day 5
恆春 Hengchun → 台東 Taitung
恆春 Hengchun → 台東 Taitung
10月8日。恆春から出発します。この日から台湾一周の旅路は西部南下から東部北上と、ガラッと変わります。東部北上の初日となるこの日のライド、台湾一周における最大の難所です。一方、この日は大量のフォトスポットを抱える名ルートでもあります。
まずこの区間の何が難しいかを理解するため、台湾の地理的特性の概説から。
峠道攻略
台湾はユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込むことで隆起してできた島です。その隆起の結果として、台湾中心部のほとんどは山岳地帯で占められています。その標高は軽く2000mを超えます。最高峰である玉山(3952m)が富士山より高く、新高山という別名がついていたというのは知ってる人は知ってる逸話です。
じゃあそんな数千メートルの山越えをするというのか。それは大変タフなアクティビティです(やる人もいます。今の僕にその覚悟はまだありません)。現実的な獲得標高(1000m以下)で台湾の東西を行き来するには、台北周辺か、この恆春・車城エリアから行き来する他ないのです(赤丸)。とはいえ恆春・車城エリア(ハート)から出発すると海抜0mから400m強まで一気に上がることになります。クライムに慣れてない人にはきついエリアです。
東海岸北上
ヒルクライムはつらいですが、かといって多くのサイクリストがヒルクライムを完全に嫌いになるわけでもないと思います。なぜなら上り坂の後にはご褒美の下り坂があるからです。しかし今日の目的地の台東に至る道に限って言えば、そんな甘い話ではすみません。
台湾は北東からの季節風が常に吹いている島です。つまり南から北に向かう時はこの季節風が向かい風として立ちはだかります(橙矢印)。1のヒルクライムが終わった段階でも台東まで60km以上の距離が残っています。この道のりの間ずっと、向かい風に抗わなければなりません。そのうえ、台東に至る海岸部は少なく見積もっても3度の小規模なヒルクライムがあります。1の峠を越えたからといって慢心してると精神的に苦しむ羽目になるわけです。台湾西部に比べて町も減るので補給所やコンビニの数も減ります。計画的に休まないとハンガーノックの危険があります。
最初のヒルクライムですが、峠である壽卡に至るまで、主に三つのルートがあります。
台9線経由(赤)
屏東199線経由(青)
屏東200線経由(橙)
こういう記事を読んでいる方であれば共感できると思いますが、この図を見ると橙の屏東200線を走りたくなりますよね。まだ台湾一周を妄想で計画していた頃は屏東200線を走ろう、それだと最南端も経由できる、とワクワクしていたのですが、なんと個人経営の商店すら片手で数えられるほどしかあるかないかという道でした。そして獲得標高はこの橙のルートだけで1000m越え。おそらく壽卡に着く頃には夕方。強者じゃないと辛そう、やめるべし。。。という判断をしました。いつか走ってみたいですけど。
次点で屏東199線を走ってみたくなります。ここは団体で台湾一周のイベントが企画される時にも使われる道のようで、交通量も少なく、第ゼロ近似で勾配のことを無視すれば(?)走りやすそうではあります。しかしこの日、数ヶ月前の台風被害の復旧工事が延長されているとかいう情報がありました。途中まで登ったのに「ここから先は走れないよ!」と突っぱねられたら泣きます。
ちょっと不本意ですが(?)、交通量がありそうではあるがデカそうな台9線を走ることにしました。朝ごはんの湯麺を食べ、台9線起点の楓港に向けて出発です。
恆春から楓港まで20km走ったら一休み。ここから進路を東に変えて台9線に入ります。その台9線ですが、平均勾配は3-5%くらいとどこかで読んだ気がします。最大は多分8%くらいです。僕は経験はあります(余裕〜とは言いません)が、普段自転車に乗らない人にはきついかもしれません。この辺は山と川しか見えない、自然あふれたエリアです。僕はこういう場所にいると落ち着いてしまいます。
途中にファミリーマートが一軒あります。セーブポイント。その後しばらくすると大きいトンネルが見えてきますが、ここは自動車専用なのでトンネルには入らず側道に入ります(ChatGPTはトンネルも走れるよ!と言ってたのですが大嘘ついてました)。道がくねくねしはじめますがクライムであることには変わりません。楓港からペダルを踏み続けて2時間。
峠の壽卡に辿り着きました。ここはサイクリストやバイクのライダーの聖地になってるようで、この日もたくさんのサイクリストが群がっていました。ここの派出所で水休憩ができるはずなのですが、ウォーターサーバーが壊れてるとかで閉まってました。はいはいあるある。一通り写真を撮ったら、達仁までご褒美の下り坂です。10kmくらいずっと下りだったと思います。本当に気持ちが良かったです。時折山の狭間から見える東側の海が綺麗でした。
達仁からは海岸線を北上します。写真のように、右手は太平洋、左手は山、という景色がずっと続きます。この日も快晴、景色だけは最高でした。ちなみに僕の台湾一周の旅の間はずっと晴れだったのですが、かなり珍しいようです。それはそうかも。
一つ目のクライムを超えたあとに多良歡光火車站に立ち寄りました。今では廃止された駅ですが、台湾で最も景色のいい鉄道駅として人気の観光地のようです。「台湾版・千と千尋の神隠しの駅」とも呼ばれるという噂は耳にしましたがソースはありません。幸運にも電車が通過するタイミングに到着したのでベストショット?の動画も撮ることができました。台湾一周でもしてないとここには来ないなと自覚したので、なんとなくきて良かったなと思います。
その後2回ほど上り坂に遭いました。当然向かい風は常に吹き荒れています。手強かったです。この日は日差しがマシになる昼3時以前は頻繁に休憩していたと思います。しかしnon-zeroの速度さえ前方に持っていれば目的地に進んでいるのです。そうこうして夜6時に台東到着。122km、獲得標高1000mのタフなライドでした。達成感満載です。
タフなライドをした日くらいはちょっといいところに泊まってよかろうという心づもりだったのと、前日に宿を探していたら900NTDで個室に泊まれるホテルを見つけたので即決で取りました。この日も個室泊です(https://maps.app.goo.gl/iUH3Sew2q9CY7CPF7)。人の目を気にしなくて良いのがよろしい。大の字になっても誰にも何も言われない自由。すばらしい。洗濯機はなかったのでコインランドリーを使いました。
今日は頑張ったし少しは酒入れていいでしょ!と意気揚々になりながら、台湾一周してる任意の日本人()が行っているらしい餃子屋さんに向かいました。ところが、臨時休業。悲しい。仕方なしに、近くの小綺麗な火鍋の店で晩御飯を済ませました。しかし缶ビールすら提供がない店で悲しくなりました。結局、ファミリーマートで台湾ビールを買って飲みました。うーん。。。