7. Praatの基本操作(2):TextGridの利用

Praatには様々な種類のオブジェクトがあります。オブジェクトというのは,オブジェクトリストに現れるもので,今まではSoundというオブジェクトのみを扱ってきました。ここでは,TextGridというオブジェクトを新たに利用してみます。

TextGridというのは,簡単にいえば,Soundの特定の時間をマークし,そこに文字列で情報を付与するものです。たとえば,前回学んだVOTを例にとってみましょう。Soundのどこからどこまでが+VOTかを記録したいというとき,TextGridが活用できるのです。

7.1. TextGridオブジェクトをつくる

TextGridオブジェクトをつくるための最も一般的な方法は,Soundオブジェクトからつくるというものです。まずSoundオブジェクトを一つ用意しましょう。たとえば,前回つかったta-da.wavを利用してみましょう。

まず,Soundオブジェクトを選択します。そして,右側のボタンのうちのAnnotateを押し,To TextGrid...を選択します。以下のようなウィンドウが現れるはずです。

ここで,All tier names:の部分を,たとえば, token VOT にかえ,Which of these are point tiers?の部分は空欄になるようにしてください。

これは,tokenとVOTという二つの層(tier)をつくり,そのうちのいずれもpoint tierではないという意味です。

このようにしてOKを押すと,オブジェクトリストにはTextGridオブジェクトが加わります。

7.2. TextGridの編集

さて,SoundオブジェクトとTextGridオブジェクトの両方を同時に選択し,右側のボタンからEditを押してみてください。以下のようなウィンドウが現れるはずです。

スペクトログラムの下に層が二つできたのがわかると思います。ここで例えば,最初のtaの範囲を選択し,Enterキーを押してみましょう。

このように,token tierにおいて,選択した範囲の始端と終端に境界が挿入されるはずです。この境界で挟まれた区間には,テキストを入力することができます。たとえば,ta1と入力してみましょう。

同様にして,6つの発音それぞれ(これを「トークン」と呼ぶことがあります)に対して境界をつけ,テキストを入力してみましょう。

今度は,2番目の層のどこかをクリックし,赤い指印が2番目の層を指すようにしてみてください。そして,今度はVOTの区間をラベルして見ましょう。必要に応じてスペクトログラムを拡大するとやりやすいかもしれません。

このようにして,全てのトークンに対してVOTのラベルをふってみましょう。

TexGridオブジェクトを用いると,このようにして音声に対してラベルをふり記録をすることができます。

7.3. TextGridの保存と読み込み

記録したTextGridは保存しておくと,後で改めて分析をするときに便利です。

上で編集したTextGridは閉じてしまってもかまいません。情報はTextGridオブジェクトの中に残っています。このTextGridオブジェクトを保存すれば,後で改めて開くことができます。

オブジェクトリスト上のTextGridオブジェクトを選択しましょう。そして,上部メニューからWrite -> Write to text file...を選択します。これによって保存することができます。

保存したTextGridを読み込むときは,同じく上部メニューからRead -> Read from file...を選択し,保存してあるTextGridを選択します。