葉緑体の膜を構成する「脂質」のはたらきに着目しています。
葉緑体の膜を構成する脂質分子は、多様な機能を担っています。例えば、葉緑体の内部に発達するチラコイド膜では、脂質分子が脂質二重層を形成し、光合成に関わるタンパク質を外側から支持する「足場」、「化学反応の場」、プロトンなどのイオンの濃度勾配を保つ「界面」などの働きを担っています。
チラコイド膜脂質は、異なる物性をもつ複数の種類の脂質から成り、脂質の種類によって異なる機能を担うことが示唆されてきました。しかし、脂質特有の解析の難しさもあり、それぞれの脂質が担う具体的な機能については、まだまだ多くの謎が残されています。
光合成における脂質の機能の解明に取り組んでいます。
近年の構造解析により、光合成電子伝達反応を担う光合成複合体の内部にも「構成要素」として脂質分子が大量に含まれることがわかり、光合成複合体の周囲からだけでなく内部でも複合体の機能に寄与することが明らかとなってきました。
チラコイド膜の脂質各種を生合成できなくなった植物(変異株)を用いて光合成について解析すると、欠損する脂質の種類によって光合成への影響が異なります。我々は、チラコイド膜脂質変異株の解析結果や各脂質分子の特徴や分布などに基づき、光合成におけるチラコイド膜脂質の機能を見出すことを目指しています。
葉緑体形成における脂質の機能の解明に取り組んでいます。
植物が葉緑体を作り、円滑に光合成を開始するためには、チラコイド膜の構成要素(タンパク質、色素、脂質など)を作り、複合体を組み立て、光合成の一連の反応系を活性化させる必要があります。我々は、第一にチラコイド膜の脂質を合成し、チラコイド膜の土台を構築することが重要であると考え、葉緑体形成における各脂質の機能を明らかにすることを目指しています。
シロイヌナズナ(被子植物)
シアノバクテリア Synechocystis sp. PCC 6803株
酸素発生型光合成細菌シアノバクテリアの膜は、葉緑体とよく似た脂質組成でできています。