大脇良夫・植村善博編著(2012)『治水神禹王をたずねる旅』において、①禹王遺跡の定義をおこない、②それらの分布や特徴を同一基準で記載した。そして③北海道・東北地方のAから九州・沖縄地方のFまでA~Fの6地域に分けたうえで遺跡に統一的な番号を与え、新たな遺跡の増加にも対応できるよう工夫した。出版時の2013年6月までに57件の遺跡が認定、報告されている。
その後、新たな遺跡の発見が増え続け、2015年2月末には91件が報告されている(『研究会誌』第2号を参照)。しかし、これら新たな遺跡については情報や資料に精粗がみられ、また現地確認や調査がなされていない事例も存在する。今後も新たな発見が予想される状況下、厳密な検討により禹王遺跡を認定する仕組みを作る必要があると考えられる。そこで以下のような認定手続きを提案したい。
1)会長・副会長および事務局員など数名からなる禹王遺跡認定委員会を設置する。
2)新たな禹王遺跡は原則として研究大会において報告し、その内容を研究会誌に投稿するものとする。認定委員会は投稿された原稿を査読し、適切と認めた場合は会誌に掲載する。また、会誌や会報への投稿のみの場合も適正と判断された場合は掲載し、認定することがある。
3)遺跡の認定には現地調査および文献調査がおこなわれており、かつ4)に示す要件が満たされていることが必要である。
4)遺跡の認定要件として、以下の①~⑧の項目が記述されていなければならない。
①名称、水系名、所在地(できるだけ詳しく)
②サイズ(cm):高さ・幅・厚さ、素材・岩質名
③刻字:禹王にかかわる文字または文(漢文の場合は読み下し文をつける)
④建立年と建立者:西暦(和暦)年月日、建立者名、また篆額や撰文の人物名
⑤説明文:遺跡に関わる地域や河川、治水などの特徴、建立の時代的背景と要因、現状
⑥2万5千分1地形図(図幅名)に遺跡の位置を記入する
⑦アクセス:遺跡への最も便利な交通手段
⑧参考文献:主要なもの2~3点、書名(論文名)・著者・出版社(雑誌名と巻号)・発行年、ページの順に記載する。
5)以上の要件を満たした遺跡に関する原稿が認定委員会により妥当と判断された場合、投稿順を考慮して遺跡番号を決定する。
6)なお、厳密には遺跡と呼べないが、地名、寺名、詩文や文学作品などの禹王関係する情報もできるかぎり収集する。これらについて新たに発見した場合は認定委員会に通知していただきたい。内容に応じて会報や会誌に紹介していくものとする。
以上の内容は2015年4月6日以降に適用する。
水神・禹王研究会の発行物(『治水神禹王をたずねる旅』・研究会誌・会報など)に記載された禹王遺跡とそれに関連する情報(論文や報告など)は日本において初めて明らかにされた資料的価値の高いものが多い。これらの論文や報告などは出版された時点で著作権が著者から研究会へ委譲されたものと考えられる。そして、これらは研究会および会員の貴重な財産であり(著作財産権)、その価値とオリジナリティを保護するためにそれらを引用、利用する場合のルールを決めておく必要がある。
著作権についてはいろいろな考え方があるが、これらを引用、利用される際には次のようなルールに従っていただきたい。
1)『治水神禹王をたずねる旅』、治水神・禹王研究会誌、同会報など本研究会の発行物に記載された論文や報告などが対象となる。
2)出版物の内容は引用、利用することが権利として認められている。ただし、引用、利用する場合には原著者の意図や主旨を正しく理解し、その出典の著者名と引用箇所などを正確に明示しなければならない。
3)出版物の内容を一部または全部を転載する場合は事務局に届け出て、承認を得ること。
4)地図や資料表などを新たに改変、資料追加、再編集する場合は事務局に届け出て、承認を得ること。
5)未公表資料(研究発表の内容、配布資料、個人が作成した資料やデータ)は基本的に引用することはできない。これらの引用、利用を希望する場合は著作権を有する当事者に直接連絡し、承諾をえること。
以上の内容は2015年4月6日以降に適用する。
1. 委員会の目的:新たに情報提供される禹王に関する遺跡について認定基準に適合しているかを判断することを目的とする。
2.審査会の委員構成
委員長:植村善博
委 員:大脇良夫 飯塚隆藤 関口康弘 水谷容子
事務局:竹内晶子
3.発足日 2015年11月1日。
4.期限と任免 特に定めない。 治水神・禹王研究会会長が任免する。
2016年(平成28)6月12日午後、神奈川県開成町の町民センターにて第3回禹王遺跡認定委員会が開催された。委員会での検討事項、①は、第3回研究大会での伊藤修会員報告の遺跡(日本禹王遺跡一覧C-27、C-28、C-29、通番66~68)、『会誌』3号での植村善博副会長報告の遺跡(C-30、E-8、通番69、92)の認定。②は『会誌』3号で古賀邦雄会員報告の遺跡である。現在は所在不明だが、過去に存在していたことを示す確実な資料があるので認定した(F-9、通番101)。③は『会誌』3号で竹林征三会員報告の遺跡である。これについては議論をした。「書籍や書については今後も多数の事例が発見される可能性があり、遺跡として認定するのは慎重を期すべきである」「しかし刊本ではない実物が存在し極めてオリジナリティが高いもので、かつそのものがどのような背景をもって成立したのかが解明できれば何らかの形で記載をすべき」等の意見により、新たな区分「禹王文字遺物」として記載・登録するという結論となった。前回の第2回認定委員会での「禹王地名」カテゴリーに続いての新分類である。