ニュース2023

(最終更新:2023114日) 

2023年11月4日:コロラド州デンヴァー市で3日間にわたり開催された全米租税学会(National Tax Association)の第116回年次大会に参加し、「不完全競争下での物品課税、品質選択、そして転嫁」に関する研究報告を行いました(土居直史氏との共同研究)。この研究では、不完全競争下にある企業が価格だけでなく、(短期的な選択と見なせる範囲での)品質も選択しているという状況を考えることで、租税や費用構造の変化に伴う、価格や品質への影響(パススルー)を見ようとするもので、租税や費用の増加が、価格を下げたり、品質を向上されることも生じうるという結果が生じ得ることを確認しており、現時点では、今後の実証研究への展開にもつながるような経済理論的な観点からの整理を進めているという状況でございます。従いまして、当該研究は、まだプレリミナリーな内容ですが、この段階で、幾つかの注意すべき点を、フロアのオーディエンスからいただくことができました。フェリックス・モンタグ先生を始めとするプログラム委員会の先生方や、今回の大会開催にあたりご尽力された皆々様に厚く御礼申し上げます。ちなみに、海外出張は2020年3月のヨーロッパ以来となり、米国訪問は、当職の記憶が正しければ、2018年秋からの5年振りとなります。対面で学会に参加し、「営業活動」することの重要性(とりわけ、フォーマルなセッションにおいてだけでなく、それ以外の社交的な場面において)を改めて認識した次第でございます。

2023年10月11日:京都大学経済学部同好会様ご主催の「2024年度演習に向けた経済学部ゼミ合同説明会」(10月20日)に登壇致します。当日使用予定のスライドはこちら(当日まで随時改訂を継続)となります。

2023年7月11日:佐藤進氏、マーク・トレンブリィ氏との共同執筆の研究論文「混合的ホーミングを伴うクールノー・プラットフォーム競争」(Cournot Platform Competition with Mixed Homing)が、学術雑誌International Journal of Industrial Organization掲載受理されました。内容につきましては、5月20日のニュースをご参照いただければと存じます。共著者のお二人に深く感謝し、また担当編集者のジュリアン・ライト先生、並びに匿名の査読者の方々にも御礼申し上げます。なお、4月28日のニュースでご紹介させていただいた英文研究書Recent Advances in the Theory of Third-Degree Price Discrimination: A Nexus to Network Effects, Innovation, and Behavioral Aspects(『第3種価格差別の理論における最近の新展開:ネットワーク効果・イノヴェーション・行動経済学的側面との関係において』、橋爪亮氏・池田剛士氏・成生達彦氏・岡田知久氏との共著)は、予定より早まり、7月7日に出版されました。改めまして、関係各位に感謝申し上げます。

2023年6月11日:日本応用経済学会・2021年度春季大会における「学会賞授与式」のお時間を拝借致しまして、拙著『データとモデルの実践ミクロ経済学 ジェンダー・プラットフォーム・自民党』(2022年、慶應義塾大学出版会)の内容紹介をさせていただく機会を頂戴致しました。今までご指導・ご鞭撻をいただきました全ての皆様のお陰で、これまでの研究活動を部分的にでもまとめることができましたことに、改めて感謝申し上げます。

2023年5月20日:Contract Theory Workshop(於大阪経済大学北浜キャンパス)にて、「混合的ホーミングを伴うクールノー・プラットフォーム競争」(Cournot Platform Competition with Mixed Homing)に関する研究報告を行いました(佐藤進氏、マーク・トレンブリィ氏との共同研究)。本研究は、両氏との共同執筆論文「内生的ホーミングを伴うプラットフォーム寡占:合併と自由参入に対する含意」(Journal of Industrial Economics掲載予定)と補完的な位置にあり、意思決定に関する厳密さをやや緩めることによって、消費者や、出品者/開発業者のプラットフォーム利用のパターンを広く捉え、プラットフォームの数が増加することの意味合いを考えようとするものです。これは、クールノーによる1838年の著書以来の問題意識を引き続くもので、クールノー分析の両面市場プラットフォーム版とも言えるでしょう。興味深いことに、多くの場合において、プラットフォームが対消費者、対出品者/開発業者に対して付ける価格は、プラットフォームの数が増えていくに連れて、限界費用に近づいていくという、「クールノーの極限定理」と同様の結果が成立するものの、社会厚生に関しては、むしろ低下するという結果が示されました。これは、各プラットフォームの規模が小さくなることで、間接的ネットワーク外部効果による利益を、消費者と出品者/開発業者が享受できなくなることによるもので、ここからは当職の私見となりますが、外部性がないような伝統的な市場/産業に対する競争政策を考えるときとは異なったマインドセットによって、対プラットフォームの規制や政策を考えなければならないことを示唆しているものと思われます。コーディネイターの石黒真吾先生を始め、ご参加の皆様方に深く感謝申し上げます。

