トリクロロ酢酸が多く含まれる飲料水を飲むとどんな健康被害が考えられる?
はい。トリクロロ酢酸(TCA)が多く含まれる飲料水を長期間飲み続ける場合は、主に肝臓への影響が問題になります。 ただし、「多い」の程度によって健康リスクは大きく違います。
まず、現在の日本の水道水質基準では、トリクロロ酢酸は0.03 mg/L以下です。
摂取状況
考えられる影響
基準値を少し超える程度を短期間
通常、直ちに症状が出るとは考えにくい
高濃度を長期間
肝臓への負担・肝機能への影響が中心
非常に高濃度
体重減少、代謝異常、肝臓障害など
長期間の高曝露
動物実験では肝腫瘍が確認されている
動物実験では、TCAの毒性の標的として特に肝臓が繰り返し確認されています。肝重量の増加、肝組織の変化、肝機能関連の変化などが報告されています。
また、マウスでは肝臓腫瘍が確認されています。ただし、人間でTCAを飲んだことによってがんが増えるという直接的な疫学証拠は不足しています。WHOは人について発がん性を確定しておらず、IARCもGroup 3(人に対する発がん性を分類できない)としています。一方、米EPAは動物実験などを総合して「likely to be carcinogenic to humans」と評価しています。
もし今回お尋ねになったのが、横浜市で9月11日にトリクロロ酢酸が基準値を超えた件についてでしたら、具体的には0.04 mg/Lが検出されています。これは基準値0.03 mg/Lの約1.33倍です。
この0.04 mg/Lについて横浜市は、小児が1か月間、毎日1 L飲み続けても健康に影響がないとされる亜急性参照値0.06 mg/Lを下回っているとしており、現時点では健康影響はないとしています。
したがって、0.04 mg/Lという今回の濃度を数日~短期間飲んだことと、TCAによる慢性的な肝障害・発がんリスクを同列に考える必要はありません。
もし今回の横浜市の件についてお聞きになったのであれば、**「0.04 mg/Lの水を実際に何日間、1日何L飲んだら問題になるのか」**を、成人の場合について具体的に計算してみましょう。
災害時の水の保存基準では人は3リットル/日の水が必要とされるとしています。3Lで計算をお願いします。
はい。1日3 Lをすべてトリクロロ酢酸(TCA)0.04 mg/Lの水から摂取した場合で計算します。
TCA濃度:0.04 mg/L
飲水量:3 L/日
したがって、
0.04 × 3 = 0.12 mg/日
つまり、1日に 0.12 mg(120 µg)のTCAを摂取する計算です。
体重60 kgの人なら
120 µg ÷ 60 kg = 2.0 µg/kg体重/日
一方、日本の食品安全委員会が設定したTCAの耐容一日摂取量(TDI)は6 µg/kg体重/日です。
したがって、
2.0 ÷ 6 = 約33%
です。
つまり、60 kgの人がTCA 0.04 mg/Lの水を毎日3 L飲み続けても、TCAの摂取量はTDIの約1/3です。
体重
0.04 mg/Lを3 L飲んだ場合
TDI 6 µg/kg/日に対する割合
50 kg
2.4 µg/kg/日
40%
60 kg
2.0 µg/kg/日
33%
70 kg
1.71 µg/kg/日
29%
80 kg
1.5 µg/kg/日
25%
したがって、0.04 mg/Lという濃度で3 L/日飲むこと自体は、TDIから見る限りかなり余裕があります。
なお、WHOの現在の飲料水ガイドライン値は0.2 mg/Lで、60 kg成人が2 L/日飲むことを前提に設定されています。 日本の水道水質基準は0.03 mg/Lです。
ただし、ここで一つ重要なのは、「3 Lの水を飲む」ことと「3 LすべてがTCA 0.04 mg/Lの水」という前提はかなり厳しい条件だということです。
