衝撃波は背後の領域の圧力・温度・密度を不連続に上昇させる圧力波で、物体や噴流との衝突時に反射することができます。
本研究はその衝撃波の性質を利用して、衝撃波閉じ込め現象を簡潔に説明します。
まず、衝撃波と噴流が壁面に向かって進みます。
衝撃波が壁面と衝突して反射し、噴流に向かって進みます。
そして、衝撃波は噴流と衝突して再び反射します。
このような現象が繰り返されている間に噴流が衝撃波の移動領域を狭め、噴流と壁面の間で非常に高圧な領域が発生します。
問題点として、噴流の条件を変更せずに反射衝撃波のみの速度を変更した場合の噴流との衝突に与える影響ががまだわかっていません。
本研究では、低密度の壁面を用いて,反射衝撃波の条件のみを変更して,噴流と衝突したときにおける衝撃波の反射の有無を調査することを目的としています。
衝撃波とは,超音速現象中において発生する圧力波となっています.衝撃波の特性として通過後に圧力,温度,密度を上昇させるため非常に高エネルギーな現象となっています.そのため衝撃波は様々な応用がなされ,さらなる技術の進歩が期待されています.
本研究では衝撃波の応用先として衝撃波閉じ込め現象というものを提案します.衝撃波閉じ込め現象とは衝撃波管より衝撃波および噴流を発生させ,対向する壁面と後方からの噴流の間で衝撃波を複数回反射させる現象になります.そして衝撃波の閉じ込めにより居所的に高エネルギーの領域を生成させることができます.さらに衝撃波管では噴流によって高エネルギーの領域を圧縮しながら閉じ込めを行うことができる.
本研究の問題点として,衝撃波閉じ込め現象の物理的な発生条件が不明である点です.その中でも特に噴流先頭での衝撃波の反射条件が解明されていません.
そこで本研究では二次元の数値解析を用いて衝撃波および噴流,さらに壁面までの距離をパラメータとして衝撃波および噴流の挙動について確認していきます.
本研究では,流体現象の密度変化の可視化方法であるBackground Oriented Schlieren(BOS)法の空間解像度の向上を目指している.BOS法は,流れ場の後ろに周期性を持つ背景画像を配置し,流れ場による密度勾配で生じる光の屈折を利用します.衝撃波を起こす前の密度変化のない参照画像と密度変化によりが光が屈折した計測画像を比較することで定量的な密度勾配および密度の可視化画像を出力できます.背景画像として正弦波状の縞画像を設置し,連続ウェーブレット変換を用いた画像処理を行う方法をWavelet-based BOS (W-BOS)法と言います.
撮影速度(フレームレート)と空間解像度は,カメラの性能に依存し,トレードオフな関係にあります.超音速流れを可視化対象とした場合,高速撮影を行う には空間解像度を下げる必要があります.
我々は,解像度の低い粗い画像の解像度を上げることで滑らかな画像を生成する技術である超解像技術に注目しました.W-BOS法は,正弦波状の周期的な背景画像を撮影するため,超解像技術と相性が良いのではないかと考えています.本研究では,実験で撮影した画像に深層学習を使った超解像技術を適用し,超音速流れを対象としたW-BOS解析画像の空間解像度を向上させることを目的としています.
ナノ粒子生成法のひとつに,パルスレーザーアブレーション法(PLAおよびSPLA)があります.
PLAは,雰囲気ガス中に固体ターゲットを設置し,パルスレーザーを照射します.
高エネルギー状態となったターゲットは蒸発してプルームと呼ばれる蒸気群となり膨張を始めます.そして,プルームを冷却することでナノ粒子を生成する手法です.
この過程で,プルームの爆発的な膨張によりプルーム前面に衝撃波が形成されています.
また,ナノ粒子の複合を目的とした実験に,ダブルパルスレーザーアブレーション(DPLA)があります.
DPLAは,向い合せた固体ターゲットそれぞれにPLAを行います.
実験により,雰囲気ガスが高圧の場合,対向衝撃波との衝突でプルームを後退させることが分かっています.この後退により,ナノ粒子複合の度合いが変化してしまうことが考えられます.
従って,本研究はDPLAを複合ナノ粒子生成法として活用するために,衝撃波の衝突がプルーム後退へ及ぼす影響の大きさを解明することを目的としています.
そこで,数値解析を用いて衝突過程における物理量の空間分布を調べます.そして,SPLAの結果からDPLAの現象を予測することを可能とするために,SPLAにおける衝突前の物理量で構成される式とDPLAにおける後退の度合いの間の関係性を調べます.
近年,光遺伝学という技術が注目されています.光遺伝学とは脳細胞に直接光を照射し,部分的に活性化させ,制御する技術のことを言います.この技術を利用して,脳の仕組みの解明等,様々な研究への応用が期待されています.
しかし,光遺伝学には霊長類のような脳の大きい照射対象に対して,光を届ける深度に限界があるという問題点があります.光が脳内を通過するとき,光の散乱や吸収が起こってしまい,興味のある細胞に到達するまでに光量が減少してしまいます.これを解決するためには低侵襲(生体が傷つきにくい)な方法で光を深部にまで届けるアプリケーションが必要です.
そこで本研究では,衝撃波によって誘起される高圧力領域を仮想的な光ファイバとして用いることを提案しました.衝撃波は通過した領域の圧力を高める特性があります.衝撃波を集束させることで,その特性を高めることができます.衝撃波によって圧力を上昇させると,密度が上昇し,屈折率が変化します.この屈折率の変化を利用して光を全反射させ光を遠くにまで届けることが可能であると考えられます.
