1日目 ポスターセッション
(13:00~15:00)

Aブロック

A1:科学コミュニケーション

コアタイム13:00-13:30

p14-A1:非科学的コミュニティに向けたウイルスダイナミクス研究の広報戦略

発表者名:HiBiki

キーワード:ウイルスダイナミクス、感染症、数理生物学、広報、アウトリーチ、サイエンスコミュニケーション

今回は、サイエンスコミュニケーターという立場から、私たちの研究室のSARS-CoV-2に関する研究論文をどのように非科学的コミュニティに発信するかについて、実例を紹介します。一般的に、研究論文を社会に広める方法の一つは、プレスリリースを通じて行うことです。一方で、情報社会において特に若い人々を対象にした研究発信には難しさがあり、ウイルスダイナミクスの分野における次世代教育においても課題となっています。それらの論文を効果的に広めるための2つの広報戦略、プレスリリースにおける工夫と若者向けコンテンツの作成について紹介します。また、普段の研究発信に加え、ウイルスダイナミクス研究の一般向けアウトリーチの紹介と展望を紹介します。改善と拡大の過程にありますが、私たちの社会的なPR戦略では、「異分野融合」と「コラボレーション」により、数理生物学の学術的発信に風穴を開けていくことを目指しています。

p24-A1:学際系メタバースイベントの未来展望
~FSMF(First Step Metaverse Festival)の事例紹介~

発表者名:🪐YB🌟

キーワード:メタバース、学術イベント、デジタルコミュニケーション、次世代学術コミュニケーション、学際的コラボレーション、学際系メタバースイベント

"学際系メタバースイベントとはメタバース空間で行われる、異なる学問分野、専門分野だけでなく、文化およびアートに関連する多様な知識や情報を参加者が相互に学び合い、異なる専門領域のトランスファラブルな知識を交換し、創造的なアイデアの創出や新たなコラボレーションの可能性を探求する学術イベントである。

筆者は本年6月にFSMFという多くがメタバース初登壇の多分野から招聘したスピーカー総勢20名による講演やワークショップなどを1時間刻み・11会場で21イベント(無料)開催、のべ来場者数490人を集客した。

来場者や登壇者からのアンケートを行うことで、メタバースは学際系イベントの未来において重要な役割を果たす可能性を感じた。この発表ではFSMFを例に挙げながら、今後のメタバースでの学術イベントの展望とメタバースイベント開催の際の多様性を持つ新規参加者の集客手法や好評価を受ける運営方法について考察を行う。"

p61-A1:日本VR学会でメタバースのコミュニティと活動を紹介してきた

発表者名:長谷川 晶一

キーワード:科学コミュニケーション、メタバース、ソーシャルVR、コミュニティ、コミュニケーション

2023年の日本VR学会大会の同学会未来ビジョンWGの提言に基づくパネルの中で、メタバースのコミュニティとその活動、動機、メタバースを続ける理由などを紹介した。

パネルでは、メタバースで関係性を作って協働し、そこにいる事を楽しむ「生活者」のコミュニティが社会を作り出し、そこには、人と会った際の振る舞いや態度、価値観、物の見方、他者の行動への意味付けの仕方に至るまで、物理現実とは違う期待と感覚があることが指摘された。また、メタバースに広がる世界は生活者たちの創造的協働によって、想定を超えて豊かに進化しているという感想が得られた。

本発表は生活者研究者両方の立場からこの活動について報告し、メタバース生活者からのフィードバックを得ることを目的とする。

p62-A1:ソーシャルVRを用いた博物館型の天文宇宙教育の実践と効果

発表者名:えんでばー

キーワード:博物館、教育、VR、天文、宇宙、デジタルアーカイブ

天文学や宇宙開発に関するデジタル資料の制作およびキュレーションを行い、これをソーシャルVR空間上に博物館型施設「VR宇宙博物館コスモリア」として制作・公開を行った。ソーシャルVR空間上に設置することで従来の Web ページ型デジタルアーカイブでは実現しにくい、複数人の来館者が互いにコミュニケーションを取りながら展示についての理解を深めることを可能とし、天文学や宇宙開発に関する資料をVR空間ならではの三次元的・インタラクティブな表現で展示することで、天文宇宙系資料の展示として新たなアプローチとなる情報発信および天文宇宙教育を行っている。制作は任意団体である天文仮想研究所の一部有志を中心に行い、関係者間での金銭収受を行わない非営利活動の一環として制作・公開を行った。本発表ではコスモリアの制作・公開・運用で得られた知見を、来館者に対するアンケート調査の結果とともに紹介する。

