劣化ウラン弾とは何?(Depleted Uranium Tipped Shells)
戦車や建築物、また地中深くある構造物などを効果的に破壊するために使われている兵器です。1991年の湾岸戦争、1999年コソボ、2001年アフガニスタン、2003年イラク侵略で大量に使用されました。
金属ウランは、鉛より1.7倍も重く、また硬い金属です。これを弾頭の芯に使うと、戦車などの分厚い装甲や壁をたやすく貫通します。(上図参照)
水俣病が水銀汚染で引き起こされているように、ウランは重金属特有の、人体に強い化学的毒性を持つといわれます。これが呼吸や飲食、あるいは傷口などから体内に入ると臓器を侵します。
湾岸戦争で使用された劣化ウランの量は、米国防総省によれば320トンです。この物質の半減期は実に45億年です。そして、アフガニスタンに対しても650トン以上使用されたと想定されています。そして、2003年のイラク侵略には2200トンが使われたと言われます。バンカーバスターにも使用されました。バンカーバスターには数トンのウランが弾頭に使われ、何層ものコンクリート壁を打ち抜き、深く到達してから効果的に爆発させることができます。アフガニスタンにおける調査では、爆撃のあったところでは例外なく人々は病気になっているということです。2003年のイラク攻撃では、米軍大佐の証言によれば、都市部に対する攻撃にも、健康被害の認識はありながらも、破壊効果のみで使用の判断をしたということです。事実、バグダッドの街角に劣化ウラン弾がたくさん転がっていたという報告が多くなされています。絶大な破壊力を持つこの兵器は、スーパー兵器として湾岸戦争以降兵器市場で注目の的になりました。
イラクなどで使用された対戦車砲などの弾丸は、着弾したものは気化して酸化ウランとなって広がり、また地中に染み込みます。目標から外れた多くの砲弾は、地に落ちたり、地中深く潜り込んでしまします。バグダッドなどの都市部でもこれらはゴロゴロ落ちていると報告されています。ウラン金属は水に溶けますので、これが地下水を汚染します。半減期が45億年ですから、これらは事実上永遠の循環を続け、この周辺に住む人々を殺し続けることになります。戦車の残骸ではとりわけ放射能が強く、何も知らない子ども達が残骸の内外で遊んでいる写真を良く見かけます。彼らには今後障害の起こる可能性が非常に高いといえます。大量破壊兵器を持っていると理由付けして始めたこの戦争で米英は結局それを見つけることはできなかったわけですが、イラクを大量破壊し大量殺戮を続けるこの劣化ウランの海にしたのは、他ならぬ侵略側ということになります。当然これらを使用した国々はこれを速やかに回収撤去する責任があるでしょう。
アメリカは湾岸戦争でこれを初めて実戦に使用したということになっています。この兵器を使用すればどうなるかという影響については、アメリカ国防省は当然認識はしていましたが、前線の兵士たちには殆どこの事実を知らせていませんでした。イラクに侵攻した連合軍兵士たちや埃にまみれた兵士たちは、何にもしらずこれに汚染されました。そして後に問題になったわけですが、これが湾岸戦争症候群として有名になったものです。直接戦争中に死んだ米軍兵士は同士討ちなどで300名弱でしたが、2003年のイラク攻撃までの12年間に、湾岸戦争の復員兵の死傷率は40%近くの26万人に達したということです。信じがたい数字ですが、屈強な若者であった彼らの1万人が死亡したと言うことです。これが、湾岸戦争が第二の核戦争であったことの証であり、この兵器のビッグショーの結果です。 そして、第2、第3、第4の核戦争を続けているのです。使用された量や場所を考慮すると、2003年のイラク攻撃の結果として生起するこれからの惨状は想像するに余りあるものがあります。イラクやアフガニスタンは目に見える破壊や殺戮だけでなく半永久的にウランの毒性と放射線にさらされ続けることになるのです。もちろんウランの粉塵に国境はありませんから、薄く広く世界中に広がって世界的にも癌の発生率は上がっていくことでしょう。
このように、核廃棄物のゴミを転用することによって、卓越した貫通力、衝撃による高温燃焼、重金属毒性、発ガン性、永久持続性を持ち、これらが使用された場所に居る人々を殺傷し、長期間にわたって住民を疲弊させる効果などがある劣化ウラン弾ですが、それゆえ、使用する国々としては、その使用に障害になるような情報を公表したり認めたりすることができない理由ともなっているのです。