衝撃波の集束には開放型楕円容器と呼ばれる,一方をカットした楕円容器を使用することを想定していますが,この開放型楕円容器がどんな形状で最適な光ファイバが形成されるのか分かっていません.本研究では,2次元の数値解析を実行し,どんな形状の開放型楕円容器が適切な光ファイバを形成できるか,調査しています.また,開放型楕円容器によって衝撃波がどのように集束されるのか,物理的な考察も行っています.
本研究は,微小空間にレーザーを照射した際の,微小空間の形状と細胞の移動距離を明らかにするための数値計算手法を確立することを目的としています.
数値計算でこれらを明らかにすることで,細胞分離デバイスの設計に貢献できる可能性があります.
また,本研究は高専-大学院連携教育プログラムの実施に当たり,奈良先端大学と共同研究を行っております.
近年,農業従事者の減少が問題となっています.そのため,樹液流量の測定により植物の育成状況を数値化し,育成管理を簡易化することで農業従事者を支援する取り組みが行われています.樹液流量の測定手法には茎熱収支法が挙げられます.茎熱収支法は植物の茎にヒータを巻き付けて加熱し,測定した茎表面の温度から熱収支式を解くことで樹液流量を算出します.先行研究では赤外線サーモグラフィを用いた温度測定が提案されました.このとき,茎表面の温度分布と樹液流量には相関関係がみられました.そのため,温度分布から樹液流量を直接求められることが示唆されました.
しかし,温度分布は植物の個体差や気温などによっても変化するため無限のパターンがあり,人間が全てのパターンの温度分布から樹液流量を求めることは難しいです.そこで,本研究では大量の温度分布をAIに学習させて,温度分布から樹液流量を予測します.
今日の日本における農業人口は年々減少おり,その原因に農業従事者の高齢化や新規就農者の離農率の高さなどが挙げられます.その対策として育成状況を数値化することで植物育成を支援する例がありますが,本研究では植物体内の樹液流量に着目しました.樹液流量にはいくつかの測定手法がありますが,茎熱収支法は茎表面の温度を用いて,樹液によって流れる熱量を測定し,樹液流量を算出する非破壊検査法です.従来の茎熱収支法は温度測定に熱電対を用いますが,熱電対の取り扱いは難しく,正しい温度測定を行うには経験的な技術が必要を求められます.そこで本研究では温度測定に赤外線サーモグラフィを用いた新しい茎熱収支法の確立を目的としています.
自動車は,過酷な環境で使用されます.そのため,自動車部品の製造には,信頼性の高いはんだ付けが求められています.信頼性の高いはんだ付け手法として,スリーブはんだ付けが開発されました.
スリーブはんだ付けでは,はんだごてに相当するスリーブという円筒を加熱します.加熱されたスリーブが,一定の長さに切断されたはんだ片を溶融します.溶融したはんだ片が,基板と電子部品を接合する.加熱したはんだごて代わりの「スリーブ」内ではんだ片を溶かすことではんだ付けを行う手法です.
電気自動車などに使用される銅を多く含んだ基板では,基板の温度が上昇しないことで,はんだ付けに失敗してしまいます.しかし,基板の温度が上昇しない原因は不明瞭です.
本研究では,基板の銅の表面積や体積の大きさと基板の温度に着目し,その関係を解明することで問題を解決しようとしています.
実験では,赤外線サーモグラフィを用いて加熱時の基板の温度を測定します.
近年熱交換器の需要は高まっています.
特に軽量かつ高性能な熱交換器は航空宇宙産業で求められています.
熱交換器の性能向上の手法には形状の変更があります.
フラクタル構造やラティス構造は体積当たりの表面積が大きい傾向があり,熱交換器への応用が期待されています.
ラティス構造はある立体図形を格子状に配置することで得られる構造です.
フラクタル構造は自己相似性を持つ構造であり,シダ植物の葉や葉の葉脈,生物の血管など自然界に多く見られる構造です.
ウサギの耳や象の耳など,放熱用の器官にもみられる構造です.
しかし,フラクタル構造やラティス構造は内部構造が複雑なため,従来の切削加工や塑性加工での製造は困難であるという問題点があります.
近年登場した金属ブロックなどの新たな可能方法によって加工が可能となりました.
金属3Dプリンタで製作しても,これらの構造は種類が多いためすべてに対して実験を行うことは困難です.
そこで,解析と実験を行い比較を行うことで数多くの構造に対して伝熱特性の解明を行います.
本研究では,フラクタル構造およびラティス構造を有する熱交換器の伝熱特性を調査し,金属3Dプリンタで作製する熱交換器の性能向上を行う.
福岡研究室では,企業との共同研究を通して,社会貢献に取り組んでおります.ペレット製造で使用される押出金型において,金型から流出するポリマーの速度は,ポリマーの品質を左右します.そして,アスカ工業が開発を進めている金型においても,押出金型から流出するポリマー速度は流出口によって速度が違うという課題をかかえていました.そこで,この課題を解決すべく,流出するポリマー速度を均等にできる押出金型の設計を目的とした共同研究が始まりました.我々はこの問題を解決するために,流路面積を広げるなど押出金型形状の改良をおこない,数値解析することで,流出するポリマー速度が均等になる最適な金型形状の研究を進めております.また,実際にポリマー速度を実験で測り,数値との比較も行っています.