2006年

設立準備フォーラム

ヴォーリズ建築文化全国ネットワーク設立へ

【滋賀報知新聞■平成18年2月4日(土)第14328号】

精神の保存・再生をアピール =県内外の関係団体・個人フォーラムに集う=

▲ネットワーク設立に向け開催されたフォーラム――近江兄弟社学園教育会館で――◆東近江・東近江市◆

 ヴォーリズ建築の保存・再生に向けた全国規模のネットワークづくりをめざす「ヴォーリズ建築文化全国ネットワーク設立準備会フォーラム」が、このほど近江八幡市市井町の近江兄弟社学園教育会館で開催された。 フォーラムには、県内外のヴォーリズ建築に関わる活動を続けている団体や愛好者ら約八十人が参加。講演や活動報告などで情報交換を行い、ネットワーク設立のアピールを、全国に向けて発信した。 呼びかけ団体の一つ近江兄弟社学園の池田健夫理事長による歓迎のあいさつのあと、国の支援を受けて全国から寄せられた寄付金などを活用して歴史文化や自然環境などの保護・調査活動を行っている財団法人日本ナショナルトラストの米山淳一事務局長は、「何とかして、ヴォーリズの精神を後世に伝えるため、法人で取り組んでいる伝統家屋・鳴き砂・機関車などのこれまでの全国ネットワークに、ヴォーリズ建築を新たに加え、みなさんと力を合わせながらネットワークづくりに取り組んでいきたい」と、ネットワーク設立への経緯と主旨を説明した。 また、呼びかけ人の一人である大阪芸大の山形政昭教授がプレゼンテーション「ヴォーリズ建築の再生を考える」で、「ヴォーリズ建築は居心地のいい居場所を与えてくれる。身体的だけでなく精神的にも安楽をあたえてくれる」と、全国各地で再生・継承されているヴォーリズ建築を紹介しながら、自然との融和・和洋並用・新しいものと伝統・地域へのなじみなど、「共生」を常に図っていたという他の建築家との違いを強調した。さらに、「修理・修復しながらもたせるというのは日本建築の伝統でもあり、伝承によってさらに価値を高めることができる」と指摘して、「ヴォーリズ記念病院(近江八幡市北之庄町)に保存が決まったツッカーハウスも手を加えれば保存できる」と、専門家としての見解を改めて示した。そして、「機能だけでなく、ものを伝える伝承する力、ヴォーリズの精神性が込められた総合的なあり方をしている。複雑な価値を解きほぐすことが建物を理解することになる」と締めくくった。 活動報告では、財団法人近江兄弟社、近江八幡市文化課、一粒社ヴォーリズ建築事務所、NPOヴォーリズ建築保存再生運動一粒の会、旧水口図書館・稚木の会、NPOホホコミユニティ(彦根市)、軽井沢ナショナルトラスト(長野県)、NPOアメニティ2000(兵庫県西宮市)、ひょうごヘリテージ機構、京都YWCAなどの団体や、ヴォーリズ建築居住者(彦根市)や居住経験者(大阪府)などの個人が、活動や思い出などを報告した。 また、ツッカーハウス・大王松を守る会の辻友子代表が、全面保存決定のお礼と、再生・維持のための支援カンパを要請したほか、豊郷町の歴史と未来を考える会から、豊郷小学校の校舎を守ることができたが、活用法方が決まらず、指定管理者制で民間にわたると壊されてしまうのではないかと心配する報告もあった。 参加者からは、「子どもと参加できるような仕組みをつくってほしい」という、ネットワークへの要望も出た。 元近江兄弟社学園長で「ヴォーリズ評伝」の著者、奥村直彦氏は、「ヴォーリズの本拠地は近江八幡。当時、行政がやることをヴォーリズが行ってくれた。その精神を忘れず保存運動を」と提言した。 最後に、「市民、行政、企業、専門家、関係団体等が力を合わせてネットワークの設立をめざします」というアピール宣言で、フォーラムの幕を閉じた。 フォーラム終了後には、近江兄弟社学園高校吹奏楽部によるヴォーリズ作曲の賛美歌などの演奏や、教諭によるヴォーリズが持ってきたハモンドオルガンの演奏も披露され、全員でヴォーリズをしのぶこともできた。 ヴォーリズ建築文化全国ネットワークは、平成十八年度の設立をめざして準備が進められている。http://www.shigahochi.co.jp/old/bno/2006/06-02/n060204.html#2