2023年4月28日:橋爪亮氏、池田剛士氏、成生達彦氏、並びに岡田知久氏との共著で、Recent Advances in the Theory of Third-Degree Price Discrimination: A Nexus to Network Effects, Innovation, and Behavioral Aspects(『第3種価格差別の理論における最近の新展開:ネットワーク効果・イノヴェーション・行動経済学的側面との関係において』)と題する英文研究書をSpringer Singapore様から出版させていただく運びとなりました7月8月予定)。これは、当職が客員主任研究員を務めさせていただいております日本政策投資銀行・設備投資研究所を主体とするSpringerBriefs in Economics: DBJ Research Seriesの一冊として出版されるものですが、同時に、「流通の経済学」という新分野の開拓など、関連諸分野を長年に亘り牽引されてきた成生達彦先生が、本年3月に同志社大学ビジネススクールをご退職されるタイミングに合わせ、共著者4名が成生先生からのご学恩に対して感謝の意を示す意味合いを込めたものともなっております。こと当職に関しましては、大学院生時代、第3種価格差別に関する最初の論文を学会報告した際、成生先生に討論者を依頼させていただいたことがご縁の切っ掛けでございまして、誇張ではなく、当職が今日あるのは、ひとえに先生からの絶えざる励ましのお陰の賜物と改めて感謝している次第です。ちなみに、当職による研究活動の今後におきましては、「不完全競争の経済学」の一分野としての「企業間取引の経済分析:理論と実証」(なお、「企業間取引」には、プラットフォームが中心的な役割を担う多面市場的文脈、あるいは、一投入要素としての労働市場との関係性への考慮といった話題もポテンシャリーには含みうる)にも重点を置いて取り組んでいければと考えておりますが、そもそも、基本的なミクロ経済学においては「企業」としてしか扱われていない供給サイドの多段階的構造について意識するようになった切っ掛けは、学部生時代、成生先生による記念碑的ご著作『流通の経済理論―情報・系列・戦略』(1994年、名古屋大学出版会)に接したことから始まるものでした。出版に際しまして、ご仲介の労をお取りいただきました加藤晋先生、堀内昭義先生を始めとする審査委員の先生方、設備投資研究所のご関係の皆様方、並びにSpringerご担当の皆様方からは多大なご支援とご協力を頂戴致しましたこと、この場を借りまして深く感謝申し上げます(序文の謝辞におきまして、お一人お一人のお名前に言及させていただいております)。

2023年3月23日:去る2月24日、公正取引委員会・競争政策研究センターでのCPRCセミナーにて、「サーチャージ禁止ルールは実効小売価格を上げるのか?」(Do No-Surcharge Rules Increase Effective Retail Prices?)に関する研究報告を行いました(マーク・トレンブリィ氏との共同研究)。今回は、特に実務的観点からのご指摘を頂戴することができまして、関係各位の皆々様方に感謝申し上げます。

2023年2月10日:ヨーロッパ産業経済学研究学会(European Association for Research in Industrial Economics: EARIE)のIJIO Research Summaryのシリーズ(IJIOとは、同学会が主体となって発行されている学術雑誌International Journal of Industrial Organizationの略称です)にて、同誌掲載の拙稿「十分統計量アプローチによる寡占的第3種価格差別の厚生分析」(A Sufficient Statistics Approach for Welfare Analysis of Oligopolistic Third-Degree Price Discrimination)に関する一般向けの紹介記事をご掲載いただきました。記事掲載に向けてご準備をいただきました同学会の関係各位からのご尽力に深く感謝申し上げます。

2023年2月7日:産業組織・競争政策研究会での国際ワークショップ 「Digital Platform and Competition」にて、研究論文「サーチャージ禁止ルールは実効小売価格を上げるのか?」(Do No-Surcharge Rules Increase Effective Retail Prices?)に関する研究報告を行いました(マーク・トレンブリィ氏との共同研究)。支払い手段の如何にかかわらず、全消費者に提示されている小売価格が共通の場合、利用によってポイントを貯めることが出来るような手段による支払いは、そうでない支払い手段と比べて、実質的な割引きを得ているものと考えられます。本論文では、このような業界の商慣行が、消費者にとっての実効小売価格を割高にするかどうかに関係する条件を検討するものです。主宰の松島法明先生を始め、共催の関西学院大学産業組織論ワークショップご関係の先生方、並びに、ご参加の皆様方に深く御礼申し上げます。ちなみに、昨今の業界事情ですと、「英語」とか「国際」とかが重要とされるようですが(笑)、それは目的と手段を混同したもので(世の中の多くの喜劇と悲劇は、目的と手段の混同から生じるものです。もっとも、目的と手段を分離できるという思想もまたナイーヴなものとの謗りを免れないものになりますが爆)、学術的内容においては、「英語」とか「国際」といったものは、本来、二の次であるべきです。ですので、ここでもそういったことを強調する旨はない点、重ねて強調申し上げます(爆)。