千葉県屛風ヶ浦
千葉県九十九里浜
千葉県小櫃干潟
海岸砂丘とは、砂浜海岸に発達した砂の高まりのことを指します。砂の供給源は陸域で発生した土砂災害由来のものと岩石海岸が侵食されたものに大別されます。土砂災害由来のもは河川の運搬作用によって河口へ、その後、沿岸流によって海浜へ到達します。岩石海岸由来の砂も沿岸流により海浜へ供給されます。海浜に流れ着いた土砂は太陽熱または風によって乾き、それが風によって内陸へと輸送されます。輸送された砂は植物または海岸漂着物によって捕捉され、砂丘が形成され始めます。植物があるところでは、埋もれた植物は芽を出し、また埋もれるというサイクルが繰り返され、砂丘が垂直方向へ成長していくとされております。高波や津波の襲来時には砂丘や海浜が破壊され、砂が沖合へと移動します。また砂の供給がある海岸では、徐々にこの砂が波風により砂丘や海浜に戻り、回復していきます。この砂の動態は、Beach dune systemと呼ばれます。
高波・津波の波力を減殺
多くの生き物にハビタットを提供
濾過・貯水
この砂が形成する一見厳しい環境に適応した植物が存在します。これらの植物は堆砂や塩分、強い太陽光に対する耐性を持っております。海岸砂丘生態系の一次生産者である海岸砂丘植物は、国内に約80種ほど存在します。種子は海水に浸かっても発芽する能力を持ち、海流散布により種子を分散することができます。
海から吹く風により運ばれてくる砂や塩は、陸地を進むに従って、減少します。この環境勾配に従って、植物達が帯状に棲み分けを行っているように見えることから、この植生構造は成帯構造と呼ばれます。成帯構造が発達した海岸砂丘は、健全な砂の動態があること意味し、健全な生態系の一つの指標になります。
この特異的な環境に生育する海岸砂丘植物の多くは、下記に示すような開発の影響により生育地である砂浜海岸が消失または縮小することで、絶滅の危機に瀕してます。
1830年から2005年に鳥取県の湖山砂丘の土地利用は大きく変化しました。全国の砂浜や海岸砂丘の多くは、このような開発の影響を受け、原生の姿を見れる海岸はありません。森林、農地や湿地といった他のハビタットと比べても開発率が高いと言われてます。
海岸侵食の進行は、国土の減少を意味します。海岸侵食の問題は世界中で指摘されてます。沿岸や流域での開発の影響による土砂動態の変化が侵食を進める要因の一つですが、海水面上昇も侵食を促進する原因となっております。そのため、早急に海岸侵食の進行を止めるまたは和らげるための対策を講じる必要があります。そのためには、沿岸部だけでなく、砂の供給源を意識して、山地から海岸に至る流域全体での取組(森林・土砂・土地利用管理等)が重要になります。