授業づくりの失敗から学ぶ
〜書籍「看護のための授業づくりガイド」をもとに〜
連日35度を超える真夏の8月23日。
17時からワイワイとした雰囲気で開始された今回のまなばナイト。
現地会場(名古屋)とオンラインから多くの方が参加されました。
また、武蔵野大学響学開発センター教授であり熊本大学大学院教授システム学専攻同窓会の顧問でもある鈴木克明先生もご参加されました。
当日、私は名古屋から遠く離れた九州の熊本県からZOOMでオンライン参加しましたので、これからオンライン参加を希望されている方の参考になれば幸いです。
今回のまなびナイトのスピーカーは、奈良学園大学保健医療学部 教授 服部 律子さんによる「授業づくりの失敗から学ぶ〜書籍「看護のための授業づくりガイド」をもとに〜」でした。丁度、2024年に服部先生が書籍を出版されたこともあって、旬な内容をご提供いただきました。
司会の佐久間さんと運営の大石さんによる進行で「乾杯〜!」からスタートしました。
その後、本日のスケジュール紹介とスピーカーの紹介、オンライン参加者に対して「グループワークの進め方」についての説明がありました。
そして早速、スピーカーの服部先生によるご講演が始まりました。
まず、服部先生が出版された書籍は、初めて看護学校の教員に向けた内容になっているなどのご紹介がありました。ご自身のこれまでの悩みや失敗した経験などが基になっているとのことです。
本日のテーマとしては3つ。
「先生の授業、わかりやすい」その先は?
〜学生の文脈?先生の文脈?
〜やる気を引き出せていたか?
「先生の授業、わかりやすい」その先は?
学生から「先生の授業はわかりやすい」と言われたら、教員としては自身の評価にも繋がるため嬉しい一方で、学生の成績に比例しているとは言えないケースも。せっかく授業を評価してもらっていても、学生の成績や行動変容に繋がなければ教員としてはちょっと・・・
そもそも、何のために教育方法を改善したい?何のためにもう少しうまく教えられるようになりたいと思っているのか、これを見据えておくことが重要であり、授業の質を改善する目的を常に持っておくことが重要という話がありました。
そして、学習者中心で授業設計できているか?という話がありました。
「何ができるようになることを目指しているかは明確だったか?」
「目標は具体的に行動目標として設定できていたか」
「具体的にその先の「姿」を学生に示すことができたか」
まさにIDでいうところの「学習の出口や学習目標」と共通しており、IDを専攻として学ぶ立場としては首を縦に振り続けていました。(熊本からPCの前で大きく頷いていました)
教える立場の教員として、「その単元」を教えることや学生が学ぶことは「当たり前」と思う一方で、それを深く掘り下げて「なぜそれを学ぶ必要があるのか」を学生に示すことが重要だという話がありました。例えば、学習目標を「〜を説明できるようになる」ではなくて、「看護の現場でアセスメントできるようになる」のような具体的な行動目標を示すことが重要であるということです。つまり、学生に丸暗記をさせるのではなく、これもIDでいうところの運動スキルや知的技能などの学習成果のタイプが大事ということですね。
さらに教員としては学生の学習意欲を向上・維持させるために必要な「ARCSモデル」の紹介もありました。
さらに学生の学習を変えたいのなら「評価の方法」を変えることの重要性について触れられていました。例えば、アセスメントを習得させたいのであれば、丸暗記で対応できるような筆記試験で問うのではなく、課題としてアセスメントを実際に行ってもらうなど、運動スキルと知的技能を融合した評価方法も重要だと感じました。実際に服部先生はルーブリック表を用いた評価を行っているとのことで、非常に実践的な教育・評価方法だと感じました。ただし、服部先生によるとルーブリック表にも弊害があるそうで、「これくらいできればいい」とそれ以上のレベルを目指さなくなる危険性もあるとのことでした。(確かに事前に提示されていると、そう思ってしまう学生さんもいるかもしれませんね)
また、学生は、「ペタゴジーからアンドラゴジー」へと学習スタイルを転換することの重要性も説明されました。
そしてセッションの最後には、専門職を目指す学生に対して指導するときに「職業人としての態度を育成する」ことの重要性についても触れられました。
続きましてセッション2としてグループワークでの意見交換です。
今回は、「私が一番興味を引いたこと」、「仕事で活かそうと思った具体策」、「服部先生に聞いてみたいこと」の3つのテーマについて意見交換しました。
現地の名古屋ではかなり盛り上がっていそうでしたが、オンラインのZOOMでも各グループで時間を忘れるくらい盛り上がっておりました。(オンライン参加者の議事録が画面共有されるのですが、鈴木先生からは「現地とフェアじゃないよな〜」の言葉が印象的でした笑)
次は、オンライン参加グループからの発表に続き、現地参加者からの発表です。
特に印象的だったのは、そもそも学生の入口(入学の動機や入試テストの有無)がずれていると、教員や学校が求める出口に辿り着くのは難しいのではないか、という意見でした。(個人的に、これは常日頃感じているところです・・・)
オンラインも現地も、違う職種の方と活発なディスカッションができるので、非常に学びの多いセッションでした。
セッションの最後に、現地とオンラインから服部先生への質問タイムでしたが、多くの参加者から活発な質問がありとても有意義な時間となりました。
そして最後に鈴木先生からの総評です。
職業人教育と「IDの関係性と重要性」についての説明があり、「学習者の入口はどうであれ教育の出口は変えたらいけない」というお話がとても勉強になりました。
今回もとても「勉強になる&刺激をいただける」まなびの夜をありがとうございました。
まだ参加されていない方はオンラインだけでも参加してみることをオススメします。
次回のまなばナイトは10月18日(土)関西での開催です。
(熊本大学大学院教授システム学専攻博士前期課程 佐方祐貴)