もし今回の横浜の0.04 mg/Lが何日間続いた場合に、実際に健康上問題になる可能性が出てくるのかを知りたいのであれば、1日・1週間・1か月・1年間の累積摂取量まで計算すると、かなり分かりやすくなります。
お願いします
はい。では、今回の横浜市の0.04 mg/Lを前提に、1日3 Lを飲んだ場合を「1日・1週間・1か月・1年間」で見てみます。
横浜市が9月11日に検出したTCAは0.04 mg/Lで、水質基準0.03 mg/Lを超えています。一方、市は小児の1か月間の亜急性参照値0.06 mg/Lを下回っていると説明しています。
0.04 mg/L × 3 L = 0.12 mg/日
つまり、
120 µg/日
です。
食品安全委員会が設定したTCAのTDIは6 µg/kg体重/日です。これは、非発がん影響・発がん影響の両方を考慮して設定されています。
例えば体重60 kgなら、
6 × 60 = 360 µg/日
がTDIです。
したがって今回の水3 Lから摂取する120 µgは、
120 ÷ 360 = 33.3%
となります。
期間
3 L/日で摂取するTCA
60 kgの場合のTDI累積量
比率
1日
120 µg
360 µg
33%
1週間
840 µg
2,520 µg
33%
1か月(30日)
3,600 µg
10,800 µg
33%
1年間
43,800 µg(43.8 mg)
131,400 µg
33%
ここで大事なのは、TDIは「1年間でこの量まで」という累積許容量ではありません。
「毎日この量を生涯にわたって摂取しても、健康影響が生じる可能性が低い」と考えるための1日当たりの基準です。
したがって、
0.04 mg/Lの水を3 L飲み続けたら、1か月でTDIを使い切る
という意味ではありません。
むしろ60 kgの人なら、毎日飲んでもTDIの約3分の1ということです。
ここはかなり重要です。
今回の0.04 mg/Lを1か月間、毎日3 L飲んだとしても、TCAだけを理由に健康被害が起こると考える必要はありません。
横浜市が採用している「小児が1か月毎日1 L飲み続けても健康影響がない」とする亜急性参照値は0.06 mg/Lです。今回の0.04 mg/Lはその**約67%**です。
しかも、これは小児・1 L/日という条件で設定された値です。
したがって、成人が3 L飲む場合でも、単純に「3倍だから危険」とはなりません。毒性評価では体重当たりの摂取量で考える必要があります。
今回の横浜市の件は、「0.04 mg/Lだから安全」という話ではありません。
基準値:0.03 mg/L
実測値:0.04 mg/L
亜急性参照値:0.06 mg/L
という位置関係です。
つまり、
水道水質基準は超えたが、短期間の健康影響を判断する参照値までは超えていない
という状態です。横浜市も現在、浄水処理の強化と水道施設内の水の入れ替えを行っているとしています。
そして今回の原因については、横浜市は大雨によって原水中の有機物が増え、塩素消毒時のTCA生成量が増えた可能性を挙げています。
結論としては、0.04 mg/Lの水を数日~1か月飲んだことで、TCAによる肝障害や発がんを心配する必要性はかなり低いと考えてよいです。
ただ、もし「3 L/日」というのが実際に普段飲んでいる量であれば、次に、**体重を基準に「TDIの何%になるか」と「横浜市の0.06 mg/Lの亜急性参照値を3 L/日でどう考えるべきか」**を比較すると、さらに正確に判断できます。
「TDIの何%になるか」と「横浜市の0.06 mg/Lの亜急性参照値を3 L/日でどう考えるべきか」を比較して.
