ニュース2022

(最終更新:20221114日) 

2022年11月14日:研究論文「十分統計量アプローチによる寡占的第3種価格差別の厚生分析」(A Sufficient Statistics Approach for Welfare Analysis of Oligopolistic Third-Degree Price Discrimination)が、学術雑誌International Journal of Industrial Organization掲載受理されました。本論文のテーマは、先日出版致しました翻訳書『ジョーン・ロビンソンとケインズ 最強の女性経済学者はいかにして生まれたか』での主役ジョーン・ロビンソンがその著書『不完全競争の経済学』(1933年)の第15・16章で展開したものであり、まさに「歴史の流れに身を置いて経済学の研究を行うことのささやかな一つの実践」(2022年10月29日のニュース参照)のまた別の一例を示したものとなっております。即ち、ロビンソンは独占企業を念頭に置いているところ、拙稿では、寡占的競争を念頭に置き、現代的な手法を用いることによって第3種価格差別の経済厚生への影響を分析している点が新しく、より具体的には、パススルー値、不完全競争度、マークアップ値といった指標(統計学での用語のアナロジーからこれらを「十分統計量」と呼んでいます)が重要な役割を果たすことを論じております。この場を借りまして、担当編集者のジャコモ・カルツォラーリ、アーミン・シュマッツラーの両先生、並びに匿名の査読者の方に御礼申し上げます。

2022年11月3日:昨日、関西学院大学経済学セミナーKGIO共催)にお招きをいただき、「内生的ホーミングを伴うプラットフォーム寡占:合併と自由参入に対する含意」(Platform Oligopoly with Endogenous Homing: Implications for Free Entry and Mergers)に関する研究報告を行いました(佐藤進氏、マーク・トレンブリィ氏との共同研究)。実は、この研究は、先日、学術雑誌に掲載受理された論文としてまとまられたものであり(2022年10月28日のニュース参照) 、当初の予定では、今回のセミナーでの質疑を経て改訂作業という想定でございましたが、その目論見が見事に外れてしまったという結果でございます。それにもかかわらず、今後の研究につながるような論点を数多く提起していただきましたことに対しまして、オーガナイザーの加藤雅俊先生を始め、ご参加いただいた皆様方には深く感謝申し上げます。

2022年10月29日:慶應義塾大学出版会様より訳書『ジョーン・ロビンソンとケインズ 最強の女性経済学者はいかにして生まれたか』を出版させていただきました。訳出の過程において生じた疑問に対して、原著者のナヒド・アスランベイグイ先生、ガイ・オークス先生からはその都度ごとにお答えいただき、また、栗林寛幸氏からは初訳に散見していた数多くの誤訳をご指摘いただきました。そして、同会の永田透氏は、前著に引き続き編集をご担当されました。これら皆様方に対しまして深く感謝申し上げます。同書は、原著者たちが言うところの「書簡人類学」の手法を経済学史研究に当てはめたものであり、科学史の観点からも興味深い内容と言えます。ただ当職と致しましては、「不完全競争の経済学」の歴史的形成を探りながらも、ロビンソンが『不完全競争の経済学』(1933年)で扱った対象や視点は21世紀型経済を分析する上で益々重みを帯びてきていると考えているという意味において、現代経済研究の一環としての訳出であり、余業というよりも、むしろ、当職の研究活動の重要な一コンポーネントと捉えている次第でございます(より詳細につきましては、「訳者あとがき」をご覧ください)。歴史の流れに身を置いて経済学の研究を行うことのささやかな一つの実践のあり方を示しており、願わくは、少なくはない、気概溢れる有為な研究者の皆様におかれましては(「若い皆様」と書きたいところですが、当職も永遠の十八歳という意味で若者ですので爆)、ネット社会、データ社会にあって巷に溢れる何とかファクター(笑)、トップ何とか%論文(汗)、あるいはプレス・リリース目当ての「新規性」のある研究に汲々して右顧左眄するのではなく(まさに21世紀型社会の一側面でありますが汗)、威風堂々、先人からの遺産を受け継き、そして継承していくという大河に身を置く自分の存在を意識する際のご参考になればと思っております。なお、ロビンソンは、経済学界隈では、比較的毀誉褒貶の激しい研究者と知られていると理解しておりますが、当職のロビンソン評・ロビンソン観につきましては、ご想像にお任せ致します(笑)。 

2022年10月28日:佐藤進氏、マーク・トレンブリィ氏との共同執筆の研究論文「内生的ホーミングを伴うプラットフォーム寡占:合併と自由参入に対する含意」(Platform Oligopoly with Endogenous Homing: Implications for Free Entry and Mergers)が、学術雑誌Journal of Industrial Economics掲載受理されました。内容につきましては、佐藤氏による一連のツイートをご参考いただければと存じます。共著者のお二人に深く感謝し、また担当編集者のアレッサンドロ・ボナッティ先生、並びに匿名の副編集者の方にも御礼申し上げます。

2022年8月9日:2022 Asian Meeting of the Econometric Society in East and South-East Asiaに参加し、セッション「反トラスト」におきまして、「内生的ホーミングを伴うプラットフォーム寡占:合併と自由参入に対する含意」(Platform Oligopoly with Endogenous Homing: Implications for Free Entry and Mergers)の研究報告を行いました(佐藤進氏、マーク・トレンブリィ氏との共同研究)。この場を借りまして、コンファレンス開催にご尽力されました皆様方に深く感謝申し上げます。