A2:可視化

コアタイム13:30-14:00

p3-A2:メタバース空間の簡易な物理モデルから現実の複雑な挙動を再現する方法:摩擦係数を例にして

発表者名:hinoride(ヒノリデ)

キーワード:摩擦・潤滑・メタバース

メタバース空間上では物理演算プロセッサのPhysXを用いて物体の運動をシミュレーションすることが可能である.しかしPhysXの物理モデルは簡易的なものであるため,メタバース上で現実の動きを完璧に再現することはできない.このことは,メタバースを教育・学術的に活用する際に問題となる可能性があるが,この問題に対する対策などの記録は非常に少ない.そこで本論文ではこの問題解決の第一歩としてメタバース空間での摩擦挙動に注目し,様々な条件における二物体間の摩擦挙動をメタバース空間で再現することを試みた.その結果,メタバース空間では現実の摩擦挙動を「大まかに」再現することは可能であることが分かった.一方で複雑な摩擦挙動を再現しようとすると理論的に不十分な操作をする必要があることも分かった.このことから,現状のメタバースの教育・学術的活用方法としては,初学者向けの簡単なシミュレーションの展示が適していると考えられる.

p23-A2:VRSNSに向けたブロッホ方程式シミュレーターの開発

発表者名:品切桂

キーワード:核磁気共鳴、ブロッホ方程式、VR、物理教育、サイエンスコミュニケーション

水素や炭素の原子核は磁気的な性質を持つ。核磁気共鳴(NMR)はその磁気的性質に働きかける手法であり、NMR分光やMRIなどの基礎となっている。ブロッホ方程式は原子核の作る磁化の運動を記述するもので、NMRの原理の説明によく用いられる。この式は磁化の空間的な3成分を記述するため、紙面などの平面的メディアでは初学者にそのイメージを伝えることが容易ではない。そこで本研究ではブロッホ方程式のシミュレーションをVR技術を用いて視覚化するアプローチをとり、VRSNSであるVRChatにおけるワールドとしての実装を行なった。そこでは複数のプレイヤーが方程式のパラメータを操作でき、磁化を表す矢印型オブジェの動きを一緒に観察できる。これを実現するため単純な同期手法では発生してしまう断続的な同期によるオブジェの不連続な挙動を抑える必要があり、本シミュレーターでは適した同期手法の実装を行うことで解決した。

p44-A2:気体のレーザー冷却とVR空間におけるそのシミュレーションの試み

発表者名:キンカクジ・ニンジャ

キーワード:物理学、光学、シミュレーション、VR

レーザー冷却は、気体の原子集団に適切なレーザー光を照射することで、その温度を絶対零度近傍まで冷却する技術である。本研究では、はじめにランタノイド系の原子種を対象として、「ゼーマン減速」「磁気光学トラップ」と呼ばれる手法でレーザー冷却実験を実施した。その実験の過程で、レーザー冷却は、量子力学的な原子と光の相互作用に起因する技術であり、その実体的なイメージを掴むことが困難であるという課題に直面した。そこで本研究では、先述の実験で得られた知見から、VR空間内でその過程のシミュレーションを構築した。その結果、原子と光の相互作用とゼーマン減速のシミュレータを構築し、原子の運動をリアルタイムに可視化することに成功した。

