YouTubeはコロナ禍で得た、自分らしさを発揮する大事なプラットフォーム
―コロナの影響は大きかったですか?
しばらくはリモート収録になったお仕事もありました。また、今でも大勢でのスタジオ収録はできなくなりましたね。今までだったら20人くらいスタジオに入って一斉に掛け合いを録っていたのですが、今は少人数に分けて収録をしています。マイク前の立ち回り等はやり易くなりましたが、話す相手が別収録の場合は、想像で補う必要があります。
―それは会話をする相手がまだ録っていなくてその場にもいない状態で、自分の声だけ入れていくということですか?特に何も返ってこない?
返ってこないですね。たまにテストの時に、すでに収録している方の声を聴かせていただけることもありますが、やはりその場で掛け合うってすごく大事で。掛け合ってみて初めて、自分が用意してきたお芝居と全然違うものが生まれたり、お互いに引き出されるものがあるので、それはすごく寂しいなと思います。
―コロナ禍でYouTubeの動画投稿も始められましたが。
見られちゃいましたか、恥ずかしい(笑)!
コロナ禍になってから、声優さんでもYouTubeを始められる方が増えてきて。やっていいのかマネージャーさんに確認したら、「もう動いている人はとっくに動いている」と言われて(笑)。ずっとやりたいですって言っていたので、すぐに手続きをしてチャンネルを作りました。
―自分で編集しているのですか?
自分で編集しています。自分でやっているから一カ月とか二カ月とか時間がかかっちゃって。編集作業も好きなんですけど、なんかね…なかなかスイッチが入る時と入らない時があって、継続力が弱いです(笑)。出していない動画があると「編集しなきゃ」って日々追われてます。
―今後やってみたい動画とかはありますか?
「踊ってみた」はずっとやりたいんですけど、曲や振り付けに権利があるのでなかなか難しいです。いま上げているものは自分で歌って、自分で振り付けして、みたいな感じでやっています。YouTubeは今後ももっとやっていきたいです。コロナ禍の変化で一番大きいことかもしれない。私らしさを発揮するすごく大事なプラットフォームになっていて、「やっと土師亜文の面白さが世界に(笑)」って友達も喜んでくれてます。良かったー!
早稲田に来た一番の理由は色んな人に会うため
―声優を目指したきっかけは?
歌って踊ることも喋ることも好きでどっちがいいかなと思って、ミュージカルサークルとアナウンス研究会、両方に入りました。就活の時期までに道を決めようと思って、1年生の頃はオーディションを受けまくってましたね。
歌や踊り、喋ることが両方できるところを探していたんですけど、「女優」や「タレント」というのがしっくりこなくて。審査の中で「いい声だね」って褒めていただけることもあったので、よしと思って受けたのが声優アワードのオーディションでした。そこで受かったので「やった、じゃあ声優にしよう!」って。いくらやりたいと思っても、実際に自分が何に向いているのか、どんな才能があるのか分からなかったので、呼ばれたところに行こうと考えていました。
声優アワード新人発掘オーディションはドラフト式で事務所が選ぶ方式で、養成者特待生として費用が免除になるんです。親は、応援はするけどお金は出さないよというスタンスだったので、タダで通えるならありがたいと思って、大学2年生のときはダブルスクールをしていました。
―早稲田大学を選んだ理由はなんですか?
最初は専門学校に行こうと思っていて、それを進路相談の時に高校の先生に伝えたら「役者になりたいのなら、いろんな人に会って人間力を磨きなさい」と言われました。養成所や専門学校もいいけれど、せっかくならもっと大きい世界を見てきなさいと言われて、それなら、なるべく色々な人がいる大学に行こうと決めました。もちろん演劇映像コースがあるというのも1つですが、早稲田に来た一番の理由は人に会うためだし、今この10年経っても一番の財産は知り合えた人たちだなって思います。すごい人がたくさんいるし、みんな卒業後も色々な活躍をしていますよね。
―声優活動と学業の両立は大変ではなかったですか?
学生の頃はそこまでたくさんお仕事をしていたわけではありませんでした。でも、唯一の生放送の番組がゼミと被るという状況になって。
3年生でデビューしたてのときに、毎週木曜日の夜に生放送の番組があって、その時間がゼミと被ってしまって。どうしようと思って先生に相談したら、「出席しない代わりに特別課題を課す。でもこのことはみんなには決して言わないように」と言われて、申し訳ないなと思いつつ、行ける時は遅れてもなるべく授業に顔を出していたんですけど、別の授業でゼミの同期に「この間番組見たよ!」って言われて驚いて。なんで知っているのか聞いたら「先週の授業中に先生が言い出してみんなで見たんだよ」って言われて「うそ!先生、内緒って言ったじゃん!」と。高橋せんせー(笑)。自由なゼミで助かりました。
―両立するための工夫などは?
2年生の養成所生のときは1日にパンパンに詰め込んでいました。朝は養成所に行って、昼に授業出て、夕方はサークルみたいな。そのときは超忙しかったけど、それぞれの分野で自分のHPのメーターを使い分けていました。「声優養成所の土師亜文」で100使って、早稲田着いた瞬間に「早稲田生の土師亜文」として体力とメンタルを100に回復して授業を受けて、一番楽しみだったサークルの前にまたぶーんって100に回復させてました。大変でしたが、すごく充実していたなぁと思います。弊害としては、すぐに帰ってしまうので養成所の中でなかなか友達ができなかったという…。