2022年7月27日:弊学トップページの「最新の研究成果を知る」にて、当職の関わった研究成果が一般向けに紹介されました。先日、学術雑誌Journal of Public Economicsに掲載されました研究論文「不完全競争下における転嫁・厚生・帰着(Pass-Through, Welfare, and Incidence under Imperfect Competition)」(ミハル・ファビンガー氏との共同執筆)の内容解説となります。 「政策の費用対効果を考えるための新たな枠組みの提案―生産、消費、労働など多分野への応用に期待」というタイトルでの紹介となっております。

2022年7月17日:第5回プラットフォームと流通の研究会に参加し、「内生的ホーミングを伴うプラットフォーム寡占:合併と自由参入に対する含意」(Platform Oligopoly with Endogenous Homing: Implications for Free Entry and Mergers)の研究報告を行いました(佐藤進氏、マーク・トレンブリィ氏との共同研究)。報告のたびに新たな気付きを得ておりますが、今回も同様でございました。主催の善如悠介先生、現地オーガナイザーの平尾盛史先生を始め、ご参加の皆様方に深く感謝申し上げます。

2022年6月11日:慶應義塾大学出版会様より単著『データとモデルの実証ミクロ経済学―ジェンダー・プラットフォーム・自民党』を出版させていただきました。当職が今日に至るまで行ってきた研究活動の中間報告も兼ねております。同会の永田透様からは、企画から出版まで終始一貫してお世話をいただきましたこと、謹んで御礼申し上げます。

2022529日:日本経済学会・2022年度春季大会におきまして、「内生的ホーミングを伴うプラットフォーム寡占:合併と自由参入に対する含意」(Platform Oligopoly with Endogenous Homing: Implications for Free Entry and Mergers)の研究報告を行いました(佐藤進氏、マーク・トレンブリィ氏との共同研究)。昨年後半から何回か報告をさせていただいておりますが、報告のたびに新たな気付きを得ることができて、大変ありがたいことと感謝しております。今回も、平尾盛史先生からご丁寧なご討論をいただき、今後の改訂に向けての励みとなりました。学会開催に際してのご関係の皆々様方に対しましても、この場を借りまして厚く御礼申し上げます。

2022年5月19日:京都大学経済研究所のミクロ経済学・ゲーム理論研究会での「日本経済学会報告練習会」に参加をさせていただきまして、来週の日本経済学会2022年度春季大会で報告をさせていただく予定の「内生的ホーミングを伴うプラットフォーム寡占:合併と自由参入に対する含意」(Platform Oligopoly with Endogenous Homing: Implications for Free Entry and Mergers)を報告練習させていただきました(佐藤進氏、マーク・トレンブリィ氏との共同研究) 。当職は殆どのプレゼンテーションが時間切れになってしまう性格ですが(泣)、今回、練習をさせていただきまして(15分)、本報告ではどこに注意をすべきか、その感覚の幾ばくかを掴めた感覚が致します。なお、本報告では、10分が討論者による討論の時間に当てられますが、今回は、フロアからのご質問をゆっくり取る時間としていただきまして、多くの示唆をいただきました。このような貴重な機会をお与えいただきました関口格先生に深く御礼申し上げます。 

2022年3月16日:日本政策投資銀行設備投資研究所・社会的共通資本研究会にて、「不完全競争の一般均衡モデル分析に向けた一試論」との題目で研究経過報告を行いました。「市場支配度指数アプローチ」によってマクロ経済を捉えようとする当職による年来の試みですが、今回は、ヤン・エックハウト教授によるご著書The Profit Paradox: How Thriving Firms Threaten the Future of Work (2021, Princeton University Press)サポーティング・ページから入手可能なデータも利用しながら、モデルとデータの接合を意識した内容となっております。日本のマクロデータとの関連など、課題は山積みでございますが、今後の方向性に関する貴重な示唆が得られたものと考えております。今回ご紹介をいただきました加藤晋先生を始めとして、ご関係の皆様方に深く感謝申し上げます。

2022年2月8日:研究論文「『シカゴ価格理論』が不完全競争と出会う時:共通所有アプローチ」(宝楽爾氏との共著)がEconomics Bulletin誌に掲載受理されました。本論文は、大学院初級レヴェルのミクロ経済学の教科書である『シカゴ価格理論』(2019年、プリンストン大学出版会) の第11章「産業モデル」を取り上げ、企業間の共通所有を考えることによって、財市場に不完全競争を導入する内容となっております。こうして、例えば、企業にとってはコストである賃金の変化が、資本量が変化しない短期において雇用量にどのような影響を与えるか、そして、資本量が調整される長期においてはどうなのかといった「マーシャル的」分析視点を、不完全競争を前提として活かすための枠組みを提供するものとなっております。 担当編集者のパリマル・バグ先生と一名の査読者の方に深く御礼申し上げます。 

2022年1月22日:南山大学経営研究センター・ワークショップ「マーケティング論・産業組織論・ビジネス経済学」にて、「内生的ホーミングを伴うプラットフォーム寡占:合併と自由参入に対する含意」(Platform Oligopoly with Endogenous Homing: Implications for Free Entry and Mergers)の研究報告を行いました(佐藤進氏、マーク・トレンブリィ氏との共同研究)。凡そ一か月前に、第5回アジア・太平洋産業組織論会議で報告した際には、時間の制約上、応用例として、プラットフォームの合併のみを取り上げましたが、今回は、それに加えて、自由参入に関しても言及させていただきました。なお最近出版された学部上回生、大学院1,2回生レヴェルの解説書(Bellefamme and Peitz, The Economics of Platforms: Concepts and Strategy)では、今後の研究課題の一つとして「プラットフォーム競争とホーミング」が取り上げられていますが(pp.234-5)、我々の研究はそのようなラインに沿った一貢献となっております。企画責任者の湯本祐司先生、後藤剛史先生、南川和充先生を始めてとしてご関係の皆々様方に厚く御礼申し上げます。