研究紹介

タンパク質,コロイド,ガラスなどに代表されるソフトマターでは,物質としての機能を理解する上で幾何構造の階層性が極めて重要になります.原子 レベルのミクロ構造から,それらのクラスターで構成されるメソスケールまでが,異なる階層間で複雑に関連することで,多彩な機能をマクロなスケール として実現しています.よってソフトマターに現れる機能を理解し制御するためには,機能発現を引き起こす階層的幾何構造を適切に記述することが 不可欠になります.しかしながら,既存の手法の多くは特定のスケールのみに着目しており,本質的に階層構造を扱える記述子は未だ開発されていま せん.実はこの問題はソフトマターに限らず,マルチスケール性に特徴づけられる現代科学全般に課せられた大きな課題にもなっています.

本研究チーム(CREST TDA)ではトポロジー,表現論,確率論,統計学を融合させた位相的データ解析(Topological Data Analysis: TDA)手法を開 発し,データ科学における新たな基盤技術を構築します.数学的手法の中心はパーシステントホモロジーと呼ばれる概念であり,データの「形」を定量 的に記述する4つの理論

1. パーシステント逆問題理論

2. 一般化パーシステント加群理論

3. ランダムトポロジー理論

4. 位相的統計理論

を確立します.

また,本手法をソフトマターの構造解析へ応用し,高機能ガラス材料設計や,疾患関連タンパク質のフォールディング構造解析といった挑戦的基礎 研究を実施します.