はい。ここは**「TDI」と「横浜市の0.06 mg/Lという亜急性参照値は、何を意味しているのか」**を分けて考えると、かなり分かりやすくなります。
横浜市が9月11日に検出したTCAは 0.04 mg/L、水質基準は 0.03 mg/L、亜急性参照値は 0.06 mg/Lです。
また、食品安全委員会のTCAのTDIは 6 µg/kg体重/日です。
0.04 mg/Lの水を3 L/日飲むと、
0.04 × 3 = 0.12 mg = 120 µg/日
です。
体重別にTDIと比較すると、
体重
TDI
120 µg/日のTCA
TDIに対する割合
50 kg
300 µg/日
120 µg
40%
60 kg
360 µg/日
120 µg
33%
70 kg
420 µg/日
120 µg
29%
80 kg
480 µg/日
120 µg
25%
つまり、例えば60 kgならTDIの約1/3です。
しかもTDIは「そこまで摂取すると危険」という限界値ではありません。食品安全委員会が、動物実験などから得られた毒性データに不確実係数を適用して設定した、生涯にわたって毎日摂取しても健康への悪影響が生じる可能性が低い量という性格の値です。
ここが少し注意が必要です。
横浜市が説明している0.06 mg/Lは、
小児が1か月間、毎日1 L飲み続けても健康に影響がないとされる濃度
として国が算出したものです。
したがって、単純に
0.06 mg/L × 3 L = 0.18 mg/日
と計算することはできます。
つまり3 Lなら、
180 µg/日
になります。
しかし、これは「0.06 mg/Lなら3 L飲んでも安全」という意味ではありません。
なぜなら、0.06 mg/Lという参照値そのものが「小児・1 L/日・1か月」という条件で設定された濃度だからです。
例えば60 kgの成人なら、
=120 µg/日
= 2.0 µg/kg/日
です。
TDIは6 µg/kg/日なので、
2.0 ÷ 6 = 33%
です。
一方、0.06 mg/Lの水を3 L飲むと、
0.06 × 3 = 180 µg/日
60 kgなら、
180 ÷ 60 = 3 µg/kg/日
です。
これはTDI 6 µg/kg/日の
50%
です。
水中TCA
3 L/日
60 kgの場合
TDIに対する割合
0.03 mg/L
90 µg
1.5 µg/kg/日
25%
0.04 mg/L(今回)
120 µg
2.0 µg/kg/日
33%
0.06 mg/L(亜急性参照値)
180 µg
3.0 µg/kg/日
50%
0.12 mg/L
360 µg
6.0 µg/kg/日
100%=TDI
ここから見ると、**今回の0.04 mg/Lを3 L飲んでも、60 kgの成人ではTDIの33%**です。
これは別の安全評価だからです。
食品安全委員会のTDIは、主として長期間・生涯にわたる摂取を想定した評価です。
一方、横浜市の0.06 mg/Lは、水道水質基準を一時的に超過したときに、短期間(1か月)の健康影響を判断するための亜急性参照値です。
つまり、
TDI → 長期間の摂取を評価
0.06 mg/L → 今回のような一時的な基準超過を評価
という違いがあります。
かなり明確に言うと、
理由は3つあります。
① 0.04 mg/Lは0.06 mg/Lの67%
0.04 ÷ 0.06 = 約67%
です。
② 60 kgならTDIの約33%
3 L/日飲んでも、
2 µg/kg/日
であり、TDI 6 µg/kg/日の約3分の1です。
③ 横浜市自身が0.04 mg/Lについて「飲用いただいても健康に影響はありません」としています。
現在は浄水処理を強化し、水道施設内の水の入れ替えを進めています。
前の回答では、私が「3 L飲む場合でも単純に3倍とは考えない」と少し曖昧に説明しました。
摂取量そのものは、当然3倍になります。
0.04 mg/L × 1 L = 40 µg
0.04 mg/L × 3 L = 120 µg
です。
重要なのは、その120 µgを体重当たりに換算してTDIと比較することです。
そして、もし実際に**「1日3 Lの水を飲む人が、今回の0.04 mg/Lの水を1か月間毎日飲んだ場合」を想定するなら、私は過度に心配する必要はない**と判断します。
なお、今回の水質基準超過は9月11日の検査結果に基づくものなので、9月14日現在の最新の検査値がどうなっているかは別途確認したほうがよいです。横浜市は濃度が今後低下するとしています。