p74-A2:浅域用小型水中ロボットの開発とVR空間による可視化

発表者名:yuuitirou528

キーワード:水中ロボット、AUV、VR、可視化

水中・海洋は、人間が直接アクセスすることが難しく過酷な環境の一つである。 そこで水中・海洋調査のツールとして1980年代から、自律型水中ロボット(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)が期待され開発されてきた。本チームでも、浅域での活動が可能で運用も容易な浅瀬用小型水中ロボット(AUV)「macaroni」を開発した。本ロボットの特徴は、速力が出せる航行型の特徴を生かしながら、ホバリング型のように自由度が高い移動が可能でありながら、機体は約2.5kgと軽量でカメラと自己位置推定装置(DVL・IMU)を搭載している。本稿では「macaroni」のシステム構成とプールにおける実験結果を報告する。また、水中におけるロボットは水面や透明度によっては状況把握が難しい場合がある。そこでVR空間(VRChat)による可視化と共有の試みを行い、これについても報告する。

A3:学習

コアタイム14:00-14:30

p5-A3:VR技術を用いた伝統芸能普及の可能性

発表者名:桜庭なつ

キーワード:VR技術、伝統芸能、伝統文化、剣術、茶道

パンデミック対策に伴うICT技術環境の発展整備により、業務や余暇活動における非対面化の機会が増加している。そうした中、伝統芸能においては接触機会の減少に伴う新規履修者数の低下、担い手人口の縮小が課題となっている。そこで筆者らはこうした伝統芸能における課題解決を目的に、VRSNSを用いた伝統芸能の紹介活動を行い、VR技術と伝統芸能の親和性について考察を行った。本研究では伝統芸能として古流剣術及び茶道を対象とし、定期的に技法紹介や体験会を行うイベントを10カ月開催した。その結果、古流剣術は262名、茶道は202名のユーザーに紹介することができた。参加者の中には未経験者も多く、イベント参加を機に関連書籍の購入や現実世界での稽古会参加に繋がったケースも見られた。また、現実では不可能であったVR技術ならではの可視化手法や他者との相互関係性により、伝統芸能の楽しみ方、稽古の新たな可能性を見出した。

p7-A3:高校生を対象にしたメタバースセミナーの学習体験・使用感の評価

発表者名:MOMOSAKI

キーワード:メタバース、セミナー、高校生、学習体験、使用感

高校生を対象にメタバースにて実施したサマーセミナーの学習体験・使用感を評価した。対象はセミナーに参加した高校1~3年生である。メタバースセミナー後、学習体験はUser Experience Questionnaire(UEQ)、使用感はSystem Usability Scale(SUS)にてアンケート調査した。40名の参加者のうち、35名から解答を得た。学習体験は見栄え:Excellent、明快さ:Below Average、効率:Below Average、信頼性:Excellent、刺激:Excellent、新奇:Excellentという結果であった。使用感の平均点は46.6であり、ログイントラブルやアクセストラブルによる不満のコメントが散見された。参加者の主観的評価結果から、メタバースを使用したサマーセミナーは刺激的で新奇性のある学習体験を提供できたが、使用感に問題が見られた。

p35-A3:化学実技授業の安全性と効率性を高めるVRシステムの提案

発表者名:藤原捷羽

キーワード:VR、教育、化学

化学実技授業は学生の学習において重要な役割を果たしており、多くの学校で取り入れられている。しかし問題も抱えており、学生が実験手順を誤ることによる安全性の問題が懸念されており、先進的な実験設備の導入には多額の費用が必要であり、多くの教育機関にとっては負担となっている。これらの課題を解決するため、本研究では化学実技実験におけるVRシステムの導入を提案しする。このシステムは、VR技術を活用して実験手順をシミュレーションすることで、学生が安全かつ効率的に手順を練習できる環境を提供する。これにより、実際の実験における手順ミスや事故のリスクが無くなると共に、将来的に高額な実験設備にかかる費用も削減されることが期待される。

