名古屋大学 人文学入門I(第7回) 2020年度(1/4)

講義題目:「音声学・音韻論からみた日本語のバリエーション」(1/4)

2020年6月2日、担当:宇都木昭

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※このページは、オムニバス授業として開講される「人文学入門I」の第7回の授業解説として作成したものです。

※授業終了後に受講生から出た質問とそれらへの回答を、こちらのページでまとめています。

1. はじめに

この授業はオンデマンド型で、ウェブページを読み進めながら、皆さん自身のペースで学習していただきます。ウェブページは複数のページから構成されています(各ページの最後の「次のページへ」というリンクを押すと、次のページに移動します。途中に挿入されているいくつかの動画もあわせて視聴してください。最初と最後には、担当教員自身による動画があります。

担当教員(宇都木)によるイントロ動画

皆さんはきっと、まわりの人の日本語の発音、あるいはメディアに出てくる人の日本語の発音を聞いて、自分と何か違うと思った経験があると思います。同じ言語ひとつとっても、発音は人によって少しずつ、ときには大きく異なります。皆さん自身と親の世代、祖父母の世代での違いを感じることもあるでしょう。また、大学に入っていろいろな地域出身の人と出会い(今はオンライン授業ばかりなので、なかなか出会えないかもしれませんが)、地域差を実感することもあるかもしれません。皆さんは、そのような世代差や地域差について、具体的にどこがどう違うのか説明できるでしょうか?なんとなく違うと感じても、それを具体的に説明することは容易ではありません。この授業の一つのねらいは、発音に関する具体的な事例をいくつか取り上げることで、具体的に何がどう違っているのかを理解することです。

この授業のねらいはもう一つあります。発音に関することは、言語学の中でもとりわけ、音声学と音韻論という分野の中で扱われています。上に述べたような具体的な事例、およびそれと関わる概念や分析方法を知ることで、音声学・音韻論という分野の一端を知ってもらうことが、この授業のもう一つのねらいです。

さて、この授業では、以下のトピックを扱います。

  • ア段+イ
  • ガ行鼻音
  • 国際音声記号
  • アクセント
  • 複合語アクセント
  • 有声破裂音
  • 音声の音響分析

2. 名古屋方言の事例から

まず、以下の名古屋方言の発音を聞いてみましょう。話者は河村たかし名古屋市長(1948年生まれ、名古屋市東区出身、男性)です。全部聞くと長いので、14:06から2分間ぐらいのところを聞いてみてください。そして、市長の発話の中から、名古屋方言の音声上の特徴と思われる箇所を挙げてみましょう。

名古屋市長定例記者会見(平成29年9月25日)