,パルスレーザーアブレーション法(PLAおよびSPLA)があります.
PLAは,雰囲気ガス中に固体ターゲットを設置し,パルスレーザーを照射します.
高エネルギー状態となったターゲットは蒸発してプルームと呼ばれる蒸気群となり膨張を始めます.そして,プルームを冷却することでナノ粒子を生成する手法です.
この過程で,プルームの爆発的な膨張によりプルーム前面に衝撃波が形成されています.
また,ナノ粒子の複合を目的とした実験に,ダブルパルスレーザーアブレーション(DPLA)があります.
DPLAは,向い合せた固体ターゲットそれぞれにPLAを行います.
実験により,雰囲気ガスが高圧の場合,対向衝撃波との衝突でプルームを後退させることが分かっています.この後退により,ナノ粒子複合の度合いが変化してしまうことが考えられます.
従って,本研究はDPLAを複合ナノ粒子生成法として活用するために,衝撃波の衝突がプルーム後退へ及ぼす影響の大きさを解明することを目的としています.
そこで,数値解析を用いて衝突過程における物理量の空間分布を調べます.そして,SPLAの結果からDPLAの現象を予測することを可能とするために,SPLAにおける衝突前の物理量で構成される式とDPLAにおける後退の度合いの間の関係性を調べます.
近年,農業従事者の減少が問題となっています.そのため,樹液流量の測定により植物の育成状況を数値化し,育成管理を簡易化することで農業従事者を支援する取り組みが行われています.樹液流量の測定手法には茎熱収支法が挙げられます.茎熱収支法は植物の茎にヒータを巻き付けて加熱し,測定した茎表面の温度から熱収支式を解くことで樹液流量を算出します.先行研究では赤外線サーモグラフィを用いた温度測定が提案されました.このとき,茎表面の温度分布と樹液流量には相関関係がみられました.そのため,温度分布から樹液流量を直接求められることが示唆されました.
しかし,温度分布は植物の個体差や気温などによっても変化するため無限のパターンがあり,人間が全てのパターンの温度分布から樹液流量を求めることは難しいです.そこで,本研究では大量の温度分布をAIに学習させて,温度分布から樹液流量を予測します.
本研究はSDGsの目標第2番,12番および15番の3つに貢献します.
今日の日本における農業人口は年々減少おり,その原因に農業従事者の高齢化や新規就農者の離農率の高さなどが挙げられます.その対策として育成状況を数値化することで植物育成を支援する例がありますが,本研究では植物体内の樹液流量に注目しました.樹液流量にはいくつかの測定手法がありますが,SHB法は樹液によって流される熱量を測定することで樹液流量を測定する手法です.本研究では樹液によって流される熱量を非接触な温度測定装置である赤外線サーモグラフィで測定した茎表面温度を用いて測定しています.赤外線サーモグラフィを用いることで広い範囲で茎の温度分布を測定できることや温度測定による誤差を少なくなるという利点があります.
熱って、いろいろなものに使われているよね? 例えば、冷蔵庫やエアコン、パソコンなど、身の回りには熱を利用したものがたくさんあります。これらの機械の中には、熱を交換するための装置である「熱交換器」が入っているんだ。
近年、この熱交換器の需要が高まっています。特に、飛行機やロケットなどの航空宇宙産業では、軽くて高性能な熱交換器が求められています。熱交換器の性能を向上させるには、その形を変えることが有効です。
そこで注目されているのが、フラクタル構造やラティス構造といった、ちょっと変わった形です。フラクタル構造って聞いたことあるかな? シダ植物の葉っぱや、体の血管のような、複雑な形をしているんだ。実は、ウサギの耳や象の耳も、フラクタル構造になっているんだよ。このような形は、熱を効率よく逃がすのに役立つと考えられています。
もう一つのラティス構造は、小さな立体図形を積み重ねて作った、格子状の形をしています。この形も、熱交換器の性能を上げるのに役立つと考えられています。
でも、フラクタル構造やラティス構造は、複雑な形をしているため、従来の加工方法では作ることが難しかったんだ。そこで登場したのが、金属3Dプリンタという新しい技術です。金属3Dプリンタを使えば、複雑な形の熱交換器も作ることができます。
しかし、フラクタル構造やラティス構造には、たくさんの種類があります。そのため、金属3Dプリンタで作製した熱交換器をすべて実験で調べるのは大変です。そこで、コンピュータを使った解析と実験を組み合わせて、熱交換器の性能を調べていきます。
この研究では、フラクタル構造やラティス構造を持つ熱交換器の伝熱特性を調べ、金属3Dプリンタで作る熱交換器の性能向上を目指します。