p47-A3:メタバース活用学習における学習モデル「PBERS」の提案
— 社会教育におけるメタバース学習モデルの予備的研究 —

発表者名:西川浩平

キーワード:メタバース、学習モデル、オンライン学習、VR、社会教育、アバター

メタバースは、1つの場所に集まる感覚を生み出すことが得意である。アバターと呼ばれる分身を用いることで、利用者同士が集まる空間として、現実のオフィスや教室のように同じ時間を共有することができる。本研究では、様々な年齢層が共に学ぶ手段としてメタバースに着目し、メタバース活用による学習モデル「PBERS」を提案する。社会人を対象に「PBERS」に関するアンケート調査29件を分析にかけた結果、「PBERS」を構成する5つの要素「Play」「Build」「Evaluate」のそれぞれの有効性を確認できた一方、「Reflection」と「Share」は有効性が高いとは言えなかった。「Reflection」では学習毎の振返りの習慣化、「Share」では継続的な学習や学習成果を他者に認められやすくするための工夫が必要であることが明らかになった。メタバースの教育活用に向けて、さらなる実証と分析が必要である。

p67-A3:VRにおける世界史教育の実践および考察

発表者名:飛鳥山はるか

キーワード:世界史 教育 教養

VRCにおいて世界史講義イベントを実施している。受験勉強ではなく教養としての世界史を知ってほしいと考えている。VRにおける世界史教育の可能性と、講義イベントを開催する中で得た知見について考察する。

A4:教育

コアタイム14:30-15:00

p25-A4:VR・仮想空間技術、AI技術を用いたデジタル保健室の実証と展望

発表者名:中井勇希

キーワード:VR、感情認識、保健室、コミュニケーション

現在、保健室の利用は傷病への対処だけでなく、子どもが抱える多様な問題への対処が求められている。本稿では、立命館守山中学校・高等学校にて実施したデジタル保健室体験イベントを通じ、保健室業務におけるICT技術の利用に向けた展望を示す。イベントではVR・仮想空間技術活用デモ、AI技術活用デモを行い、「使いたい」か「使いたくない」かの2値評価、およびイベント現場の観察による定性評価を実施した。その結果、両技術とも好意的な結果を得た。一方、AI技術活用デモで実施した感情センシングは、本来の利用用途と異なる、感情差を用いた会話に参加者は価値を見いだしていた。保健室に各技術を導入するためには、安心できる環境でコミュニケーションを取りたい需要を満たすこと、全学利用ではなく特定対象に向けた利用が好ましいこと、ICT技術のレクリエーション用の用途外利用に価値があることの3点が重要であると示唆された。

p41-A4:高校教育におけるVR技術の活用: micro:bitと生徒端末を用いた森林階層構造の観察実践

発表者名:玉井洋介

キーワード:VR、micro:bit、

本研究では、高等教育における理科教育や環境学習の手法として、1人1台端末のノートパソコンとmicro:bitを活用した教育プログラムを実践し、その有用性を評価した。このプログラムでは、全天球画像を使用して仮想現実(VR)体験を提供し、学生が森林の階層構造を直接観察できるように設計されている。この教育プログラムは高校の生物基礎の授業で実施され、学生の学習効果と参加意欲を向上させることを目的としている。初期の結果は、このアプローチが学生の認識と理解を深める有効な手段である可能性を示している。今後は更なるデータ収集と評価を通じて、この教育プログラムの効果を詳細に解析する予定である。

p43-A4:侮蔑のスラング「義務教育の敗北」~意味・対象と教育観の考察~

発表者名:がくまるい

キーワード:学校教育、スラング、教育観

「義務教育の敗北」は2010年代後半から使用が増えたスラングである。意味は定まっていないが、主に小中学校で身につけるべきと話者が考える知識や価値観が欠如している他者を侮蔑する際に使われる。この語は義務教育(諸学校)が知識等を身につけさせられなかったことを敗北と表現しつつ、主に教育する側ではなく受ける側を非難しているのが特徴である。この語の使用者は、現代社会では全ての者が教育を十分に受けられている、知識が与えられれば全て獲得できるのが当然であるという認識を持っていることが考えられるが、こうした認識は実際には正しくない。この語は一般に普及している語ではないが、使用者の教育に対する価値観を反映した語であり、教育学的な観点から考察する意義がある。

 本研究では、「義務教育の敗北」の意味と、どのような状況に対してこの語を用いるのか対象を整理する。そして、この語の使用の背後にある教育観を考察する。