〈UNDERGROUND CINEMA FESTIVAL 3〉にて『蟹牡丹』『サルビア姉妹』『破壊する光は訪れる』『GARNET』上映!東京、大阪、名古屋、京都巡回。
1996年/8mmFilm 30分
出演:松下正己,川上雅子,川上真智子
監督・撮影・編集:緑川珠見
音楽:さえぐさ ゆきお
< 作品紹介 >
ある夏の日の昼下がりに出会った男女の視線が交錯する…。
あえて通俗的な物語を題材に、ミニマルな要素で「センシャルな」テーマに取り組んだ野心作。
これまでの緑川作品に男性が登場するシーンは稀だったのだが、この作品では例外的に主要な役柄を担っている。
男を演じた松下正己(舞踏家)が異色の存在感を放っている。
< 作品解説 >
これまでの2作は明らかにそれぞれに異なったアプローチで作られた作品ではあったが、母と娘の映画という共通の印象が強かった。
しかし、この3作目は一転して男女の映画である。男女の視線そのものが主題となっているのだが、そこには緑川の乾いた視線も漂っている。
恋愛の不毛を暗示させるような男女の意識のズレを描いているのだが、 「既に死者であるかのような視線で映画を作ってしまう」という緑川の言葉を思い出させるような、
不吉な匂いも感じさせられる。(それは黒子として登場する山百合の雄しべをちぎる女の存在によるかもしれない)
決して明るい映画ではないが、しかし確かに緑川は外部へ向かおうとしている。ある種の解放感のようなものさえ感じられる。
「感覚的」といわれる縁川だが、制作する際の興味の約半分は構成にある。この作品は、男性の視線、女性の視線、物語の視線、の3つの要素に 演者の物語の外の姿(作者の視線)をノイズとして配し、合計4つの要素で構成したシンプルな作品である。
緑川の作品は一見その情緒的な外見に惑わされるかも知れないが、 すべての作品に共通しているのは、冷静さと過剰な抑制である。