摩擦音と破擦音

このページで使うサンプルファイルは以下の通りです。右上に表示されるアイコンをクリックするとGoogle Driveを開くことができます。

今回は,摩擦音と破擦音のスペクトログラム上の特徴について学習します。

(1)摩擦音

まず,サンプルファイル su_shu.wav をダウンロードし,Praatで開いてみてください。ここには「ス」と「シュ」の発音が含まれています。このファイルのスペクトログラムを見てみて,摩擦音がどのような特徴を持つか観察してみましょう。

スペクトログラム上で,どの部分が摩擦に相当するか,わかるでしょうか?

摩擦成分は,かなり高い周波数域まで現れることがあります。Praatのデフォルトの設定では,周波数の最高値が5000Hzになっています。設定を変えて,より高い周波数域まで表示させてみましょう。SoundEditor上部メニューの,Spectrum -> Spectrogram settingsで,View rangeの最高値を変えてみましょう。例えば,下の図は最高値を20000Hzにしたものです。(ただし,ナイキスト周波数に注意しましょう。ナイキスト周波数を超える値を最高値に設定することは,意味がありません。)

さて,「ス」と「シュ」の子音はどちらも摩擦音ですが,調音位置が異なります。このような調音位置の違いは,スペクトログラム上ではどのように反映されているでしょうか?「ス」と「シュ」を比べてみましょう。

(2)Center of Gravityの計測

上ではスペクトログラム上の特徴を観察しました。注目のポイントは、摩擦区間において、縦軸上のどのあたりが濃くなっているか(つまり、エネルギーがどのあたりの周波数域に集中しているか)です。これを定量的に捉えるにはどうしたらよいでしょうか。一つの方法として、Center of Gravity(重心、加重平均、略してCoG)を計測するというものがあります。

まず、摩擦区間における時間軸上の中心付近40 ms(0.04秒)を切り出しましょう。下の図のように、Sound Editor上で摩擦の中心付近約40 msの区間を選択します(これを正確にやるには、スクリプトが便利です。以下では大雑把に約40 msを選択しています。)

つづいて、上部メニューから File > Extract selected sound (windowed)... を選択し、Window shapeについてHammingを選択(つまり、Hamming windowを用いる)して切り出します。

これにより、オブジェクトウィンドウ上に切り出したSoundオブジェクトが出来上がります。つづいて、オブジェクトウィンドウ上でこのオブジェクトを選択した状態で右側に現れるコマンドからAnalyse spectrum > To Spectrum...を選ぶと、Spectrumオブジェクトが出来上がります。このオブジェクトを選択した状態で、右側に現れるコマンドからQuery > Get centre of gravity... を選ぶことで、CoGを計測することができます。(以上の方法はLi 2008を部分的に参考にしています。)

CoGを含む摩擦音の主要な音響的パラメターは、Spectral Moment Analysisという分析手法を用いて計測されることがあります(Forrest et al. 1988)。インターネットで検索すると、この分析を行うためのPraatスクリプトをいろいろと見つけることができます。

(3)摩擦音と声帯振動

次に,サンプルファイル su_zu.wav を使って,無声と有声の摩擦音を比べてみましょう。どのような違いがあるでしょうか?

(4)摩擦音と破擦音

最後に,摩擦音と破擦音の比較をしてみます。サンプルファイル su_tsu.wav のスペクトログラムを見てみましょう。また,usu_utsu.wav を利用することで,母音間における摩擦音と破擦音の違いを見てみましょう。

日本語のザ行音は摩擦音で現れることもあれば,破擦音で現れることもあります。サンプルファイル uzu.wav は「ウズ」を何回か発音してみたもので,摩擦音で発音したものもあれば破擦音で発音したものもあります。聞いてみて,どれが摩擦音でどれが破擦音かわかるでしょうか?また,スペクトログラム上で両者を見分けることができるでしょうか?

[文献案内]

Maekawa(2010):音声コーパスを用いた日本語のザ行音の分析

参考文献

Forrest, K., Weismer, G., Milenkovic, P., & Dougall, R. N. (1988). Statistical analysis of word‐initial voiceless obstruents: preliminary data. The Journal of the Acoustical Society of America, 84(1), 115-123.

Li, F. (2008). The phonetic development of voiceless sibilant fricatives in English, Japanese, and Mandarin Chinese. PhD dissertation, Ohio State University.

Maekawa, K. (2010). Coarticulatory reinterpretation of allophonic variation: Corpus-based analysis of/z/in spontaneous Japanese. Journal of Phonetics, 38(3), 360-374.